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「橋を渡る」吉田 修一


橋を渡る (文春文庫)

部屋の掃除をしていたら買ってすっかり忘れていた数冊の本を発見!
わー、吉田修一作品を読むの忘れてたなんて;つД`) と自分に呆れつつ、開始。

先が気になって一気に読みました。
そして登場人物の相関図が気になって、初めて「書き出す」ということをしてみました。
頭の中が整理できてよかったです。

4章からなるこの作品。
大きく、「春」「夏」「秋」「冬」からなりますが、「冬」はそれまでの章と何もかもが違います。違うのです。

「春」では「響」というお酒と「凛」というお米が何者かに玄関先に置かれている、
「夏」ではカニ缶と白桃の缶詰がこれまた何者かにスーパーでの買い物の最中にカゴの中に入れられている、
「秋」は撮影した映像の中にほんの一瞬、全く覚えのない映像が映りこんでいる・・・

謎ですー。
この謎、はっきりとは解明されません。自分で想像するしかない。
はっきりとした答えが欲しい私はちょっとモヤモヤする気持ちもあります。

そして「秋」で語られる、「お前はいつも『正解』なんだよ」という言葉。
「正しい奴は、たとえ自分が間違ったことをしても、それを正しいと思い込む」

この言葉を発した人物はその「お前」を非難しているわけではないのだ、と。
非難してないのならこの場合「あきらめ」の境地なのかな。
自分は「お前」に対しては諦めてるけど、できるなら気づいたほうがいいよ、っていう優しさなのかも。

なんかいろいろと考えてしまいました。

さて、問題の「冬」ですが、70年後の未来です。
70年、ってもう未来というほどの未来でもないような微妙な年数。
生まれてから70年と考えると、まあ長いか。

エアロモービル、エアロバス、夢を映像として保存、再生できるブレイン・シネマなど、ありえそうな未来のマシンが登場します。
・・・でももっとすごいこと起こってました😱

先に書いた人物相関図ですが、伏線回収でもないですけど、結構重要です。
登場人物やその立ち位置を覚えておかないと、あれ?あれ?ってなります。

私の大好きな作家の伊坂幸太郎さんはこの人物相関図と張り巡らされた伏線にいつも驚かされるのですが、吉田修一さんがこう来るとは思っていなくて、意外でした。

この物語、また別の角度から読んでみたいと思いました。
今回は、進む方向の選択、渡った先、渡らなかった世界についてを考えますが、並行して切り取り描かれている日常にもとても興味が湧きました。
もっと詳しく知りたいなーと思うくらい人物や状況の描写が素晴らしいってことなのでしょうね。

一気読みしましたが全く疲れませんでした。
ありがとうございました。

#吉田修一    #伊坂幸太郎   #橋を渡る

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