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サクラの多義性

五分咲きサクラを手かざしに見上げる。仄かに香りが鼻腔を刺激する。歌人西行は、桜の咲く頃に死にたい、と呟いた。その願い通りに彼は桜の舞う日に死んでいる。時代は下って、ある作家は「桜の下に死体が埋まっている」と何かを暗示させ、不気味さと面白さを示唆した。翻って、日常の暮らしに眼を転じると、神社の絵馬に「サクラ咲きますように」と絵馬板に記している。さらにネットの出逢い系を検索すると、「課金ばかり引き出され、99パーサクラだった」と嘆き節をレヴューに書いている男もいる。
桜と漢字で書けば、桜の木がイメージされるが、カタカナで書けば比喩となる。死体が埋まっている、と書くと象徴性を帯びる。暗示して、妖艶さ、不気味さを呈する。

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