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15歳の春


#はじめての仕事
中学を卒業して、公立夜間高校に入学した。大工の父の年収では、私立の高校に行けなかったからだ。高額学費の私立に行きたいとも思わなかった。両親に、これ以上苦労をかけてはいけないと思ったからだった。
昼間働きながら、夜に学ぶ。これは、私にとって誇りのような、挑戦のような、幾つもの意味が隠されていた。
最初に勤めたカメラ屋の裏仕事がどんなにキツい仕事だったか。それでも、若いから挑めたとも言える。初めてその会社に顔を出した時、「お前たちはいわばアルバイト扱いだからな」と、その店の社長の長男に言われた。乱暴な言葉を使う男だったが、勤め初めの私は何でも素直に応じた。
酸っぱい現像暗室で、印画紙を洗うのである。それを夕方4時まで行い、「お先に失礼します」と挨拶をするや否や、一目散に夜間高校に向かった。それが15歳の春であった。

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