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時には後ろ姿で示す #13

(平成20年7月1日 H小学校 学校だより7月号より引用)
校長室には、毎日いろいろなお客様が来られます。町内の会長さんや各種団体の会長さん、そして学校の保護者であるPTAの役員さんや委員さん達もよくいらっしゃいます。そして一般の保護者の方……。
 いらっしゃる方のほとんどは、学校との打ち合わせのための来校が多いのですが、時には、個人的な相談事などの場合もあります。
 その個人的な相談の場合のほとんどは、お子さんのことです。お子さんの気になる言動、また親御さんとお子さんとがうまくいかないことなどの相談も時々あります。私としては、どの場合も、まずは話を聞き、お話しできる範囲で私の思いを伝えるようにしていますが、時には児童相談所や臨床心理士など相談機関を紹介することもあります。
 最近も、お子さんに関わる事案のことで早急な指導を迫られることがありました。その時は、関係の子どもの親御さんを呼んで状況を伝えたりします。このような時は、私は次のことに気をつけて話を進めるようにしています 。

 お子さんに関わる事案、つまり子ども同士のトラブルに関しては、いつも難しいと感じます。問題を起こした子どもに対して、親としてどう対していくべきなのかという保護者の「悩み」がそれです。しかし、親御さんの気持ちにその答えがある場合も多いです。

 以前、私が担任をしていた時に、こんな事案が起きました。

 最初に一方の子の保護者が、学校にお子さんを引き取りに来られました。そして、その子に向かって、大きな声でしかり、その後こんなことを話されました。「おまえをこんな子どもに育てた覚えはない・・・・。」
 その後でもう一方の保護者が引き取りに来られて、こんなことを話されました。「おまえが万引きをしたのは、悪いこと、絶対いけないこと。でもおまえの母親である私にも原因がある。おまえの気持ちを分かってあげられなくて、本当にごめんね。先生,本当にすみませんでした・・・・。」 

 私は、親の姿(時には後ろ姿)で示すことが、子どもにとっては一番心にしみることだと思います。しかることは誰でもできるし、いつでもできます。当事者であるべき保護者が、その子のことをしっかり受け止め、後ろからそっと押してあげることが大切です。
 この後者のお母さんは、その後、お店に出向かれ泣きながら子どもと一緒に謝って来られました。』

 改めてこの話を思い出し、巻頭のイラストを新たに描いてみました。初めて描いた人物ですが、お母さんの気持ちを考えながら描きましたが、難しいですね。そこで今度は、「森のなかまたち」のイラストを使って見ました。母グマの後ろ姿を感じて下さい。
 でもこの時のお子さんは、自分の成長の中できっとお母さんに感謝していたと思います。しかし最初のお子さんのことも、今でも気になります…。
 (この話は、今から25年程前の話でした。令和5年6月6日)


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