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そして父になる

是枝監督の有名な作品、「そして父になる」を見た。amazonじゃなくて映画館で見たかったな、と思わせる作品だった。

この作品の元ネタは、実際にあった赤ちゃん取り違え事件である。ノンフィクション作品として書籍になっている。

昭和46年に子どもの取り違えが発生し、そのことが発覚したのが、子どもが6歳の時である。この事実をオマージュし、『そして父になる』でも子どもが小学校に上がる前の検診で、実子でないことが発覚する。

まだ『ねじれた絆』を読めていないのだが、小説でも映画でも子どもの取り違いが行われた家庭について、対照的に書かれている。

映画での家族模様

斎木家

父 斎木雄大(リリー・フランキー)

母 斎木ゆかり(真木よう子)

子 斎木琉晴 (黄升炫)

子どもは三人いて、長男が取り違いの子である。琉晴はヤンチャ。母(真木よう子)の父が同居している。斎木家は住宅兼店舗である田舎の電気屋を経営しており、客は主に近所の住人だ。母はお弁当屋さんでパートもしている。父も母もおそらく昔やんちゃしてた感じがする。タトゥーありのヤンパパに美人なヤンママだ。お金に意地汚い要素もあるが、正義感があり、子育てについては親が子供と触れ合うこと、自然に親しむこと、子どもの気持ちを大切にすること、といったことを実行している。貧乏だが温かい家庭。

野々宮家

父 野々宮良多 (福山雅治)

母 野々宮みどり(尾野真千子)

子 野々宮慶多 (二宮慶多)

子どもは一人。良いところのお坊ちゃん。私立の小学校を受験し、合格している。母親は専業主婦。産後の状態が良くなかったのが原因で第二子はいない。父は大企業の建築士。負けず嫌い。まるでホテルのようなタワマンに住んでいる。野々宮良多は子どものころ、両親が離婚、のちに父親について再婚。継母は優しかったが、実母に会いたくて家出。その際、父親が迎えに来て、怒られる。

野々宮は子どもを二人とも引き取って育てるつもりだったが、交流ののち、子どもを交換をして育てることに。家でのルール(お風呂は一人で入る。パパとママと呼ぶ。など)を紙に書き、琉晴に読ませた。しかし琉晴は野々宮たちをパパとママと呼ぶのを「なんでぇ?」と連発し、困らせる。琉晴にとってパパとママは田舎の電気屋さんのパパとママ以外にいなかったわけです。慶多と違って、多くのことに疑問を持ち、のびのびとしている琉晴に、「分かった。じゃあお父さんとお母さんと呼びなさい」と折れる。

そんな琉晴、凧揚げしたいそうで前の家に脱走。電車もサラリーマンの後ろについて、改札をクリアする。すごい賢い。東京と前橋の距離を真夏の大冒険する。本心としては、寂しかったんじゃないかな。野々宮が迎えに行き、琉晴の名前を呼ぶ。斎木家にいた慶多は野々宮の声を聴きたくなくて、押し入れに隠れる。子ども心に「なんで僕を迎えに来ないの?」って思うよね。

琉晴を連れて帰ったのちに、自分も実母に会いたくて、会いに行ったことがあると妻に話す。自分は父親に叱られたが、琉晴の気持ちが分かるから叱れない。

趣味のカメラのデータを見る野々宮。慶多の写真のほかに、慶多が撮った自分の写真が出てくる。

野々宮の中で交換すれば解決するものだという考えがありますが、ヤンママはそんな簡単な問題じゃないと主張。ヤンママは裁判でも、これからも苦しまなければいけないと言っており、親子になるのに長い歳月がかかるというのが分かっている。でも野々宮には分からない。自分が実家で家族になれてないから、交換すればいい問題と思っている。それが徐々に、幼少期のことを思い出したりして、本音が出てきます。技研への出向で、研究用の林を見学しているときに、そこのスタッフから虫が定着するのにも十数年かかったと言われ、驚く。「そんなに?」そこで気づき始めるのです、時間がかかるということに。

最終的には慶多を迎えに行くが、今度は慶多が脱走。追いかけて自分の間違えを謝り、慶多とともに電気屋さんへ。みんな、心配して電気屋さんの前で待っている。

最後はどうなったのか、そこは書かれていません。モデルになった沖縄の取り違えは、二人とも片方の家に育てられる感じになったそうです。そっちの方が母性にあふれて、家庭的にいい感じだったので、まあ、子どもは居心地の良さを追求してしまうのでそうなりますよね。子どもなんて交換しなければよかったと、相手の家は思っていたかもしれません。

子どもの取り違えが題材になっていますが、本質的には幼少期の家庭環境にしこりのある男性が、家庭を築くことの難しさを知っていくストーリーに見えました。どの家庭でもある、父になるとは、というところを描きたかったのかなと思います。

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