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神秘的で繊細。なのに爆発的。/蔡國強。あと出川哲朗さんのこと。

先日、新国立美術館へ「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる | 企画展」を見てきた。私が蔡國強のアートに出会ったのは2015年横浜美術館「蔡國強展:帰去来 | 2015年 | これまでの展覧会」の展示。興味があるという夫に連れられ行ったら、衝撃を受けた。「こんなの見たことがない。なんだこれ。かっこいい!」と感動した。

中でも、99匹の狼が群れをなして壁に突き進んでいく「壁撞き」という展示を目の当たりにした時は、あまりにかっこよくてしばらくその場に留まって魅了された。以来、動物園で中国狼に出会うとあの展示を思い出して見入ってしまう。

蔡國強と言えば、火薬の爆発による絵画が有名。初めて見たとき、その「ダイナミックさ」と「繊細さ」の一見相反する両方を兼ね備えている作品に、一目で虜になった。

今回は「蔡國強 宇宙遊うちゅうゆう ―〈原初火球げんしょかきゅう〉から始まる」という展示。この企画展は大きな柱などない広い空間を贅沢に使い、ガラスを使用した火薬絵画や記録映像もあり、蔡國強自身の言葉にも触れることができ、その人柄も含めての展示だった。
その中心とも言える展示が、LEDを使用した一定の範囲の大きな作品。これが今回の展示の幻想的で楽しい雰囲気を作っている。まさに「宇宙遊」。「未知との遭遇」。


夫と二人で大興奮。




写真だとうまく伝わらないのが残念!



朱色のような色味に光ったり、断続的に光ったり。
そして奥には他の作品も見えるのがまた良い。

写真だとうまく伝わらない。でも、それがまた良いのかも。やっぱり美術館の空間でその時その空間を体感することに意味がある。その時に確実に発しているエネルギーがある。受け取るメッセージがある。

蔡國強のこの展示は、今回はLEDだったが、メキシコで行われた時は実際に火薬で光を放っていたそうだ。それも羨ましい!!

そして、今回驚いたのが蔡國強と福島県いわき市のつながり。
蔡國強はかつていわき市に住んでいたことがあり、2023年6月23日に「いわき白天花火《満天の桜が咲く日》」と題してイベントが行われていたそう。その様子が写真と映像で紹介されていた。もう、映像も写真も素晴らしくて大画面で大きな音で見たい!!と思った。これを目の前で実際に見られたなんて本当に羨ましい。

壮大で突き抜けるような爆発。それでいて爆発のその煙の先までもが繊細で生命力を感じる。とてつもなく自由。力強い。

ご本人の佇まいや笑顔も素敵で、人柄を感じる。
すらりと背が高く足が長い。

素敵な展示だった。


これも素敵だった。美しい。
幻想的。



天上のこれは悪魔?
奥の大きくて渋い展示とも不思議と共存できている。


こういう作品に出会えること、直に触れられること、エネルギーを浴びること。
生きているなあ、と思う。
こういう時、私は、病院のベッドの上で苦しくて先が見えなくて泣くこともできずただ横になっていた自分を思い出す。
そして、今生きていることを感じる。
感謝とか幸せとか、それも無くは無いけど、
ただ、感じる。

生きているなあ、私。と、思う。

そして、あの時一緒の部屋でそれぞれの病と向き合っていた人たち、
病棟で顔を合わせた人たち、
通院時に出会って励まし合った人たちのことを思う。
全ての療養中の人に、希望がありますように、と思う。
穏やかな時間、凪いだ時間がありますように、と思う。

こういう感動したりエネルギーを受け取ることって、
痛みや苦しみでいっぱいの時は余裕がなくてとてもじゃ無いけど無理。
穏やかな時間、余裕があって、感じることができる。
病気って、そりゃあ健康じゃ無いから痛くて苦しいことはある。
でも、お願いだから24時間のうちたとえば半分、3日に1回、3時間痛かったらその後の1時間、とか、安らぐ時間があって欲しい。挟んで欲しい。

生きていることは死と隣り合わせ。
だったら、「苦痛」は「安楽」と隣り合わせにしてほしい。

私は今生きている。
蔡國強の次回の展示もこの目で見られますように。
そして、他のアーティストの作品にもたくさん触れられますように。

いや、絶対いっぱい見てやる。




この本も面白かった。

村上春樹「職業としての小説家」を読んだ。これが思った以上に面白かった。村上春樹さんのエッセイのような、小説の書き方について教えてくれているような、生活が少し垣間見れるような、とても誠実な内容に感じた。やっぱりこの人は独特だ、と思いつつ、そのセンスがやっぱり私は好きだなあと再認識。

小説は書きたくて書くもの。
そんなシンプルで純粋で、だからこそ難しいことを生活の中でできているのがすごい。生活のために、締切やテーマを設けられて依頼されて書くことだってもちろん必要だし、ほとんどの作家さんがそういうものな気がする。でも、それでは先ぼそりしてしまうのではないかと考えていると。
そうは言ってもねえ・・・
と思いつつ、どうかこれからもそのスタンスで書いて楽しませてほしいと思った。

やっぱり、次作を楽しみにしている作家なのです。

あと、最後に出川哲朗さんのこと。
どうしても今日感じたことを忘れないようにここに書いておきたい。

今日、久しぶりに「イッテQ」を観た。出川哲朗さんが海外セレブやスターとツーショットを撮るべく、お得意の無茶苦茶英語と勢いでミラクルな笑いを起こしていた。
元々私も出川さんは好きだ。出てくるとつい見ちゃうし笑ってしまう。
面白い。

入院中のこと。私は手術の後傷口は痛いし、この後の抗がん剤治療は怖いし、
長い入院生活で気力がだいぶ無くなっていた。弱っていた。
看護師さんに笑顔で答えることも無くなっていた。

そんな時にテレビで「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」がやっていた。
スイカ柄のヘルメットを被って、電動バイクで旅をする番組。その時のゲストが上島竜兵さんだった。

小さいおじさん二人がこちゃこちゃと小競り合いをしたり、くだらないことを言い合ったりしていた。
確か、ランチを食べるシーン。美味しいとか言いながら、口から食べ物をこぼしたとき、そのこぼし方が面白くて
「ふふっ」
と笑った。

お尻とお腹の傷がとっても痛かった。
そして久しぶりに笑った感覚を顔の皮膚に感じた。

で、泣いた。
目尻に涙が溜まって笑い泣きした。

バカだなあ、何やってんだよ。おっかしいなあ。

二人のやりとりがおかしくてその後も笑った。

それから私は出川哲朗さんと上島竜兵さんのファン。
いつか実際に会うことができたら、お礼を言いたいなあ、
なあんて思っていた。
あの時笑えてよかった。笑わせてくれてありがとう、と言おうと思った。
あの時笑えたから、あの夜は比較的穏やかな気持ちで夜を過ごした。
こんな時でも笑えるんだな、と自信になった。
なんだか自分強いんじゃないかと思た。
笑うって大事なんだなと知った。

上島竜兵さんには直接お礼を言う機会は無くなってしまったが、
お空の上で、ぜひ好きなものを食べてゆっくりしていてほしい。

今日も「イッテQ」で出川さんには笑わせてもらった。
あーおっかしいなあ!
面白いおじさんだ。

お笑いってすごいなあと思う。
そして、私は単純で可愛らしい笑いが好きなんだな、と思う。

おやすみなさい。

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