F家の人々 その4
僕が高校生の時のお話。
その時、僕とお母さんはケンカしていた。
言い争ったとかじゃないけれど、お互いに納得できず、2、3日会話をしなかった。
まあ、僕はそんなに悪いことをしたわけではなかったので、意外と普通にしていた。そのうちお母さんの怒りも落ち着くだろうと。
それで、その日は午後から雨が降っていた。
普段自転車通学をしていたけれど、雨が降ってきたのでケータイでお母さんに電話した。
「何」
とぶっきらぼうに出た。
「あー、雨だから迎えにきて欲しいんだけど・・・」
と言うと、ふうんといった鼻息だけ聞こえて、ぶちっと切れた。
まあ、こーゆーのをきっかけに元に戻っていくだろうみたいな思いを持っていた。
それで、迎えにきてもらう時のいつもの場所で待っていた。
校門のそばだ。
しばらくすると、お母さんの運転するうちの赤い車が見えてきた。
当時、我が家は無駄にプジョーに乗っていた。
エンジン音をブルブルいわせながら、校門から入ってきて、垣根のそばに停車した。
僕は後部座席の運転席と対角の席に座ろうと、車の後ろから回ってドアを開けた。
思ったよりも垣根にピッタリ停車していたので、僕は乗り込めなかった。
だから、運転席の後ろに座ろうとドアを閉めた。
すると、僕はまだ乗っていないのに車が走り始めた。
ブンブン言いながら学校を突っ切っていく。
僕は呆気に取られながら、おーいって手を振ってみた。
お母さんの車はそのまま反対側の出口から出ていった。
新しい嫌がらせかと思った。
仕方なく、雨に濡れながらトボトボと歩いた。
まあ、そんなに距離があるわけではないので、30分くらい歩いて家に着いた。
駐車場に車はなかった。
あれ、僕、家の鍵とか今持ってないや・・・
と思って、しばらく軒下で雨宿りをしていると
赤い車が戻ってきて、運転席からお母さんが笑いながら降りてきた。
「いやー、迎えにいってやったのに、ありがとうの一言もないから、余計ムカついて後ろを確認しなかったんだけど。帰ってきてみたら、誰もいなかったから、どこの曲がり角でお前を振りおろしたのかと思ったよ」
って言ってた。
いや、車から振り下ろされるってどんな乗り方よ
と僕は思った。
それからいつもの日常に戻った。
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