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日本団地巡り その①コモアしおつ

私、団地を巡ることにしました。動機としては、どういうところに住みたいか考える年齢になってきた、とか、大学の時は街づくりを研究していたのもあり興味がある、とかそんな感じです。
第1弾としては、「山梨のマチュピチュ」として名高い「コモアしおつ」に行ってみました!

基本情報

・来訪日:2023/1/8
・場所:山梨県上野原市
・アクセス:JR中央本線四方津駅からコモアブリッジで直結
・開発時期:バブル期(1987年造成開始、1991年販売開始)
・開発主体:積水ハウス
・規模 1,413区画
・人口:約3,600人(2015年)
・価格帯:326.4万円(1区画)~525.6万円(1区画)
・コンセプト:豊かな緑に包まれる。ONとOFFが自然と切りかわる心地のよい暮らしを叶える街(HPより)

成り立ち

まず、来訪前のインプットとして、コモアしおつの歴史を簡単に調べました。Wikipedieによれば、以下の通りです。

バブル景気による地価高騰のなか、手頃な価格で一戸建てを求めるニーズに応えるべく、1987年積水ハウス四方津駅北側を造成し、1991年より戸建販売、宅地販売を開始した。
Wikipedliaより

要するに、主に都心で働く人をターゲットに、山梨の山を切り開いて一戸建てを安く売ります!というところですかね。造成後(2005年10月)と、造成前(1974年12月)の航空写真を比較すると、山を切り開いて開発したことが一目瞭然です。

【造成後】3方向に広がる宅地がコモアしおつ(国土地理院CKT20051X)
【造成前】同じ場所だが、同地点は山(国土地理院CKT7417)

当初は人口6000人を計画した、という記事があったので、バブル崩壊とともに計画を縮小したのかな、と推測します。(一次ソースにあたるところまではやってません。)現状私があまり他の団地を知らないので、歴史的な文脈の中での分類とかは分かりません。今後色々調べながら追っていきたいと思います。

行ってみての感想

壮観なコモアブリッジ

四方津駅を降りてすぐに目に入るのが、「コモアブリッジ」です。コモアしおつを有名たらしめている名物と言って良いのではないでしょうか。四方津駅と、山の上にあるコモアしおつを、エスカレーターと斜行エレベーターでつないでいる橋です。

終わりが見えないエスカレーター
斜めに動くエレベーター。表示も特徴的です。

コモアブリッジは、高低差100m、長さ210mをつないでいるらしいです。つまり、三平方の定理を用いて計算すると、全長は約232mくらいだと思います。
来訪日は休日で、エスカレーターはお休みだったので、斜行エレベーターに乗らせていただきました。乗っている感覚や、景色の流れ的にはロープウェイのような印象で、アトラクションみたいでわくわくしました。

肝心の街並みは?

コモアブリッジを登ると、そこには広々とした戸建ての住宅街が広がります。第一印象としては、「思ったより綺麗!」でした。

歩道も広い。夏は木々も生い茂るのでしょう。

造成から30年ほど経っていることから、多少の古さ、限界感があるのでは、と勝手に思っていましたが、その予想は裏切られました。街路の雰囲気も、立ち並ぶ家々も、特に古さは感じません。建築協定により建物のデザインがある程度制限されていることもあり、統一感のある景観となっています。(とはいえ、画一的すぎるわけでもない。)

空が広いです。

ざーっと一周してみました。

お店は、コモアブリッジ周辺にスーパーやクリーニング店があるだけでなく、家々の中にも「ピアノ教室」「イタリア語教室」といった看板が立っている家があり、それなりに商業は行われていそうでした。とはいえ、基本は車で周辺の街(大月のイオンとか)に行くんでしょうね。コモアしおつを出入りする車が多く見られました。

車の入り口。

街の中心には公園があり、歩行者のための空間となっています。ただ、日曜の昼下がりだというのに、ほとんど人がいなかったのが気になります。冬で寒いから、というだけかもしれませんが、憩いの場として機能しているようにはあまり思えませんでした。また、街全体として、「余白」の空間はこの公園に限定されており、公園と家が分断されているような印象はありました。

中心の「時計の公園」
「風の公園」の遊具たち。あまり使われている感がない。。

一周回っての感想としては、全体的に綺麗で落ち着いている点は良いものの、余白がないというか、窮屈感は否めませんでした。自分の好きな家を建てて、家の中での暮らしを楽しむ、そんな印象でした。もちろん、私はちょっと散歩しただけの感想を語っているので、住んでみての感想は全く違うものにはなるとは思います。

今後の展望は?

販売開始から30年を過ぎたコモアしおつの今後はどうなるのでしょうか。開発主体である積水ハウスの考えはちょっと調べても出てこなかったので、上野原市の都市計画マスタープラン(2014年策定)を参考に見てみようと思います。

まず、上野原市の現状としては、コモアしおつのある巌地区だけが人口を保っていて、他の地区は軒並み人口が減っているようです。これだけでもコモアしおつの重要性が見えると思います。

ちょっと横道にそれますが、以前上野原市を訪れた時、高齢化率52.2%という恐ろしい地域がありました。ついつい写真を撮っていたのでここに貼っておきます。これが上野原市の現実のようです。

限界と言わざるを得ない。。

そうした現状の中で、上野原市はコモアしおつをどう位置付けているのか。まず、上野原市は市域を4地域・9地区に分類しており、コモアしおつはこのうちの巌地区の「地区拠点」に位置づけられています。それを踏まえてマスタープランを見ていくと、まず目につくのは以下の記載です。

なお、巌地区の拠点となるコモアしおつ周辺については、既に住宅地が形成されていることから、 生活者に対する更なるサービス向上を図ります。
3-3将来の都市構造

ここから、コモアしおつは地区拠点としてのハード面の機能は既に備えており、今後に取り組むべきはソフト面だとの考えが読み取れます。

その上で、巌地区について記載している5-2章を見てみます。巌地区の重点プロジェクトは、以下に集約されています。

○コミュニティの活性化による地域振興
本地区は、大規模住宅団地(コモアしおつ)や高校・大学の立地などにより、人が多く集まる地域です。そうした特性を活かしたまちづくりを展開していくためにも、来訪者や市民が交流する場を設け、積極的に参加を促すことが重要です。そのため、既存施設を活用した交流の場や新たな活動拠点づくりを支援します。
○地域資源を活かした快適で住よいまちづくり
本地区は桂川が東西に流れ、南側には豊かな森林地域が広がる自然豊かな地区です。自然環境に恵まれた地形を活かし、滞在・体験型のレクリエーション資源の整備・活用、登山道、ハイキングコースの整備を行い、まちの産業活力となる資源を活かした魅力あるまちづくりを進めていきます。 
5-2地域拠点エリアのまちづくりの方針  (2)巌地区 2)将来像

その上で、土地利用の方針についても具体的に言及されています。

コモアしおつでは、良好な住環境を維持するために策定した地区計画や建築協定の適正な運用を 図ります。また、集落地は緑豊かな地域環境と調和し、一定のルールに基づいた計画的な土地利用を進めていきます
5-2地域拠点エリアのまちづくりの方針  (2)巌地区 2)将来像

ここからも、何か大型の商業施設を誘致して利便性を高める、さらに規模を広げるといった方向性ではなく、既存の施設を活かしつつ、景観の維持とコミュニティの活性化といったソフト面のアップデートを目指していることが示されています。

今後、人口減少が進む中で、コモアしおつが人口と活気を保ち続けることができるのか、楽しみにしたいと思います。

長々と書きましたが、読んでくださった方ありがとうございました。

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