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山を登るが如く#17

当時は働いていた特養。

玄関を入ると扉がありました。その扉を閉めると自動的に鍵がかかるシステム。

だけど、その裏には鍵を外す暗証番号が丁寧に書いてある。それを読み取ることができたら誰でも外へ出ることができたのです。

ある日・・

一人の婆様がその鍵を開けて外へ出られました。

事務所の前を通るのですが基本止めません。

「〇〇さんが外へ出られました。」と放送が流れます。そうすると職員が10m以上離れたくらいでついていきます。


もし、何かあったら・・

何かあってもそれはその人の意思で外へ出て起こったこと。例えば山へ登る。これは本人の意思、そこで遭難するかもしれない・・それと同じです。というのが、施設長の考え方でした。


でも、現場の私たちは怖い。目の前で急に飛び出して事故にあうと・・などと思っていました。

実際には、バスやタクシーを呼び止めたり、信号待ちしている車を叩いて乗せてもらおうとした方もおられました。

その車が黒い大きな車で、怖そうなお兄様が降りてこられたときは、史上最速のダッシュで止めにいきましたが(笑)


でも、悪いことはなく、近所の方が

「おばあちゃん、向こうに歩いていったよ」

「暑い中、ご苦労さん」などと声をかけていただいたことを覚えている。


その人の意思を尊重する、意思の確認、地域との繋がりなど様々なことを得ることができた場面でした。


つづく・・・

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