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バッタバタ(3月エッセイ③)

だんだん社会人っぽくなってきた。
持っている仕事量が気づいたら溢れそうになっている。
自分ひとりでできる仕事がまだまだ少なくて、ひとつひとつの作業にかかる時間がとにかく長い。まず自分でやり方を考える。途中詰まって先輩に聞く。回答を待つ。ヒントだけもらってまた考える。
この繰り返しで1日が終わる。当然全く進捗は変わらないので、ストレスが溜まっていく。気づけば顔にニキビが10個以上できて、1度は治したけれど、今は粉瘤のようなかちかちのできものが2つできている。
忙しいと小さいことが余計に気になる。特に満員電車は他人の一挙手一投足が気になる。パーソナルスペースが少し減るだけでこんなにイラついていたっけ、と感じる。
出社で残業気味だと皮膚科に寄る時間もなく、土日は昼まで寝ないと疲れが取れない。

忙しいときでもなぜかSNSを見る暇だけはある。
金曜、在宅勤務をしながら、タイムラインを眺めていると、
「おでこに朝、こぶみたいなのができて、どんどんデカくなるから慌てて病院行った」
という投稿を見かけた。
その時、できものを1か月放置していたことが急に不安になってきた。なんとしてでも今日は定時の18:00に退勤して、病院に行こうと決めた。

定時間際、なぜか会議が入っていた。17時半開始の作業スケジュールの確認のみだったため、おそらく定時には間に合う。その時はそんなに気にしていなかった。
17時半に会議の通話画面に繋いで5分、誰も入ってこない。10分経ってようやく「前の会議が遅れてます。」と連絡が入る。
17:50にようやく会議が始まる。定時にはもう間に合わない。明日は午前中から予定があるから今日行けなければ月曜まで延びる。
18時を超えて、イライラがピークに達してくる。ミュートを解除して、止まらない自分の貧乏ゆすりの音を入れるか迷い出す。18:10にようやくスケジュールの確認が終わり、すぐ家を出ようとすると、もうひとつのタスクの確認が始まった。家で一人で絶叫してみた。

結局会議が終わったのは、18:22で通話を切った瞬間に自転車に飛び乗り、病院へ向かった。息を切らしながら受付にギリギリたどり着いた。他に待っている患者さんは1人もいなかった。その時、急に我に返って、『この人たちも僕さえいなければ早く帰れたのになとか思ってるのかな』と申し訳なく感じた。

処方は前回ニキビでもらった薬と同じもので対処しようということになった。
帰り道、薬局で買い物をしに寄った。
ポイントカードがどこにあったのか探していたらかなり手間取ってしまって、財布をごそごそやっていると、並ぶお客さんが増えてきて変に焦ってきた。絶対に店員さんは『早くしろよ…。』と思っているに違いない。
アプリを登録しているのを思い出し、ようやくバーコードを提示すると、「Pontaもありますか?」と聞かれた。ポイントカードを出すのに、こんなに手間取ってる面倒臭い客なのに、マニュアルを徹底している店員さんに感動した。
Pontaを出すのにもあたふたしていると、しびれを切らした店員さんが画面を覗き込んで操作してくれた。申し訳なさを感じながら、顔を上げるとすごくにこやかにこちらを見ていて、逆に怖かった。

いちいち何かが気になって、どんよりしながら帰宅した。残業した日よりも疲れた。
マスクを外して手を洗おうとすると、口の周りにさっき食べたピザトーストのケチャップがついたままだった。皮膚科の先生はえげつない肌荒れをしていると勘違いしなかっただろうか。

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