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ペレ①ハワイの火山の女神

ハーブ・カワイヌイ・カーネは、ハワイと南太平洋を描く画家、歴史家、著述家。1987年にキラウエア火山のカルデラの西側火口縁に開館したトーマス・A・ジャガー・ミュージアム(現在は閉館)で、ハワイの火山伝説と科学的知識を統合した展示を行うために制作した資料をもとに、本書を出版した。

彼女の名前はペレ。ハワイの火山を支配している。人間には彼女に逆らう力はない。ペレからの知らせは最終決定を意味する。その姿は、長身の美しい娘だったり、腰の曲がった皺くちゃの老婆だったり。白い犬を連れていたり。怒った時には全身を炎で包まれた女性か、炎そのものとなる。

ペレを知るには、最初のハワイアンが、この燃える火山島に渡って来た時に感じた畏怖の念を知ることだ。そこは南太平洋の平穏な島とは異なっていた。彼らは、すべてを破壊する溶岩流を放つ力を知った。それは荒涼かつ壮大な景観を創造する力でもある。自然の力を生命力とみなす世界で、ペレは生まれた。

ペレが支配する土地に起こる謎の多くは、科学的に説明されてきた。しかし、大地が地震や噴火とともに生きている限り、ペレはハワイアンの心の中で、火山活動の具現として生き続けるだろう。彼女を理解するために必要なことは、科学的経験ではなく、ハワイの火山の威厳と力がもたらすスピリチュアルな経験だ。

ハーブ・カワイヌイ・カーネ『ペレ ハワイの火山の女神』(1987年)

ペレは、ハワイの島々を発見したポリネシア人のように、祖国タヒチからカヌーに乗ってやってきたという。ポリネシア人が、未知の恐ろしい現象を擬人化して受け入れたという意味で、ペレは彼らと共にやってきたといえる。火山との関係は、祖先の魂との関係と考えるハワイアンもいる。

彼女の性格は、予測不可能かつ衝撃的で、突然怒り、狂暴になる。彼女は、古代人が経験した畏敬の念から生まれ、その存在は今日でも彼女の土地を訪れる人々に認められている。ハワイアンは、トゥートゥー(祖父母を意味)・ペレに尊敬の念を抱いている。そして溶岩流に家が飲み込まれることを諦めている。

1986年、溶岩がカラパナ村を破壊。「ずっと暮らしてきたが、トゥートゥーが欲しいと言うなら、ここは彼女の土地だ」とハワイアンは語った。
昔、聖職者たちは焼いた豚、野菜、果物、花をペレに捧げた。今でも年配のハワイアンは溶岩原に育つオヘロの実を採ったら、食べる前に最初の実をペレに捧げる。

Discovery of Hawaiʻi

はじめに暗闇があった。その中に大地の母パパの子宮が創られ、天の父ワーケアの光が創られた。二人が抱き合うと、男性の光が女性の暗闇を突き刺し、宇宙に形と命が与えられた。太陽の光の中で、生物の命と成長がもたらされる。生物にとって光は父であり、子宮や卵や土の暗闇は母だ。

偉大な神々が生まれた。創造主カーネ、海の神カナロア、人間の仕事を守るクー、農業と癒しを司るロノ。これらの神々は男性の祖先であり、力の源泉だ。彼らがハワイへやってくると雷雨と暴風を伴う嵐になり、大地が揺れた。
他の神々と人間の母であり、多産と女性の仕事を守る女神ハウメアも生まれた。

偉大な神々は人間や生物の祖先であり、人間は生物とつながっていた。神々の直系にあたるチーフの家系は、万物を動かす力であるマナを途切れさせないように、また家来たちに恩恵がもたらされるように、血統を保った。
ペレは、祖先の国でハウメアから生まれ、主な神々のかなり後にハワイへやってきた。

Pele’s Voyage to Hawaiʻi

ペレの兄カモホアリイは巨大なサメになってカヌーを北へ導いた。ペレは聖なる火を守れる深い穴を必要としていた。そこでニイハウ島からカウアイ島へと穴を掘りながら移動したが、夫を誘惑したペレに怒ってタヒチから追いかけてきた姉、海の女神ナーマカオカハイが穴を水浸しにした。

ペレはハワイの島々を南下していったが、穴を掘るたびに洪水で追いやられてしまう。地学でもハワイ島へ下るにつれて火山は新しくなる。マグマが発生するホットスポットの上をプレートが北西に移動することで、これらの島々ができたからだ。ナーマカオカハイ(水)のほうがペレ(火)よりもパワフルだった。

ナーマカオカハイはペレを追いかけ、マウイ島ハナ近くでの最後の戦いでペレを八つ裂きにした。そこにはカイヴィオペレ(ペレの骨)と呼ばれる丘がある。
肉体の死により、ペレの魂は解き放たれ、神へと昇華した。ペレはハワイ生まれの女神となり、彼女の魂はハワイ島のマウナロアに永遠の家を見つけた。

Pele Searches for a Home

マウナロアは海面よりずっと高い所にあるので、水に消されることなく、火口の中で火を燃やし続けられた。ペレの命令で聖なる火起こし棒で火を起こす神はロノマクア。ペレの兄弟は他に、雷神カネヘキリ、爆発神カポホイカヒオラ、火雨神ケウアアケポー、溶岩神ケオーアヒカマカウア。

尊敬する長兄のサメ神カモホアリイは、太陽が昇る東端の穴の中で、死者を蘇らせる命の水が入った瓢箪を守っている。キラウエア火口の縁の崖はペレが彼に捧げた場所で、火山の蒸気は崖に達しない。
ペレの妹で、多産の女神で踊りの守護神ラカは、魔術や邪悪な力を持つ女神カポとして現れることもある。

ペレのお気に入りの妹は、踊りの守護神ヒイアカだ。彼女はタヒチで卵で生まれ、ハワイまでの長い航海の間、ペレの脇の下のくぼみで温められた。ハワイで卵からかえったヒイアカは、ハワイ生まれの女神として、ハワイアンから大切にされている。ヒイアカは卵からの誕生によってハワイアンになったのだ。

A Pantheon of Volcano Spirits

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