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ペレ②突然怒り、狂暴になる

彼らは海洋民族だった。石器で作り、編んだ縄で繋ぎあわせた航海用カヌーを造った。それを海図や計器なしで操り、ハワイ、ニュージーランド、イースター島の広大な三角地帯を大航海時代より前に探検し、移住した。彼らの食用植物、家畜、言語の起源をたどると東南アジアへ行きつく。

原ポリネシア人は他民族に追われ、海へ逃れた。特徴的な土器の破片などの古代の遺物の発見で、彼らがメラネシアの北側を移動したことが明らかになった。彼らのうちいくつかの集団は中央・東ミクロネシアへ北上。東へ移動し続けた人々は紀元前1100年以前にサモア、トンガ、フィジーの無人の島々を発見。

そこで千年以上、孤立したまま栄え、ポリネシア人の身体的・文化的特徴を発展させた。
約2千年前、人々はポリネシア探検を再開。サモアからカヌーを操り、冬の西風に乗って東へ向った。彼らはタヒチ諸島やマルケサス諸島に移住し、さらに航海してイースター島、ハワイ、ニュージーランドを発見した。

Major culture areas of Oceania: Micronesia, Melanesia, and Polynesia.

450年のハワイには、マルケサスやタヒチから船で渡って来た人々が住んでいた。
数百年後、ライアテア、ボラボラ、フアヒネの身分の高い冒険家たちは、四方八方へ船で乗り出す。彼らはハワイを再び発見し、タヒチとハワイの往復が始まる。この2回目の移住がハワイの伝統の始まりだ。

ハワイという名前は、ライアテアの昔の名前バヴァイイに遡り、それはサモアのサーヴァイイから名付けたのだろう。
「見よ、ハワイだ! 島だ、人だ! ハワイの人々はタヒチの子供だ」
このハワイ最古のチャントは、タヒチからハワイへの航海の成功を祝って、ナビゲーターのカマフアレレが作ったもの。

このチャントは、ハワイからタヒチへ行き、ハワイへ戻って来た彼のチーフであるモイケハを称え、ハワイ・タヒチ間を航海した3世代の物語を伝える。息子のキラは、南へ航海し、父のかたきを討った。孫のカハイは、パンノキの若木をハワイに携え、オアフ島クアロアへ到着した。
彼らはどんな人たちか。

Moʻikeha, The Voyaging King

彼らは一族への帰属を何よりも優先した。血筋によって位を決めた。権力は年長者にあった。最高位の神々の直系で、支配権をもつ、位の高い家族への服従は絶対だ。同族者が傷つけられたら、敵討ちは必須。互いに世話をし、贈り物を与えあう。厖大な伝説、詩、知識は記憶力で保存した。

彼らの神々は、祖先のスピリットと定義される。最も偉大なスピリットは一番遠い祖先たちで、すべての生物に命を与え、すべての自然の力を動かし、人々に美徳、強さ、才能を与える究極の力(マナ)の源だ。厳格なタブー制度は、マナの力強い流れを守るために作られ、法律や社会組織の基盤になっている。

彼らの世界では、すべてが自然であり、あらゆる物や人は全体を構成するために必要な一部だ。成功は、自然を慎重に敬いながら、共に調和して暮らすことで達成できる。それができなければ神々からすぐに罰が下る。信仰は生活のあらゆる面に深く浸透しているので、それを区別して表現する言葉はなかった。

Kahaʻi Entering Kāneʻohe Bay

夢の中で、ペレのスピリットは旅に出た。カウアイ島へ辿り着くと、北部の海岸でフラが踊られていた。そこでペレはハンサムな若いチーフのロヒアウに恋をした。美しい娘の姿となったペレは、宴に加わって彼を恋人にした。ペレは目を覚ますと、ロヒアウを迎えに使いを送ろうと考えた。

旅に出ることを申し出たのは妹のヒイアカだった。ペレは、お気に入りの妹を邪悪なスピリットや妖怪に出会う危険な旅に送り出すのは気が進まなかった。ヒイアカも、オヒアレフアとシダが生い茂り、ホオポエと踊れる聖なる森を後にしたくなかった。けれど、ロヒアウを求めるペレの気持ちは熱かったのだ。

ロヒアウが妹に惹かれることを恐れたペレは、ヒイアカに彼の気を引かないよう約束させた。ヒイアカも、留守の間に愛する森や友人を傷つけないと約束してもらった。ヒイアカの旅は危険だったが、ペレが授けた魔術を使って妖怪と戦い、親切なスピリットの助けを借りて、とうとうカウアイ島へ辿り着いた。

Pele Dreaming

ロヒアウは、ペレを失った悲しみで死んでいたが、ヒイアカは彼のスピリットを探して生き返らせた。二人はハワイ島へ向かう。
けれどペレが定めた40日間の期限は過ぎていた。ペレは、妹がロヒアウと一緒に自分を裏切ったと思いこみ、オヒアレフアの森と友人ホオポエを焼き尽くした。

ヒイアカとロヒアウは惹かれ合っていたが、ヒイアカはペレへの忠誠を守ってロヒアウの抱擁を拒んでいた。ハワイ島に近づき、自分の森と友人が焼け落ちているのを見て、ペレが自分を裏切ったことを知る。悲しみに打ちのめされたヒイアカは、姉の前でロヒアウと抱き合う。激怒したペレは炎と溶岩で攻撃。

ロヒアウは死んでしまう。たまたまタヒチから船で来ていたペレの兄カーネミロハイは、ハワイ島の近くでロヒアウのスピリットが海の上を飛んでいるのを見て、手を伸ばして捕まえる。ハワイ島でロヒアウの肉体を見つけ、命を蘇らせる。ヒイアカとロヒアウはオアフ島で再会し、一緒にカウアイ島へ戻った。

Hiʻiaka and Lohiʻau

雪山の女神ポリアフはマウナケアに住み、頂きに雪のマントを広げ、ペレの住むマウナロアの頂上を雪で覆うこともある。ポリアフとペレの不仲の理由は、カウアイ島の若いチーフのアイヴォヒクプアにある。彼は夢の中でハワイ島の女性チーフのライエと婚約すると、彼女を探す旅に出た。

彼がマウイ島ハナの海岸沿いにカヌーを走らせていると、サーフィンをする娘ヒナイカマラマに惹かれた。ヒナイカマラマはペレの化身で、娘も彼に一目惚れ。つかの間の恋愛を楽しんだ後、彼は言い訳をして旅を続ける。ハワイ島でライエを探す途中でポリアフと出会う。二人は婚約し、カウアイ島へ帰った。

ヒナイカマラマもカウアイ島へ行き、結婚の儀式に押しかけて、彼を取り返す。憤慨したポリアフは、熱と冷気の突風を交互に吹きつけて二人を引き離す。ヒナイカマラマはキラウエアに帰り、ポリアフはマウナケアに帰る。浮気性の彼は一人残されたが、危険な三角関係から逃れて命拾いしたのは幸運だった。

Poliʻahu Snow Goddess

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