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スマートロボットは建築をどう変えるのか?

スマートロボット技術は、ガートナーのハイプサイクルを駆け抜けつつある。

デジタルヘルスや、ロボティクス・プロセス・オートメーションと比べると、まだ幻滅期を脱しておらず、今後確実に普及するかというと、まだ不確実性は残っているという状況だが、個人的にはこの流れは自明ではないかと思っており、ここで取り上げてみる。

まずは、スマートロボット技術とは何だろうか?

多くの人が思い描くものは、お掃除ロボットのルンバや、ペッパーくんや、aibo(ロボット犬)などではないだろうか?自動運転車、ドローン、工場でのロボット等をイメージする人もいるかも知れない。この辺りどこまでも広がってしまうので、ここでは、スマートという事で、AI(人工知能)で多少なりとも自立・自律するロボットを想定したいと思う。

これら様々なロボットがあるが、大きくは3つに大別できるではないだろうか。

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まず1つ目は家事や業務などやらなければならないが、できれば自分ではやりたくない(もしくはできるだけ効率的にやりたい)ことを、賢くやってくれたり、効率化してくれるもの。ルンバなど。

2つ目は、話し相手になってくれたり、癒しになってくれたりと、人の人生を豊かにしてくれるもの。ペッパーくんやaiboなど。

そして最後、3つ目は人やモノの移動(いわゆるモビリティ)に関わるものである。自動運転、ドローンなど。

これら3つと建築との関係性を考察してみたい。

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まず1つ目のスマートロボットであるが、これは自動化、省力化、効率化といった方向性の話である。それらは、暮らしをどんどん楽(らく)にしていくことになる。そして、暮らしが楽になることと建築は一見、関係がない様に感じるかも知れないが、実はそんなことはない。

今でこそ、お掃除ロボットの強いイメージがあり、家電の世界だけの話に感じてしまうが、本質は「何もしなくて求めるアウトプットが得られる」ということである。つまり料理しなくてもご飯ができる、掃除しなくてもいつでも家中きれい、知らないうちにお風呂の準備ができているという夢の様な世界が少しずつ実現していくのである。その過程において、操作系は確実に消えていく。考えただけで電気が付くとか、人がいなくなったら鍵が閉まる等。最近では、帰宅時にはエアコンが付いていたりといったことも可能になってきている。

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そして、これらをどう捉えるかが重要である!

これらを全て家電側(他にも設備やIT機器やガジェット等もあるが、ここでは分かりやすくするために家電で進める)に任せて良いのだろうか?

家電側に任せるという事は即ち、これまで建築の領域にあった機能を、どんどん家電領域へ移行していくことに他ならない。住まいという全体で考えた時は、生活者にとっての最適解になるのであればどちらでも良いのではあるが、業界という視点では、建築業界から家電業界へ価値が移転することになり、少なからず建築業界の衰退(少し大袈裟かも知れないが)に繋がる話である。

今は建築業界の人たちにとって、自動化・省力化・効率化という領域は不得意なことかも知れない。けれども長い目で見たら、建築領域でなんとか出来るのであれば、建築に新たな付加価値を作っていくことになるはずである。初めから諦めずに、業界としてチャレンジしても良いのではないか、まだ間に合うのではないかと個人的には思っている。

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続いて2つ目のスマートロボットについてであるが、今は、人なり動物なりのロボットが言葉や声を発することで、コミュニケーションや癒しなどといった価値を提供している。建築とは独立して存在しているロボットたちの話である。

ここも捉え方を変えていくべきだと思っている。

必ずしも人や動物に似せたものが話す必要があるのだろうか?

今の状況は実は無理があるのではないか?

確かに、こういったロボットは映画や小説では沢山出てくるので、一見、人型や動物型が当たり前だと思ってしまう。けれども、これらロボットを作るのには多大な余計なコストがかかっている。そして人型にするため目を作り、口を作り、手を作り、足を作り、出来るだけ人っぽく・・・・・これは何のための努力なのだろうか?

やりたいことは、人とのコミュニケーションや癒しを与えることである。

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人は建築と対話する。

そんな方向性があっても良いのではないだろうか?

建築側にコミュニケーション機能を持たせることができれば、わざわざ人型ロボットを家におく必要はなくなる。高価な人型ロボットを狭い家に置き、特定な場所で会話するのと、人型ではないが、安価で、家中どこにいても見守ってくれて、どこでも話しを聞いてくれる「家」というロボットではどちらが適しているのだろうか?

私は後者しかないのではないと確信している。

これについても、現在では建築業界の人たちの得意とする技術ではないが、一方で彼らには家の特徴を良く理解しているという強みがある。それらを活かすことで、より生活者に寄り添った、コミュニケーションできる「家」という新たな領域を切り開いていく人がいてもいいのではないかと思う。

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最後、3つ目のスマートロボットに関しては、現在は完全に家とは離れて、移動に関係する業界が先導し、建築とはあまり関係ないところで進行している。

けれどもこの移動ロボットの話も、本来は家との繋がりは避けられないはずである。

自動運転は「家」から出発し「家」に戻ってくる。ドローンや自動宅配車は「家」にモノを届ける。

もっと家と移動ロボットはシームレスになるべきだろう。

それらのロボットは家のどこにいて、どう出ていって、どこまで入ってくるのか、恐らく今はその具体的なイメージはない。

ドローンや自動宅配車を受け入れる場所はどこだろうか、どうやって彼らは入ってくるのだろうか?

必ずしも玄関とは限らないとしたら、どこから入れる様にするべきなのか?

階段の段差はどうやって解消すべきなのか、ロボット側がクリアするのか、建築側がサポートするのか?

どこまで家の中に入れる様にするのか、現在の人の暮らしに最適化された家の間取りや構造で大丈夫なのだろうか、もっと広くて、強度が必要で、滑りにくくて、汚れたタイヤはどうするのか、充電は・・・考え出したらキリがないほと考慮すべき課題が山積している。

だからこそ!

思考停止になるのではなく、今こそモビリティ関連の業界と一緒に新たな住まいの仕組みを考えていくべきである。課題があるからこそ、そこにチャンスがあるのだから。

それは今までは都市システムの中で、唯一ブラックボックスだった「家」を都市機能の一部として成立させていくことを意味している。公共と私で分断されていた情報を1つにすることが出来るのである。

最終的には、公共私が全てシームレスに繋がって最適化される世界が実現できることに繋がっていくのでは無いかと思う。

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この3つのスマートロボットと建築が共存する世界は、まだ完全にイメージできている人は少ないだろうが、なんとか建築業界の叡智を結集して作り上げていきたいと強く願うところである。



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