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DX視点で読み解く:新経済連盟の政策意見「デジタル市場競争に係る中期展望レポート」

2020年7月27日、「デジタル市場競争に係る中期展望レポート」がWeb公開されました。これは、内閣官房デジタル市場競争本部が意見募集を行ったことを受け、一般社団法人新経済連盟(代表理事:三木谷 浩史)がまとめた意見書です。
https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000204145

(補:キャプチャ画像も同URLより拝借)



全46頁に及ぶ結構な力作です。

いまデジタル市場でなにが起きているのか、なにがリスクなのか、が体系的に整理されています。政令法令によりなにが整い、なにが不足しているのかも明らかにしています。デジタル市場にうとい、初見の人にも向けた内容となっているので、冗長な部分はありますが、政策意見として読み応えはあります。

注目は、後半の”4.今後目指すべき方向性”
特に、「Trusted Web」は抑えるべきキーワードでしょうね。
かいつまんで解説します。


現行のインターネットをWeb2.0と捉えその構造が抱える課題(P27)をあげています。
・プラットフォームが、 中央管理者として重要な存在に。
 パーソナル・データを収集し、ユーザーの自らへのロックイン効果を高め、「一人勝ち」するメガプラットフォームとなった。
・メガプラットフォームによるプライバシー利活用に関する懸念、人々が触れる情報自体が偏っていく結果 (エコーチェンバー効果)、民主主義の基盤を揺るがすのではないかといった懸念、あるいは、社会全体からみて公益的な価値を持ち、知る権利に資する情報としてのビッグデータが囲い込まれてしまうのではないかとの懸念が出てくる

以上は課題のほんの一部。それでも納得できますね。
今後、インターネット構造が目指すべき方向性としては、中央集権型のデータのガバナンス構造ではなく、「データへのアクセスのコントロールを、それが本来帰属すべき個人・法人等が行い、データの活用から生じる価値をマネージできる仕組み」の構築(「データ・ガバナンス」のレイヤーの構築)を図っていくこと。そして、これにより、「データ社会における「信頼」を再構築する」こと。これを「Trusted Web」と表現しています。

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「Trusted Web」で想定される世界においては、

・例えば、個人や法人は、データへのアクセス等を、プラットフォーム側がコントロールせず、個人が管理。そこから派生する分散型IDによって、コントロールすることができるような状態
・データの活用を望む企業は、個人や法人にデータの活用を求め、データをコントロールする個人や法人は、当該企業を信頼できるものと考えれば、データへのアクセスを認める
・データを活用しようとする企業は、データへのアクセスを認めるに足る信頼と、それをベースにした付加価値の提供を競っていく

情報バンク構想をさらに発展したコンセプトのようです。
さらに、

・個人等がデータをコントロールすることに限界がある中で(認知限界) 、個人等の利益の最大化を図る上では、自律的な人工知能によるパーソナルAIエージェント

の他、トレサビリティ、分散ストレージ、P2P取引、エッジ化、(デジタル)ガバナンスをもカバーするコンセプトとしてまとめられています。

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IBMが初期メインフレーム時代を築き、次のパソコン時代でマイクロソフトが席巻し、GAFA、BATHに代表される現在のデジタル市場・・・次のまだ見ぬ新たな世界において、覇者も栄枯盛衰は免れないかもしれません。

Society5.0に紐づけてますが、「Trusted Web」はさらなる先を見ています。これからの注目キーワードです。

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