寿命をあげたがる女

昼休み、麺を啜っているとふと、立てかけられた写真と目が合う。
通称「遺影」、辞めた人をチェキで写したものである。みんなピン写でピースしている。


「山田さん、元気ですかね……ずっと元気でいてほしいな…寿命あげたいな……」「わかる こういう人こそ長生きすべき」「使い道ないし健康だから全部あげたい」

どうか、どうかみんな健康で長生きしてくれ…君たちの笑顔は最高だ…

寿命が任意でプレゼントできればいいのになぁ


「そういえば今年後厄なんだよね」

「抜けるんですねおめでとうございます!てか37歳なんですか今年!!?見えないね」

「そうだよだから死にたがってんだよ」
「ギャハハ」

文字に起こすと酷い会話だな

この人は本当によく命を終えたがるが、身体が健康すぎて全く死が見えないらしい。
別に厭世的というわけでもなく、むしろご機嫌な人である。

年を取るたびに楽しみが持続しなくなってきたのが悩みで、キャンプをした時も朝起き抜けに「もう…なんでこうなんだろう…死にたい…」と言い残し、1人椅子に座って朝日を見ていた。

遠くない未来、私がチェキに写る日が来たら、先輩から寿命をいただく打診をされるかもしれない。

その時はありがたく頂戴しよう。


おわり

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