暇なもんで
水掻きの部分まで、手を念入りに洗う。真剣すぎて背後に立っていた人に気がつかなかった。
「髪、インナー以外も全部染めてるの?」
「ハイ 全頭青を入れてますね」
「…すごく ちゃんとしてるなぁ」
「そうですねまぁ 暇なんで……」
暇なんでとしか言えなかった。
化粧をしたり髪を整えたり、爪を塗ったり、これって暇だから以外にあるんですかね?
何事も、わずかの暇をほんの少しずつ作るんだよ。
心の余裕をかき集めることに慣れてる人間は強いぞ
そういうわけで…
時間というものは非常に重要なわけですが
仕事をしていると「ごめんなさい!これやっぱナシで!」とか「Aでやってもらったんですけど…全く違うBで!」とかよくあって、悲しいことに、10年前の働き方をしてる旧人類がまだ存在しているわけです。
前の職場の先輩は、「命削って作ったものがあっけなく無いことにされてしまう」悲しさと疲弊で辞めてしまった。
私はどちらかというと自分の作ったモノに愛がないどころかどうでも良くて、
客に褒められるとか、本に載るとか、賞を貰うとか、あんまりぐっとこない。
お前の作ったモノのおかげで爆益が出たとかの方が喜べる。
だから、「作ったものがなくなってしまう」ことよりも「え……これを作った時間で寝れたのでは?」とか「土曜日、公園でバドミントンできたのでは?」と後悔してしまう。
時間を無駄にされたことに心底がっかりする。
時は戻らないので…
10分のヒマをかき集めて爪を塗る。
ピカピカのギラギラにしたら、殴る力が強くなる気がする。目が覚めるムラサキ色のパンツを履けば遠くに蹴り飛ばせる気もしてくる。
ハッ
旧人類をボコボコにするためにヒマを作っているのかも…しれないね
そんなことないか。
おわり
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