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月報Okishima Life 2023.4 漁師は楽しい!

春も段々と色褪せて

今年は桜の開花がだいぶ早かったものの天候に恵まれ、だいぶ長持ちしました。
ちょうどこの頃から沖合いの状況も変わり始め、エビやその他魚たちは深場から浅瀬へと大移動を始めます。ここから禁漁期の4月末までがまさにエビ曳きの終盤戦であり、正念場。エビの居場所が頻繁に変わる状況下、今年は少しでもベテラン勢に食らいついていけるよう、とにかく自分なりにもがいてみました。

4月のエビ曳き

エビの分布状況ががらっと変わる4月。深場から一旦散らばったエビが浅瀬で固まる年があればそうでない年、そもそも散らばることなく最後まで深場に固まっている年など。また、同じ深さであってもそのどこに固まるのかもまた違う。そう、これまでの経験や勘をフルに活用して広大な琵琶湖の中からエビの居場所を見つけ出す、見つけ出せたら一発が大きい。見つけられなかったそこまで、そんな漁獲量に雲泥の差が出る月です。
そして天候面では琵琶湖はいろんな顔を見せてくるので、そう簡単には漁をさせてもらえない。

単独で初めて迎える4月なので、正直手加減をしてもらいたいところでしたが、それとは裏腹に、初年度から非常に難しい試練を突きつけられることになりました、。

要注意のハヤテに遭遇

ある日9時頃から風が吹いてくる予報でしたが、それまでは全く大丈夫そうだったのでいつも通り出漁。9時頃になっても風1つないような快晴だったので、もう一網やろうと思い、網を投下。そしたら周りの漁師さんたちが一斉に帰港し始め、『なんでや?』と考えている間もなく急に風が吹き始めた。続けて景色を見ている間もなく、一気に突風と波が押し寄せる。1人沖合いに残っているような状況だったので、さすがに『これはヤバい!』と恐怖を感じたので、超特急で撤収開始。顔に波をかぶりながらなんとか撤収し無事帰港は出来ましたが、ホントに命の危険を感じたそんな時間でした。この突風こそみんなが口酸っぱく言われるこの時期に吹く突風『ハヤテ』。実感は一番の勉強。今後は出くわさないように気をつけよう。

深場から浅瀬へ

4月初旬、深場での漁獲についに見切りがつき、いよいよ浅瀬へと向き始めることに。大体の候補漁場はあったので点々と船を走らせるものの、なかなかエビが顔を見せてくれない。これが4月の難しさ。そんな中、獲り続ける事はなかったが、都度エビが顔を見せてくれた。その時の嬉しさはたまらなかった。

ついに顔を見せてくれたエビ

姉川の合戦

毎年この終盤の時期によく行くのが姉川河口付近。こういった河口近辺は流れ物(流木等)が多く、網に入って破れてしまう事もしばしば。初めての漁場はまず慣れるところからですが、こういった難易度が高い漁場はより神経質になる。とりあえず、河口から離れた比較的安全な場所で網を投下。そしたらまさかのまさか初めての網に何かが引っ掛かり、一発で網が破れて即終了。。これは、案の定すぎてかなり辛かった、、。

網を直し、翌日再挑戦。無事やりきり、ここの漁場に慣れたどころかエビの顔が少し見られ、これは明日が楽しみという結果。そして翌日、さらに翌日と通いエビが日に日に増えていき、結果的にそれなりの漁獲量に。この頃、全体的にあまり獲れてないにも関わらず、自分が獲れたのは非常に嬉しかった。これが4月なんだな。経験値がまた上がった気がします。

遠い&日が昇るのが早い終盤なので、出漁時間の早さはピーク
鮎小糸を横目に向かいます
漁場からはすぐ近くに竹生島が見えます
濃霧の日は全く周りが見えずかなり神経を使った
歓喜
こんなすがすがしい帰港はない

浅瀬でいろんな魚に遭遇

今の時期、スジエビだけでなく沢山の魚たちが岸へ押し寄せてきます。浅瀬で網を投下すると、いろんな魚が入ってきて毎度網をあげるのが楽しみ。漁場や深さが少し違うだけでも全く変わってきます。
その中でも一番びっくりしたのが、これまで3年以上船に乗ってきて初めて入ってきた30cmオーバーのギギ。見えてきた瞬間『今晩はナマズやな…!』と思ってテンション上がったけど、ギギと分かった瞬間それどころではない喜び!
これだから、漁はおもしろい!

スゴモロコ
ドジョウ?
食事中?のマジカ
マジカの口から出てきたナマズ(生きてた)
ヒガイ

30㎝オーバーギギ

漁師は楽しい!

3月から沢山の経験を積みながら、無事初シーズンの沖曳きを終えることが出来ました。独立当初は、網や綱をペラに巻いたり流木を拾って網を破いたりしてトラブってしまった翌朝を迎えるのがかなり億劫になって恐さの方が勝っていましたが、今はトラブらないように改善したり漁自体に慣れたこともあり、翌朝を楽しみに迎えられるようになりました。沖曳きが終わってしまうのに寂しさを感じてしまっているくらいです。
これだけは言いたい、『漁師は楽しい!』

今月の湖魚料理たち!

ギギの白焼き、蒲焼き

現役漁師さんや水族館等でも非常に珍しいとされる30㎝オーバーのギギ。どこかに連絡を入れて寄贈したりする事も一度考えたものの、やはり一度は口にしておきたいなーと思い、迷いに迷ったあげく頂く事に。
皮表面はナマズと同じく滑るので、手袋を装着して捌く。捌いてみると身は非常に綺麗。さっそく白焼きと蒲焼きにしてみました。

食べてみると、ナマズのような弾力ある皮と鱈のようなやさしくほろほろと口の中で崩れていくあっさり食感の身。一言で表すと、上品なナマズという感じでした。次はいつ頂けるか、非常に満足な一品でした。

スゴ未成魚の釜揚げ

今年の浅瀬ではどこに行っても見事に大小様々なスゴモロコが網に入ってきたので、焼いたりして頂きました。
その中でも一押しは未成魚の釜揚げ。ゴリや氷魚の釜揚げにも全く劣らずあっさり美味しく、生姜ポン酢で永遠に食べてました。
また来年入ってきたらぜひ食べたい一品です。

ギギの骨格標本

そして、ギギは食べるだけでなく骨格標本にも。初の骨格標本でしたが、全体像も分かる綺麗な標本に仕上がりました。かっこいい!

今回はここまで

忙しない3、4月を何とか乗りきった次第ですが、そんな中でも沢山の人が会いに来てくださり、楽しむことが出来たとても充実した2カ月でした。
こちらは、漁師姿や日常を撮ってもらった一部。いい思い出です。

これからまたイチからエビタツベ漁を自分のカタチに落とし込んでいくところからですが、それも含めて全力で楽しんで慣れていければと思います。今からワクワクです!
では!




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