中学・高校を問わず、大抵の数学教師は教え方がつまらないという偏見を持っている。

偏見と書けるぐらいには、実際そんなこともないと分かってもいる。

ただ不運なことに自分が経験してきた中学高校の数学教師は、9割がた壊滅的に授業がつまらなかった。

自分が数学が全然出来なくて文系に進んだのはそれが原因の1つかもしれない。

証拠に、面白い授業をする先生の時のテストは100点近く取れてたもん、普通に。

教え方が面白く(興味深く)ないと、その分野の勉強が捗らないというのは少なからずあると思う。

残りの9割のつまらない先生も楽しくてわかりやすい授業をしてくれていれば、

朱雀ガラティア(数学者・理論物理学者・量子力学者)

みたいな肩書きになっていたかもしれないぞ？？

いや、どれだけ逆立ちしても文系だな、自分は。

ところで中学のとき、担当になった数学の教師が少し変わっていた。

50代でメガネで中肉中背のおじさん。
数学教師なのにいつも白衣を着ていて、
1mの竹の定規を指し棒代わりに携帯。
冗談やプライベートのことは一切話さず常にですます口調で、生徒たちからは近寄りがたい雰囲気があった。

ちびまる子ちゃんに出てくる担任の先生の超無機質で超無愛想バージョンみたいな感じ。

その先生がある日の授業で速度の問題をやっていた時のこと。

「時速と言えば……

去年、時速90kmオーバーで走っていた自動車が建物に激突した事故のニュースがありましてねぇ。

建物の壁は崩壊したんですが、運転手の命に別状はなかったんです。

そんな迷惑な奴、死ねばよかったんですけどねぇ。」

そこでクラス中が爆笑した。

普段冗談を言わない先生だからなのか尚更、
みんな手を叩いて笑っている。

そんな中で、自分1人だけがスーっと血の気が引いたように戦慄していた。

どう考えてもアウトなサイコパス発言だろう。

その教師に対する印象は、恐怖という感情1種類のみに変わった。

しかし…クラスのみんなは笑っている。

これってもしかして自分がずれているんだろうか？

嫌悪感と違和感でざわざわと不安になっているうちにその日の授業は終了した。

放課後、いつも一緒に帰る他クラスの友人に先の発言の話をしたところ。

彼も「マジか。ウケるな。」と言っていた。

教師という立場の人間が、他人のことを「死ねばよかった」なんて涼しげに言い放つ、その出来事自体が不可解だった。
なぜ誰も違和感を抱かないのだろう？

話の中の運転手を擁護する気はないし、ちゃんと罪は償うべきだが、だからって、ねぇ？

その発言はごく軽いノリでなされたものであり教室の雰囲気も和やかだったので、
学校で問題になったりはしなかった。

みんなからすれば、親や他の先生に話したりするほどのことでもないんだろう。
自分も、糾弾したい気持ちまではなかったので他の大人に言うことはしなかったが、
もし密告していたら騒ぎになっていたのだろうか。

あれから10数年経つ。

別に当時の感情を引きずっているわけではないが、
あの数学教師のことを思い返すと、
やはり今の自分でもあいつはヤバい、と思う。

サイコパス、マッドサイエンティストだ。
否、数学者だからマッドマスマティシャンか。（笑）

当の本人もそうだが、
それ以上に心配なのはあの時ケラケラと笑っていた自分以外のクラスメイト全員だ。

今では父や母になっている者もいるだろう。

彼らがどんな大人になっているのか時たま気になるが、きっとろくなことになっていないんだろうな、と思うのであった。

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