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【エッセイ】憧れのお店、猿田彦珈琲が地元・仙台にやってきた

10年くらい前に東京で出会い、憧れていた店がある。
それが「猿田彦珈琲」だ。

当時20代だった私は、変化がなさすぎる地元での暮らしに飽き、東京に憧れていた。
ただ、勤め先も仙台弁が飛び交うような地元企業、東京に縁もゆかりもない生活だった。

ただし、憧れる割には、住むのは恐いという小心者。

なので、東京に行く用事をわざわざ作り(美術館の企画展など)、時々行っていた。
そして、帰りはおぼつかない足取りで東京駅をウロウロし、ようやく東北新幹線に乗り場にたどりついたのを思い出す。

その時に、東京駅構内のお店で出会ったのが猿田彦珈琲のドリップパックだった。地元にはない大都会・東京のコーヒーというだけで、輝いて見えた。飲んでみたくなり、買った。
コーヒーの味の違いもよくわからないのだが、とても美味しいと思った。

今思えば、完全なるミーハーな人である。
だが、その後も東京へ行く度にドリップパックを買っていた。私にとって猿田彦珈琲は、東京への憧れの象徴のようなものだった。

そんな憧れのお店がついに先週、東北進出を果たした。

嬉しいことに同じ仙台市内。家からは車で1時間かかるけど、海沿いにありドライブするには気持ちよい場所だ。

昨日、絶好のドライブ日和だったので行ってみた。お店が近づくと渋滞し、なかなか前に進まない。けど、これまた好きなスカパラを聴きながらだったので、問題なし。

よく晴れた日に、大好きな音楽を聴きながら、海沿いのまっすぐに伸びた道を運転する。
趣味がドライブの私にとっては至福のひととき。さらに行き先は憧れの猿田彦珈琲。
それだけでテンションが上がるのを感じた。

お店に到着すると、列ができていた。
ざっと見て20人くらいが並んでいる。

いつも東京で買っていたドリップパックをおみやげにして、店内でも飲んでいくことにした。

シンプルな内装、ウッディーな椅子とテーブル、日常を忘れて洗練された空間に身を置きたくなったのである。

なんて格好つけて言ってみたが、暑くて冷たいものが飲みたくてたまらなかったのが本当のところだ。

頼んだのは、「シュワシュワレモンコーヒー」。
レモンシロップ、コーヒー、炭酸水が入り、上にレモンの輪切りがのっている。

見るからに爽やか。
ただ、紅茶とレモン、コーラとレモンの組み合わせは飲んだことがあるけど、コーヒーとレモンは初めてだった。

飲んでみると、コーヒーの苦みにレモンシロップの甘みが合う。
炭酸が入っていて、のどごしがスッキリとしている。また暑い日に飲みたいと思った。

そして家に帰り、買ってきたドリップパックでコーヒーを淹れた。
その時に、東京に憧れていた頃のことを思い出し、恥ずかしいような、微笑ましいような気分になったのだった。
もちろん、コーヒーはあの時と変わらない美味しさだった。






 


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