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#265 森保一監督論

とても興味深いなと思ったので少し詳しく整理してみます。

アジアカップのラウンド16で彩艶選手や浅野選手がそこそこのミスをして日本代表はもう少し楽に勝てる試合を難しくしてしまいました。

私をはじめ多くの人が「しっかりしてくれ・・」と思ったはずですが、
その後少し冷静になって考えてみたんですけど、きっと森保さんって「何やってんだお前!」って思考にならないと思うんですよね。

これって、
人柄が優しいとかそういう問題じゃなくて、そもそも”思考”が違うのかな、と。


■森保一の思考

人のパフォーマンスって常に100点満点だとは限らないと思うんですよ。そりゃ80点の日もあれば、逆に120点出す日もある。

でも、共通して言えるのはみんな(アウトプットとしての点数は何であれ)100%でやっているという事。たぶん森保さんはここを見てる。

つまり、
100%出してくれればいい。そいつがピッチで何点をたたき出すかはこちらで判断するから、と。

この思考があるとですね、例え蓋を開けてみて選手のパフォーマンスが悪くても、「選んだのは自分」「選手は一生懸命やってくれた」と、そんな言葉が出てくるんですよね。

聞き慣れたフレーズでもあるんですけどこれは奇麗ごとでもなんでもなくって、本心なんですよ。これ言える監督ってのは最後の最後でベクトルが自分に向いてる。
これが森保さんの強さかなと。

ではなぜこの思考だと強いのか。それを紐解いてみます。



■批判に対して強い

負けられない戦いに対して、自分で選手を選んで、自分の判断で送り出す。
これは監督当人にしかわからない相当のナーバスさがあると思うんですよ。

この超難問を解決するために、あらゆることを考えて、何度も現場を見て、本人と話す作業を時間の許す限り惜しみなくやるんですよね。そうして信じた選手に現場を託すわけです。

この作業を誰よりも質と時間を掛けてやったのならば、
アウトプットを見ただけの他人(これはジャーナリストも含む)の意見など取るに足らないと、自分なら思うでしょう。

間違いは絶対ないとは言えませんが、少なくともあの時の自分は最大限を尽くした。その現実が、批判に対して自分自身を強くしているはずです。いや、批判に対して強いというよりは、そもそも気にならないと言った方が正しいかもしれません。

そして、
そうしたボスの態度は”選ばれた”側の選手にも伝搬するんですよ。選手は恐らく、世間の声より選んでくれた監督を信じる。

そしてこれは、選手自身にも実にポジティブな影響を及ぼすんですよね。



■ミスに対して強い

失敗しようと思ってピッチに向かう選手はいません。

でも、想いと結果が一致することはそうそう無くって、うまくいかないことは何度もあります。そんな時「何やってんだお前!」と言われると、普通なら「うるせぇなクソ」と思います。理由は簡単です。誰も失敗しようと思って失敗していないからです。

そんで少し冷静になって反省したとき今度は自己嫌悪がやって来て、「オレダメなんかな」と思ったりします。なぜなら100%必死にやっているのは事実で、それでもダメ出しされているからです。


でもですね、
ここで森保流の”オレが選んだんだから”っていう思考が効いてきます。「何やってんだお前!」と言わない監督が、「選んだのは自分。選手は一生懸命やってくれた」と言っていれば、ただただ「次は応えなきゃ」「オレは本来は出来る」と思うでしょう。

こうして今度は、選ばれた側のベクトルが自然と自分自身に向くんです。「でも」と「だって」を連発して文句ばっかいう人は成長しませんが、こうして自分の失敗と素直に向き合える人は強いですよ。

人って、こうして失敗から成長するんですね。


仕事してると「自責の念」って言葉が良く飛び交うんですけど、あれってマゾヒズムの代表みたいにきな臭いと思っている人が多いと思います。

理由は上司がアホみたいに形だけ押し付けてくるからです。でも本来はこういうプロセスがあってこそ成り立つものなんですよね。
貴方の上司がイケてるかイケてないかを見分ける一つのポイントだと思います。



■森保流は万能か

さて、
ここまで森保さん万歳!!で話を進めてきましたが、これが万能かと言われると、実のところそうでもないと思っています。

理由は、森保流が上手くいくのは代表監督だからかなんじゃないかな、と思うからです。

代表監督ってのは選べる立場にあります。「選んだのは自分。選手は一生懸命やってくれた」ってのは、理想に対して選べる駒が豊富にあるから言えるという側面もあります。

森保さんは広島でも3連覇を成し遂げていますが、
これがJ3のこれからってチームだったらアプローチは少し変わってくるのかなとも思います。なぜなら理想に対して資源が必ずしも豊富ではないからです。


あと、
2種年代の監督にとっても森保流を真似すれば万事うまくいくとも言えない気がします。森保さんの信じるという行為、結果に対して選手自身で向き合うことを期待する行為ってのは選手が大人だから出来る事です。

高校生以下の年齢で、全員が全員そういう資質を持ち合わせているわけではありませんから。



■残酷な森保一監督論

さてさて、
資源が豊富で、大人のチームだから出来るのでは?という注釈付きながら基本的にはとても素晴らしいと思う森保さんのやり方。

選手とチームに一体感があってとてもハートフルな印象を受けるんですけど、ただですね。僕自身は一周回って森保さんのやり方はむしろ残酷なんじゃないかなと思ったりもします。


それはですね。
熟考に熟考を重ね、最後は自分自身で判断するという行為が強固であるがゆえ、それに乗らなかった選手ってのはマジのガチでチャンス無いと思うんですよ。

つまり選出に対する意識が強すぎて「ちょっとこの選手試してみる?」みたいな遊び代がほとんどないと思うんですよね。
そりゃ親善試合なんかで試される選手はいますが、ドラスティックなチャレンジはほとんど無いはずです。

どんなにリーグで活躍していても鈴木優磨が選ばれないってのはまさにこれの典型かな、と思います。



■最後に横さんについて

かつてこんなnoteを書きましたけど、

横さんは間違いなくこの森保流からインスパイアを受けています。


ただですね、
J2かつ補強禁止から始まった横さんの挑戦は、理想に対して選べる立場にある代表監督よりもっとずっと難しかったんだと思うんですよね。

それでも選手に「自責の念」を植え付けて成長させ、目標を達成させてしまった。これは本当に凄い事だと思います。


それからもう一つ。
森保さんは選手選考に対して自分の信念が強い。それ故に見方を変えれば残酷だ。と言いましたけど、
その考えを良く知っている元側近が「良い選手がいる」と進言したらどうでしょう。これは逆に、大いに興味を持つんじゃないかなと思うわけです。

僕がですね、
磐田に来れば代表も見えて来るかも!と唾を飛ばして言っているのは実はあながち冗談ではなくて、「チャンス」「きっかけ」「縁」という概念で見れば絶対にアドバンテージあるんですよ!!


引く手あまたの中 磐田を選んでくれた平川選手なんかはその辺をしっかりと見据えているんじゃなかろうか。J2やJ3から来た若い選手。それから高卒、大卒、ユースの選手。はっきり言って今の磐田はチャンスなんですよ!!

これは声を大にして言いたい。横さんの薫陶を受けながら、見いだされれば海外へ。代表へ。


強い代表を見ながら、
自分の推すチームの未来に対して夢見れるってのは実に幸せなことだと思います。




本日も、最後までお読みいただきありがとうございました!



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