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【週刊ユース分析⚽】C契約の弊害、出てきてますね・・・の話。

サムネに借用させていただいた選手をみてピンと来た人はどのくらいいるでしょうか。


僕がこの選手と共にC契約の在り方について疑問を感じ始めたのが2020年のこと。

当時、高卒ルーキーとして桐生第一高校から湘南ベルマーレに鳴り物入りで入団した若月大和選手が、Jリーグで一切プレーすることなくスイスへ期限付き移籍したニュースを見た時でした。


ここで改めてC契約についておさらいします。

年俸の上限は480万円
新卒入団後以下に示す所定の出場時間をクリアしていない者がこれに該当します。年俸の下限はありません。

J1…450分(5試合フル出場相当)
J2…900分(10試合フル出場相当)
J3・JFL…1350分(15試合フル出場相当)

Activel参照

要はルールとして、新卒選手は大卒であれ高卒であれ一様に年棒が480万以下なわけです。


また、なぜこのような制度があるかについても記しておきます。同じくActivelさんの記事より引用いたします。

この契約制度のメリットは若手有望選手の獲得合戦の結果として、まだ社会経験のない若手選手がマネーゲームに左右されずクラブを選択できる点にあります。

Jリーグ発足時はブームもあって選手の年俸が高かったため、高卒の注目選手に億単位の年俸が提示されることもあり、才能を活かしきれずに伸び悩む事例があった反省の結果としてこの制度が生まれています。

新卒の選手は、通常の会社員程度の給料から始めて一般社会に出たときに問題が起きないような生活力をつけることが将来重要となるという考え方が反映された制度です。

右も左もわからなかった新リーグならではの制度と言えますね。

プロサッカー選手のステイタスがバブル状態にあったため選手を保護する必要があったこと。
それから金持ちクラブに偏重させずまずはリーグの平均戦力を上げる施策として有効な制度であったかもしれません。

しかし・・・今となってはいくつかの弊害が目に付くようになりました。


今回はこの弊害を明らかにするとともに、廃止する際に注意するべきことを自分なりに整理してみたいと思います。

もの凄く大事なネタだと思うので、皆さんの思慮の手助けになれば幸いです。

あと、突き詰めると今話題になっているシーズン移行の話とも関連してくるのでその辺も踏まえて見ていただければ。

それでは早速行ってみましょう。



■弊害① 自己投資が出来ない新人

並々ならぬ精神力で摂生を貫いて勝ち取ったプロスポーツ選手。その年収にしては低すぎる。まずは純粋にこれです。

大卒で年収480万ならその辺の大手企業の新入社員より少ないのではないでしょうか。学生時代にコンパで「イエーイ!」とやってた輩よりも少ないなんて(泣)。
とても夢のある金額とは言えません。


そして、
プロ選手は単なる衣食住の他に、体のケアや身体能力向上のために個別にトレーナーと契約する場合もあると思います。
あるいは将来のためにメンタルトレーニングや語学のレッスンを受けたい選手もいると思います。
そんな自己投資費用を年収480万から捻出するのはまず無理

つまり、
厳しいプロの世界で勝ち抜くための自己研鑽をする余裕すらないんですよ。C契約のせいで。
選手がマネーゲームで狂わないための施策ですけど、それ以前に余裕が無さすぎる。

設定金額の低さも含めて明らかに時代錯誤かな、と。これは間違いなく弊害だと思うのです。



■弊害② 安すぎる選手たち

そして、やはり一番はこれでしょう。

冒頭の若月選手。
U-17ワールドカップで世界の目に止まり、海外クラブが争奪戦をしたわけですけど湘南とC契約したあとのレンタル移籍ということで、海外クラブからしたら「やっっっっっす!!!」と、逆の意味でびっくりしたのではないでしょうか。

湘南にとっても自チームの戦力にならないどころか、もらえる金額が少なすぎるわけで。。。はっきり言って何をしてるんですか!!状態なわけです。


逆のパターンもあります。
神村学園の福田師王選手、明治大学の佐藤恵允選手などが記憶に新しいところ。

彼らが「給料」だけのために海外を選んだとは思いませんがおそらくそれも一因であったはず。
前にも述べたように自己投資資金すら稼げない国内に収まるよりも、声がかかれば海外でより高い年俸と夢を掴みたいと思うのは当然の流れ。

そして、
国内のチームが海外のチームに対して彼らのような有望株をめぐって金銭面で交渉の余地すらないのはやはり異常かな、と。

Jリーグ発足時と違い今は東洋のノンプロ選手の映像をチェックすることなど簡単にできますから、そういう意味でも今後ますます福田佐藤パターンは増えていくのだと思われます。

言い換えればこれは国内リーグの損失でもあるわけです。



■C契約撤廃と共に絶対に守るべきこと

さて、
ここまでC契約の弊害について述べてきたわけですけども、個人的にもこの制度はそろそろ廃止されるだろうなと思っています。

しかし!!

私たちは、この制度廃止と共に絶対に忘れてはいけないことが一つあると思っています。
それは、

海外への選手移籍に対して、もっとJリーグの各チームが厳格であること。

そして、原則的にゼロ円移籍を認めない風潮を作ること。

これではないでしょうか。


多くの人が既に思っていると思います。

Jから海外へ移籍する選手の移籍金が低すぎる!!しかも移籍金ゼロで明け渡すパターンもかなりあります。

C契約を撤廃するなら、
同時にこの考え方も撤廃しなくてはいけないんです!!!


移籍金ゼロの背景には「選手の夢を尊重」ってのが大いにあると思います。ただですね、これって実際のところ獲得時に480万円の年俸で保有できているから成せる感情だと思うんですよね。

それがですよ。
C契約撤廃になればある程度高い金払って国内の争奪戦に勝つ必要が出てきます。そうして獲得して我慢して使ってきた選手がようやく名が売れてきた時に「選手の夢を尊重」でゼロ円移籍なんてされたらたまんないんですよ。経営側からすると。
一瞬にして収支が破綻してしまいます。

買う金が上がるなら、売る金も絶対に上げなきゃいけない。つまりはそういう事なんです。


チームは可能性を感じたらすぐに選手をプロテクトして、高い移籍金と共に選手を売り渡す必要があります。
結果として飼い殺しになる可能性も出てきてしまうわけですけど、これについて日本のサッカー界がどれだけ理解を示せるか。これが本当に大事です。

C契約廃止を謳うなら、
同時にここの議論も一生懸命するべきだと、個人的には強く思っています。

そしてそれこそがシーズン移行問題の一つの着眼点。

シーズン移行を議論する理由として、リーグは移籍金のしっかりとした確保を挙げていますが、それってC契約廃止の議論と結びついてるんですよね。



■伊藤洋輝の功績(磐田の場合)

移籍金少ねぇ・・・。
と言えば我らが伊藤洋輝も例外ではありません。

完全移籍で手にした金額がわずか5,000万。
そのシュツットガルトは契約解除金を47億に設定したというから舐められたもんです(泣)。


しかしですね、僕個人的には(C契約が無くなる前の)今の段階でこんな事例を作れたクラブはラッキーかなとも思っています。

磐田は言い換えれば、
将来 大化けする選手を輩出したクラブとしての実績を得たわけです。
これはデカいですよ。交渉とは原則的にイーブンであるべきで、磐田はその後ろ盾を得たと言えます。

将来身内選手を交渉の棚に上げるとき、我々の保有する選手は〇〇億円の価値があると、伊藤洋輝とシュツットガルトの例を挙げてまず語ることが出来るわけです。

ホントに伊藤洋輝同等か否かはさておき、交渉の席でこれが示せることで少なくとも5,000万円ポッキリで手を打たされることは無くなると思います。
そしてこれはC契約が無くなった後の未来において、世界と対等に応じるためにもの凄く大きな前例と言えるのです。


また、
保守的な感覚だけでなくもっともっと攻撃的なメリットもあるはずだと個人的には思っています。

優秀な選手を輩出するクラブだとの認知度が上がれば、海外のクラブが日本人選手に興味を持った時にまず磐田を閲覧リストに入るわけです。見られれば良い選手が集まる。良い選手が集まればより見られるようになる。そういった正のサイクルが生まれます。

そうして海外移籍が成立した際には、移籍金と共に連帯貢献金が期待できる。しかもユースの選手は入団時に争奪戦をする必要が無い。これは夢のある話ですよ。


これこそが「ユースの強化は、チームの光」の真骨頂。
ここで言う”光”とは、サッカーの強度だけでなく経営の強度も指すわけです。

僕が何度も何度もnoteやTwitter(X)で強調しているユースの話は、こうした大きなロマンと繋がっているからであり、かつC契約が無くなるであろう未来に向けて実に明るい期待をさせてくれるんです!!



■最後に

C契約が時代錯誤であり、いくつかの弊害を生んでいること。

そして、この制度解除と共に

海外移籍(移籍金)に対してJリーグチームはもっと毅然とした態度をとるべきであること。

というのが今回のnoteの大きなメッセージになります。


良いものにはそれ相応の金が払われるべきであるという当たり前の市場原理を尊重するべきであり、それをJリーグチームが体現するためにはいくつかの成功体験を得るべきだったりします。

日本代表も既に世界に対して対等になりつつありますからね。リーグの姿勢もまたそういった時期に来ているのかもしれません!!


いずれにせよ注目していきましょう。





本日も、最後までお読みいただきありがとうございました!

Jリーグに幸あれ!!




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