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「哲学の先生」と話す怖さ―國分功一郎『哲学の先生と人生の話をしよう』

國分功一郎さん。 教科書に載っていて、なんだかかっこいい人だなと思っていたら、同僚がファンだったので、なにやらたくさん本をおすすめされた。番組やオンライン授業なども見た。ほう。写真以外もかなりかっこいい。そして、お話の仕方がかっこいい。口から流れ出てくる文字が文章となってつるつると流れ出してくるような。とてもよいお声。先生のどアップを二時間も眺め続けていてよいのかしら…まさか質問もできたりするのでしょうか…そんな恐れ多いことをしてもよいのですか…という、どきどきのオンライン

    • 制度からの逃亡②―レティシア・コロンバニ『彼女たちの部屋』

      『三つ編み』に同じく、齋藤可津子訳、早川書房。2020年。 女性保護施設で代書屋のボランティアを始めた弁護士と、100年前にその施設を作るために奮闘した救世軍の女性の話。『三つ編み』と同じく、異なる世界を行ったり来たりして、最後にまとめ上げるパターンは、やはりすばらしかった。 この作品を読むまで、女性割礼、というものを、私は理解していなかった。 言葉は知っていた。大学の授業で聞いた。でも、聖書にも男性の割礼は出てくるし、男性も全員しているなら、女性もしても問題ないんじゃ

      • 制度からの逃亡①―レティシア・コロンバニ『三つ編み』

        レティシア・コロンバニ『三つ編み』。齋藤可津子訳。2019年、早川書房。 フランスの本。 三人の女性の物語が同時進行する。インドのカースト最下位の女性、イタリアの工房の娘、カナダのキャリアウーマン、それぞれの話。 バラバラに進んでいた話が、最後に、気持ちよいほどぱたぱたとまとまっていく。その構造の美しさ。 そのうちのひとつ、カースト最下位、スミタのお話。娘を何とかしてこの状況から逃れさせたいという話。 数年前に私は仕事でインドに行った。 そのときにびっくりしたのは

        • 司馬遼太郎作品中の女性

          司馬遼太郎は女性をアイテム的に使うなぁ、と思う。 と、友だちに言った。 司馬遼太郎の作品で、女性が単独で主人公のものは、ぱっと思いつかない。 作品の中で、都合の良いときに、何かの役割を持って登場する。 随分たくさん、司馬遼太郎を読んだ。司馬遼太郎を読まなければ、私は日本史を大学で勉強し、ライフワークにしようと思わなかったし、京都に来たいとも思わなかったし、医学史をやろうなんて思わなかった。『燃えよ剣』なんて暗記するほど読んだ。ほか、『新選組血風録』『花神』『人斬り以蔵

        「哲学の先生」と話す怖さ―國分功一郎『哲学の先生と人生の話をしよう』

        • 制度からの逃亡②―レティシア・コロンバニ『彼女たちの部屋』

        • 制度からの逃亡①―レティシア・コロンバニ『三つ編み』

        • 司馬遼太郎作品中の女性

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        記事

          村上春樹をめぐる

          私は村上春樹の小説が嫌いだ。 エッセイはわりと好きで、ananに連載されていた「村上ラヂオ」のシリーズは持っている。 私は、中学高校と女子校で過ごした。村上春樹のことが授業で語られることはなかったし、周りで読んでいる人もいなかった。大学に入って、小説が好きだという男子のほとんどが、村上春樹ファンだった。研究室の友人は、うざいほどに村上春樹が好きで、語り始めると止まらず、辟易した。どれだけ「いい」と言われても、触手が伸びなかった。むしろ、村上春樹ファンの男子たちがうるさく言

          村上春樹をめぐる

          もしもたったひとつだけ願いがかなうなら②―村上春樹「バースデイ・ガール」

          つづき。 先生なら、何を願う?と聞かれた。 36歳の私として、願うことは何だろうか。 「ひとつだけ願いを叶えてあげよう」と言われる状況にもよる。 そのとき、とっさに答えたのは、「胸が欲しい」。 俗だ。 Tシャツの季節。そこそこのボリュームの胸があれば、何でも着られるのだ。いちいち、胸のボリュームを考えて服装を考えなくてもいい。秋冬のニットだってそうだ。 そんなに胸が欲しいならば、整形すればいいじゃないかと思う。ずっと悩み続けるぐらいなら、お金を払って、解決すれば

          もしもたったひとつだけ願いがかなうなら②―村上春樹「バースデイ・ガール」

          もしもたったひとつだけ願いがかなうなら①―村上春樹「バースデイ・ガール」

          中学3年生の国語の教科書(教育出版)に、村上春樹「バースデイ・ガール」が掲載されている。授業をした。 もとは、『バースデイ・ストーリーズ』(中央公論新社、2002)。村上春樹が誕生日にまつわる短編を集めた本。そこに、村上春樹が書き下ろしたのが、この作品。 二十歳の誕生日。数日前に、高校時代から交際しているボーイフレンドとけんかをし、別れの決定的な予感がある。そして、同僚の体調不良により、アルバイトに入らなければならなくなった。その日は、土砂降りの雨。「彼女」のアルバイト先

          もしもたったひとつだけ願いがかなうなら①―村上春樹「バースデイ・ガール」

          はじめまして

          みきです。 神戸出身で京都に住んでいます。 よろしくお願いします。 たぶん、ここに何でも書いていきます。 勉強してきたことは、教育学、日本近世史、医学史、医学教育史。 国語と社会と司書教諭の教員免許取得のためのこと。 興味がある分野は、教育や日本史、医学に限らず、広く人文系一般。でも、理解できないだけで、理系分野へのあこがれは限りなく。 好きなのは、おいしいもの、歴史、伝統文化、活字、おしゃべり。京都には、おいしいものがたくさん。料理も、カフェも、パン屋さんも、

          はじめまして