【映画】ボーはおそれているを観てきた

「ボーはおそれている」 2024年2月16日公開
映画公式サイト

あらすじ ボーは些細なことでも心配になってしまう怖がりの男性だった。ある日、先ほどまで電話をしていた母の怪死の報せを受け、帰郷しようとするボーだったが、アパートの玄関を開けると、目の前に広がるのはいつもの日常ではなく、現実とも妄想ともつかぬ世界で……

映画ナタリーあらすじより


ミッドサマーが好きだったのでボーはおそれているを観てきた。
ネタバレ無しに語るのが無理な作品なので最初からネタバレ前提感想なので注意。

一応観るか検討中の人の為の微ネタバレは
・ネタバレや他の人の感想を観ないで観に行ったほうがよい
・毒親問題や試し行為問題に関心がある
・(強迫性)神経症の傾向のある人、すぐ自分が悪いのではと思いこむ系の人は多少の共感が得られるかも
・他の映画のオマージュがたくさんらしい(難解な映画なので公式HPに映画評論家によるネタバレ考察がすでに用意されていて考察苦手派の人への対応がされてます)

※とっても大事な観るか悩んでる人向けネタバレ↓
・バットエンドである。娯楽として爽快な気分を味わうつもりだとちょっと辛いかも。バットエンドレベルはミスト観た後くらいだと思う。鬱映画好きなら平気だと思うが苦手な人は本当に苦手らしいので一応書いておく。




以下は完全にネタバレになります。視聴体験が良い映画だと思うので鬱映画平気な人は観てから読んでね。



一番大事なネタバレを最初に書いてしまいますが、この映画は資産家のボーの母が息子(ボー)の愛を試すために作った劇中劇で、唯一それを知らないボーが訳のわからず混乱しつつも母の元に行き、この異変が母の作り出した茶番だと知る物語です。また、家から実家に帰るまでだけではなく、産まれた瞬間から今の今まで全てがずっと監視されつづけていた事も知り、自身の人生そのものが母の手の上で管理されてた茶番であり、それを最後理不尽に評価され罰せられる話です。

いじめられプロフェッショナルな人なら母親からの最初の電話で行けないとと伝えた時の、不機嫌でコントロールしてくる圧で震えて泣いたと思います。なので問題の軸は親子関係なんだろうなというのはすぐにわかるのですがそれ以上の想像の斜め上を行くトラブルの数々、何が現実で何が非現実か必死に悩み考えながら魅入ったかと思います。じわじわ解決するというより本当に最後に一気に落とす感じでオチが提示されるので視聴体験が大事で、視聴後のネタバレ考察検索が楽しい映画だと思います。

一応私は他者の考察を見るのが好きだけどnoteに書く映画はネタバレ考察を読む前に書く(やはり良い考察には感想がひっぱられてしまうので)をマイルールにしてるので私の感想は素人のチラシの裏なのをご理解した上で読んでくれると嬉しいです。ミッドサマーが考察好きな人の間で流行ってた事もあり、ボーのネタバレ考察が公開日翌日なのに溢れててこういう時はいんたーねっつは良きと思います。

映画の主軸は親子関係だと思うのですが、一応先に個人的な事を先に書いておきます。
映画自体母親VS息子の支配コントロールの話であり、作中では母親や女性のヒステリー的な部分を細かく描いていると思います。ただこれを毒親問題とした場合、この作品のモナは父と母の両方のダメな所を持っている特殊なチートキャラです。家庭のカルト化は家庭内が何かしらのルールによって支配構造がうまれ、家庭内という比較や脱走が難し場所で異常が常習化し疑う事が困難になる事が問題だと思います。よく毒親問題を語る時母親だけが叩かれる事がありますが、何がその人を悪いことをさせているのかまで見ることが大事だと思います。誰が悪いではなく、何が歪んでいるのかです。なので感想で母親が母性がと属性で語る事もあるかもしれませんが、その場合作中のモナの場合と思って読んでくれたらうれしいです。

物語の最後は盛大にバットエンドで終わります。他者の試し行為で常に神経質になり常に人の顔色を窺い失敗に凄く臆病になり正しくあらねばと脅迫概念を感じるボーみたいな人達が映画館で膝から崩れ落ちて絶望してむせび泣いた事でしょう(ならない)
ボーみたいなタイプは一定数居て、私もどちらかと言うとボーです。試し行為してくる人怖い。作中のアニメーションシーンでまるでこの作品は自分の物語のようだとボーがなるように似たタイプの人には重ねる事で気づきにくくても救いのヒントはどこかに転がっているかもしれないという話になる部分もあるかもとは思う。こっそりチャンネル78を教えてくれるグレース、父の世話をしていたおじさんは実は内心心配してくれていて事実を教えようとしてくれる事、これらは人が人を救える範疇は限られている中で味方でもないが敵ではない人がいるという事を忘れてはいけないという事だと思う。アニメーションパートのように時に現実ではなくフィクションが心に寄り添うことがあるというシーンも大事なのだと思う。
ボーの敵は母なのだけど、この作品では母はお金によって世界(ボーから見える情報の全て)を動かす、つまり敵は世界であってそんなものと戦ってる人を救える人はそうそう居ない。そこまでの世界設定かつ、ボー(40代だけど子供としての設定しか表にでない役)だからブラックユーモアが成立するのだと思う。
これが毒親問題がテーマとしてあった時、実際の子供にとって家庭とは世界そのものだという事、それをふまえてこの作品ほど親が最悪な世界の支配者である確率はほぼないと思うのだけど、もし貴方が大人になった時忘れちゃいけないよという部分も描かれてるのだと思う。まぁそれでもわかったところで理不尽に立ち向かうには歪んだ弱い心だと装備がおぼつかないまであるのでやはり理不尽は理不尽なのだけど。

作中女性の辛い所怖い所が書かれています。トニの性別により子供であっても扱いを差別される所。幼少エレインの性で戦う(生き抜く)事しかできない母(女性)への嫌悪、それに反抗するように性的な事は打算ではないと反抗的な行動を幼少ボー相手にするのだけど、大人になり性的な事は武器にもなりうる事だとわかってしまっているから大人になった時母と同じようにそれを利用する弱さ。船上での会話でモナ自身もそういう女の部分を理解して嫌悪しているはずなのにうまくやろうとしてできない部分をなまじ権力があるせいで問題と向かい合うのではなく他者に責任を押し付ける心の弱さ。弱さとは書いたけど、目の前に力があってそれをどう使うかという話なので弱さという言葉は的確ではないのかもしれないけれど、その力のトリガーをどう使うか迷い続けなくてはいけないことは辛さであり考えるのをやめる事を弱さだと私は思う。

最後の裁判で、ボー自身町の困窮者を助ける事ができたのに貴方は教養がある分助けるべき事をわかっていたのに助けませんでしたね、それは罪です、的な流れになる。それはボーを見て途中助けてあげたいと思っても助けれあげれなかった人達も責める事ができるかという問いでもあり、またそれは人間であれば誰でも遭遇する問題で罪を問う問われる事の怖さを見せるシーンでもあると思う。でもボーの立場ならそれは全てが許せないのではないかとも思う。まぁ上にも書いたが極端な設定の物語の世界での話だからブラックユーモアですますしかないのだけど。何が人を傷つけるかを知ることは誰かから何かを奪い不幸にする事への小さな抵抗だと私は思う。映画は娯楽なのでそんな事考えて観るものじゃないよと言われればそうなのだけど、ついつい私はそういう事ばかり考えてしまう。映画の感想十人十色。

映像についてや、誰がこの茶番劇の事情を全て知ってるキャラで、全ての事情を知ってるわけではないボーみたいな登場人物も居たのではないかとかまだ考えて書けることはある気もするのだけど今回は体調がすぐれないのでふわふわ感想のまま終了で。
オススメかと言えばとにかく救いのない鬱展開ばかりなので人を選ぶと思う。しっかりとオチはあるけどスッキリする系でもないし。それでも日本のいんたーねっつは毒親とかコミュニケーションの問題とかが好きだからそういう事に興味のある人ならおすすめなのかな(TLの錬成を間違っている人の感想です)

とにかく親子でも、そうじゃなくても試し行為ダメ絶対!

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