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地政学リスク増大下での海運スタートアップ動向

COVID-19が収まったと思ったらイランのフーシ派によるテロでの紅海封鎖など海運を取り巻く環境が厳しさを増しています。
大規模輸送を可能とする海運はサプライチェーン確保において非常に重要なファクターであるところ、最近は再び船舶/港湾/陸運の情報連携を通じた効率化を目指す動きが出始めています。MAERSKとIBMが組んだプロジェクトがとん挫したドメインですが、今回はスタートアップ2社を紹介します。

1;地政学リスク高まりによる海運事業への影響

 複合的な要因により海運業界は柔軟な対応/アップデートを迫られており、そこに着目したスタートアップが徐々に強靭さを増している
 (サプライチェーンの破壊)COVID-19/イランのフーシ派によるテロ攻撃
 (環境対応)CO2排出量削減への圧力…
 IMO(国際海事機関)は船舶が国家管理海域に入る場合には[単一窓口]を設ける必要があると主張していることも情報共有化の後押しに。海運事業者/港湾施設の両方を支援すべくの技術開発/採用のニーズは高まっており、[単一の窓口]は全てのサービスをリンクさせることが前提となる

2;PortChain(瑞);海運業界の管制官

(概要)
 貨物船舶と港湾の中間地点/情報交換所を標榜、航空交通管制のような役割を果たす。主体(貨物船/港湾施設)間の継続通信を促進して船舶の停泊時間の適正化を実現、港外待機/燃料消費/大気汚染/無駄な経費を防ぐ
 具体的には入港/接岸計画の立案支援をするシステムで、運航船の最新情報をリアルタイムで取り込み、適時最新の入港計画を立案して効率的なターミナル運営を実現
 -港湾;最適計画で入港船を処理して、港湾の対応力/効率性を向上させる
 -荷主;リアルタイムで最新の入港船接岸情報を共有でき、効率的な貨物のピックアップにも寄与
 -その他;多くの関係主体で最新情報を共有することで港湾施設の生産性/利便性向上を図る
(最近の調達等)
 [Seed+]ラウンドでAngular Ventures/MK Venturesなどから500万ドルを調達。現在、世界で90のコンテナターミナル(20%シェア)と契約し、Hapag-Lloyd(海運5位)と5年間の契約を結んだとのこと
(CEOコメント)
 PortChainを使うことで船舶/システム改造の必要なく、[CO2排出量;14%減]を達成できるとし、更に下記のように有用性をコメント
-[今のシステムは端末/通信が別個で事業者間での情報連携ができておらず、現場ではメール/電話/SNSで情報共有して計画立案をすることがまかり通っており、メチャクチャだ]
-[PortChainを使うことで船舶は目的地に到着する前に位置情報/荷役情報を共有し、船長は適切なタイミングでの着岸できるよう速度を調整できる]
-[これまで速度計算にExcel/メール/PDFを使っていたが不要になるし、後進の手間も省ける]
(その他)
 もっとも重要な優位性は[中立性]であり、スタートアップ故に色がついていない点が事業促進のカギに。
 MAERSK(海運首位)はIBMと組んで2018年に物流情報PF[Tradelens]を立上げたが、強豪との情報共有への懸念対応が十分にできず、2023年にクローズしている

3;Awake.ai(芬);港湾向けAmazon?

(概要)
 海運/港湾関係者向けの[マーケットプレイス事業][SmartPort事業]をメインに事業運営を行うSW企業で、[持続可能で自律的な海上物流の実現]をミッションとしており、物流網/自律航行/海事ビジネスの連携を企図する
 海運/港湾/荷揚げ/陸上の各パートナーが、最適化/自律的にコスト削減を行う情報共有PFを通じてデジタルな実務システム導入を支援
 スマートポートは政府主導で進められることが多く、2020年にはロッテルダム港で採用され、既存システムの体制をAwake.aiはアップデートに成功
 -港湾の貯蔵施設;ビッグデータ解析/スマートメーター
 -工業処理施設;スマートエネルギー管理/予知保全/スマートグリッド技術
(最近の調達等)
 2018年の設立以降、総額1200万ドルを調達。政府資金/補助金の獲得に特徴。フィンランド政府/EUからのGrant及び資金提供を受けている
 CEO/創業者のKarno Tenovuo氏は、ロールスロイスで[SmartShipping]を検討するチームのリードを務めた。同氏は、良好なUI/機械学習/PFへの接続性を重視しないと、物流効率化を実現できないとする。加えて、海上物流における環境対応コストの増大にも課題感を持ち、海事デジタル化の先駆者となることを目指している
(CEOコメント)
-[2022年に港湾向けAmazonといってもいいマーケットプレイス機能をたちあげ、港湾サービスの売買/報告/請求を自動化することに成功した]
-[買い手と売り手の自動マッチングを通じ、製品/サービスの需要を自動予測。最適な到着/出発時間を推奨し、燃料費の排出量予測を伝えることができる]
(その他)
 アプリも展開しており、港湾での船舶交通の状況を共有し、AIを活用したETA/寄港タイムライン/詳細な船情報が対象
 -独自にAIによる高い精度のETA算定が可能に
 -停泊/寄港予定等の情報共有で全ての船舶の状況がリアルタイムに把握可能に

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