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フィリピン史上最大の教育改革”K-12”って何?

今滞在するフィリピンは現在教育改革の真っ只中にあります。

今回は、その教育改革(通称"K-12")についてシェアしていきたいと思います。

【目次】

1. 教育改革"K-12"その中身とは?

2. なぜフィリピンは今、教育改革なのか?

3. まとめ

1.教育改革"K-12"その中身とは?

"K-12"この教育改革を一言で言うなら、

「K (幼稚園)+12(小6-中4-高2)の13年間を基礎教育期間として、無償で学校教育を提供すること。」(参照 http://www.gov.ph/k-12/ )

である。

まずそもそもフィリピンは、今まで学校教育というと幼稚園を別としても、6-4制(初等教育6年+中等教育4年)を採用していたため、日本でいうところの"高校"というものが存在しなかった。(因みにこの基礎教育10年制を行っていたのは2015年当時で、アジアでは唯一フィリピンだけ。)

そんなフィリピンで今年度より始まった"K-12"。これは元々アメリカやカナダをはじめとする英語圏で導入されているものである。その教育システムを導入したフィリピンの教育における具体的な変更点として、以下のようなものが挙げられる。

・Senior high school(フィリピン版の高校)の新設。

・2年間の就学年数の増加。

・学校における基礎教育の充実。ex)プログラミング教育の本格的導入、コース(Track)別教育カリキュラムの選択

・1年間(年長時5歳児における)幼稚園の義務化。

もちろん細かい点で見ていけば他にも変更点はあると思われるが、あげた変更点だけでも、特に教育現場において大きな変化をもたらすと容易に想像することができる。

※興味のある方は是非以下の動画が短くわかりやすく紹介されているので視聴してみて下さい。使用言語は英語です。

2.なぜフィリピンは今、教育改革なのか?

ではなぜこの改革が今行われたのか、その理由を近年のフィリピンの学校教育を取り巻く社会的な課題である主な二つに触れながら紹介していきたいと思う。

1)近年の子どもの基礎学力の低下

フィリピンの子どもの学力について、国際教育到達度評価学会(IEA)の2003年度の調査によると、参加国46カ国中、数学42位理科43位と理系科目を中心に下位へと沈んでいる。もちろん他国比較だけではなく、近年の各種国家試験の合格率の低下が問題視されていることからも学力低下の事実が見てとれる。(参照 http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Download/Overseas_report/1106_suzuki.html )

自身の経験則でいうと、算数・数学においては、学校でのインターン中で何度か授業をさせてもらったが、基礎的な公式や法則についての理解が追いついていない生徒が多い印象を受けた。また、フィリピンでは多くの場合(言い方は悪いが)できる一部の子をはやし立てて授業が進んでいくため、できる子とできない子の学力差には正直驚かされたと同時に深刻であると感じた。

この学力低下の原因として一番にあげられるのが、基礎教育10年という短期的授業カリキュラム、言うところの「詰め込み教育」である。

上記でも話したが、フィリピンの学校教育は小学校6年・中学校4年の10年間である。そのため世界基準で必要とされている教育内容を他国(12年以上の基礎教育制度をもつ国)と比べて、2年以上も少ない教育期間の中で完了させなければいけないわけである。当たり前だが、「詰め込み教育」にならざるおえない。

そんなフィリピンの学校教育は、子どもの学力低下と同時にこの「詰め込み教育」についていけなくなった子どもがドロップアウトしてしまうこと少なくないようだ。

2)若年層の就業問題

また基礎教育6-4年制が生み出す大きな弊害が存在する、それが若年層の就業問題である。

10年間の学校教育において、就学終了年齢は基本16歳となる。しかし、フィリピンでは成人年齢・就学年齢ともに18歳と定められている。そのため、大学等の高等教育機関へ進学をしない子どもの多くが、卒業後に"空白の2年間"を過ごす。もちろんこれはすべての若者に当てることではないが、多くの(特に貧しい家庭、雇用の少ない田舎の)若者が実質の無職・失業状態にあることを指す。(一方で、大学に進学する学生については、国内の大学であれば卒業後すぐに大学に通い始めるが、海外大学進学の際には年齢により直接進学することができない。)

労働環境において、現在とてつもないスピードで出生率が高まり、若年世代が急速に増加する一方で、雇用機会の不足とともに、職業間での給与格差も大きなものとなっている。

一つの比較例を示すと、資格を有する学校教師がおよそ月収4万5000P(約9万円)である一方で、フィリピンでよく見かけるトライシクル(ローカルタクシー)の運転手がおよそ月収7000P(約1万4000円)といったところである。(これらは私の現地でのインタビュー調査に基づいた事例です。)もちろん給与の高い職業に就くには、専門的スキルや各種資格、学歴といったものが必要条件となってくる。

現在フィリピン人の大学進学率が10%程度と言われる中で、10年間の学校教育を終えて就業に就く子どもにとって、これまで多くの場合就業することが容易でなかったことがうかがえる。

3.まとめ

今まさに、フィリピンの学校教育は過渡期にあることは少しは伝わったかなと思います。

このような基礎教育の弊害により様々な影響を受けてきたフィリピンの若者世代が、大きく言えばフィリピン社会が、この改革によりどのように変化していくのか、個人的には今後フィリピンの教育社会から目が離せないなと思っています。

そんなフィリピンに滞在する私は、現地の教育現場でインターン・視察をさせていただく中で、学校現場でその改革について実際に直に感じることがありました。

そんな自身の経験・学びも踏まえて、リアルに感じたフィリピンの教育についても、今後のnoteでシェアしていきます。


◎長文最後まで読んでいただきありがとうございます。


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