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【インタビュー】ゲームライター林與五右衛門氏に10の質問!!


前回の記事【インタビュー】ゲームライターSIGH氏に10の質問!!|鈴木 (note.com)が大変ご好評いただいたので、第2弾をお届けいたします!

今回インタビューにお答えいただいたのはゲームメディアGame*Sparkでゲームライターとしてご活躍されていらっしゃる林與五右衛門さんです。
インタビューはメールで行いましたので、林さんの回答については原文そのままを載せています。

わたしが林さんの存在を知ったのはライターとしてデビューされるよりも前で、個人noteのとあるコンテンツの感想記事を拝読したことがきっかけでした。
わたしも同じコンテンツを観ていてブログに感想を書いていたのですが、林さんの記事はより細やかで分かりやすく、しかも相当熱を込めて執筆されているのが伝わってくる文章でした。
それからずっと林さんのnoteの更新を楽しみにしていたので、ゲームライターになられたということが分かった時には驚きましたが同時にとても納得できました。
今振り返るとただの一読者だったわたしがこうしてインタビューをさせてもらうような縁ができたことがなんだか不思議ですが、とても光栄に思います。

では前置きはこのくらいにして、林さんの読み応えたっぷりのインタビューをぜひお読みください!


 

質問1:ゲームメディアGame*Sparkでゲームライターデビューをされて約1年が経ちますが、ここまでを振り返っていかがですか?

回答1:当初自分で想定していた以上に記事執筆ができたのではないかなと思っています。兼業でライティングを行っていることもあって、初めは取材や執筆をどこまでできるか手探りの状態でした。しかし、ありがたいことに編集の方から執筆依頼をいただけたり、こちらから提案したものを通してもらったりして、これまでに計16本の記事を執筆できました。記事を楽しんでもらえたのかはSNSなどで読者の方々の反応を見るほかないのですが、やはりゲーム自体が広まっているのをみるとうれしいですね。

その一方で、以前から行っているnoteの更新や、所属している集団で新たに始めたブログなど、個人活動を継続することができたのはよかったと思っています。
あと、腰が痛いです。デスクワーカーの方がエアロバイクを導入している理由が痛切にわかりました。
 

質問2:林さんはゲームメディアのライター募集を見て応募されたとのことですが、ゲームライターになろうと思ったきっかけはありますか?

回答2:直接的には数年前、Twitterのハンドルネームを本名に変えたことがきっかけです。当時私は自分の出演する演劇の公演に伴い、本名を使ってアカウントを運用することにしたのですが、ちょうどそのタイミングであるWebメディアでライター募集をしていました。結局その時はご縁がなかったのですが、そこで「せっかく本名を出してなにかやるのなら自分が好きなゲームについて何か書きたい」と思い、仕事としてのゲームライターを意識するようになり、noteで活動しはじめました。

とはいえ、もともと書籍やインターネットでゲームについての文章を読むことを、ともすればゲーム以上に好んでいたので、それがいちばん大きい要因でしょうね。ゲーム誌で言えば「ユーゲー」からは強く影響を受けて、ゲームについて書かれたもののおもしろさに気づきました。また、この場でお名前を列挙することはしませんが、ネット上でゲームについてのテキストをしたためたサイトやブログ、それを発信する人々の存在を認識したことも、自分がゲームライターを意識した遠因にあります。
 

質問3:2023年に書かれた記事で思い入れの深いものは個人的に書かれた『ダークセイバー』についての記事(クォータビュー高難易度アクションRPG『ダークセイバー』––90年代日本産RPGのありえたかもしれない姿|林與五右衛門(よごえむ)/Hayashi Junpei (note.com))とゲームメディアGame*Sparkで執筆されたレースゲーム『PGR3』についての記事(noteリンク参照林與五右衛門(よごえむ)が2023年に執筆した記事ふりかえり|林與五右衛門(よごえむ)/Hayashi Junpei (note.com))ということですが、それぞれ書かれた際の思い出などお聞かせください。

回答3:『ダークセイバー』についてはnoteに投稿したものですね。
本作はだいぶ前からプレイしていたのですが、2023年になってようやく全シナリオをクリアすることができました。これは年の初め、本作について書くと前もって決めたからこそ達成できたことです。ゲームについて総合的に書くのであれば、それなりにプレイ時間を費やすかクリアする必要があると思います。しかし本作は難易度の高さもあってなかなかクリアできずにいました。それがずっと喉に引っかかった小骨のように気がかりだったのですが、そんな本作をクリアできた、その達成感じたいが思い出のひとつです。
また本作は、独特なカメラ操作をするシステム面と周回によって様相を変えるシナリオ面、その両者が互いに「異なる視点から物事をみる」という点で連関しています。そのおもしろみについて一定程度書けたのではないか、という自負もあり、思い入れがあります。

次に『PGR3』ですが、こちらはGame*Sparkに寄稿させてもらったものですね。この企画は本作のコースとして登場するリリース時(2005年)の新宿と現代の新宿を比較するというものです。以前から構想していたのですが、これは絶対におもしろくなるという確信を持っていました。そんなときにXbox360のストア・マーケットプレイス終了の報せがあり、SNS上で人々がXbox360の思い出を語っているのを目の当たりにしました。このタイミングならきっと多くの人の目に触れ、楽しんでもらえるだろうと思い、記事化の提案をさせてもらいました。

『PGR3』ロケ地マップ


取材の順番としては、ゲーム内で周遊するコースを先に決め、ランドマークにあたりをつけてスクリーンショットを撮影。その後Googleマップで現実の地図にルートを重ね合わせて、現地で徒歩による取材を行いました。現地ではランドマークの写真を撮り忘れて来た道を引き返す、といったこともしばしばあり、「ゲームなら車ですぐなのになぁ」と思ったりしましたね。おおよその風景が変わらない場所でも、看板や建物の細部、雰囲気は現代とは明らかに異なっていました。現地取材を終えて2005年の新宿と見比べてみると、当時の新宿がまるで異世界のように感じられたのがおもしろかったです。ちょうどこのインタビューを頂いた時に新宿アルタの営業終了が発表されましたが、移り変わっていく街や営みが多少なりともこの記事に反映されていたならよかったです。

ゲーム内の新宿アルタ前


 

質問4:ゲームメディアの記事を書く際には編集から依頼されて執筆するものと自分で提案するものがあるという話ですが、記事提案は企画書のようなものを作るのでしょうか?
また、どういう時に記事のアイデアを思いつきますか?

回答4:依頼をいただいて執筆するものについては、企画書というほどのものを作ることはありません。ただ、自分であれば何ができて、記事になにが求められているのかは掴んでおきたいので、数回やりとりをして記事の大枠を提案させてもらっています。またプレイレポートの場合はゲームプレイ前に依頼をいただくことになるので、実際にプレイしてみて当初提案していた感じと異なるのであれば別のプランに切り替えて提案しています。
自分から提案する時には「なぜこの記事がいま必要なのか」というプレゼンを含めて、記事内容のあらましを編集の方へ伝えています。先ほどの『PGR3』がそうですね。ある程度自由に執筆していますが、そのゲームが人目に触れやすい、いちばん効果的なタイミング(リリース直後・シリーズものの続編発表時・セール・イベント会期・SNSの話題性など)に提案させてもらっています。
記事のアイデアですが、ゲームをプレイ中にゲーム以外のことを連想して思いついていることが多いかもしれません。たとえばゲームのなかに「床屋」が出てきたら「そういえば髪型ってどんなのがあるんだっけ、そもそもなぜ人間は髪型に注意するのか」みたいな連想が自分のなかに浮かんできます。そうした「そういえば」の連想がアイデアになるのかもしれません。また本来記事化する予定になかったものでも、ひとまず先に編集部に提案だけする、あるいはいつでも記事にできるようにゲームプレイ画像や写真をストックしておくことはありますね。
 

質問5:林さんは演劇集団ゲッコーパレードの一員でもいらっしゃるゲッコーパレード公式サイト (geckoparade.com)ので、やはりゲーム内の演技も気になったりするのではないかと思います。
このゲームのこのキャラクターの演技がすごい、あるいはこのシーンがすごかったというようなものがあれば教えてください。

回答5:すぐ思いつくのは『Horizon Zero Dawn』のオープニングからチュートリアルの流れですね。このチュートリアルでは幼少期の主人公・アーロイを操作して、彼女の親代わりとなった男・ロストを手本にこの世界で生きる術を習得していくのですが、アーロイが生来どんな性格で、ロストとどんな関係を結んでいったのかが動作や声音で伝わってきました。カットシーンもさることながら、プレイヤー自身が体験しながらふたりの関係性を推して知ることができる素晴らしい導入だと思います。日本語版では幼少期アーロイのボイスアクトは久野美咲さんが担当されているのですが、とても上手な方だなぁと当時強く印象に残りましたね。

そのほかにも、ワンルームを舞台に人物の姿をプレイヤーが覗き見る『ルーマニア#203』と続編『ニュールーマニア ポロリ青春』はゲームの大半を占める日常の生っぽさと劇的なシーンのギャップが非常におもしろかったです。特に主人公が辛い境遇に陥るシナリオでは「まずいものを垣間見てしまった」という気まずさ、プレイヤーが手を出せない歯がゆさが重なって、いまもよく思い出します。
 

質問6:プロフィールに『Fable』や『シェンムー』などから影響を受けてゲームのNPCに注目するようになったとありますが、特にどのような点に注目をされていますか?また、このゲームのNPCが良かったというものがあればお聞かせください。

 回答6:関わったプレイヤーになにかひとりごとでも言わせられたなら、それは良いNPCだと思います。私はどちらかというと無名のように扱われるNPC自身、そしてその動きや台詞に注目するきらいがあります。それは彼らの発する記号的なメッセージやモーションを通して、人々の営みや人柄が浮き立ってくるからです。そして彼らの台詞や動きを見るとつい真似したくなります。その際に私はゲーム外にある人々の姿を重ねています。平たく言えばあるあるネタみたいなものかもしれませんね。

良かったNPCは色々思い浮かびますが、『Fable』に登場する商人のNPCはお気に入りです。彼は主人公に対して果樹園までの護衛を頼んできます。そしてうまくいけば目的地に到達します。しかし道中で盗賊に襲われて死んでしまうこともあれば、もっとひどいと主人公に身ぐるみ剥がれてしまうこともあります。結果がどうであれ、また同じ地点に同じような商人が登場し、同じように依頼を繰り返してきます。うまく言えませんが、この抜け出せないどうしようもなさが彼らの個性であり、かなしさであり、おもしろさです。

『Fable』のNPC


先述した「ルーマニア」シリーズは、プレイヤーが直接操作できない、NPC的なものとして主人公が位置するゲームです。本作をプレイしていて衝撃を受けた瞬間があります。主人公がソファでタバコを吸いながらくつろいでいると、テレビから「おにぎりが変わった!」とコンビニのCMが流れてくる。それに対して主人公が「変わってないんだよなぁ」と無対象につぶやく、というシークエンスです。うまく言えないのですが、これをはじめて見た時はドキッとしましたし、笑うやら涙が出るやら妙な感情になりました。

『ルーマニア』シリーズ


質問7:林さんは最新ゲームだけでなくクラシックゲームもよくプレイしていらっしゃいますが、ずばり、クラシックゲームの魅力とは何ですか?

回答7:古いこと自体が私にとっては魅力です。それらの体系や文脈が自分のなかでかたちづくられていくのは楽しいことですし、価値です。古いものというか知らないものがそこにあったということですね。元来私はそういうものが好きなのでしょう。これは理屈では説明しがたいです。
 

質問8:お勤めをされながらゲームライターのお仕事をして、また役者としての活動もされていらっしゃるので、いったいどうやってゲームをプレイする時間を確保しているのか気になります。
なにか秘訣などあればぜひ教えていただきたいです。

回答8:むしろ私が訊きたいくらいです(笑)。私はあまり時間の使い方がうまいほうではないので、周囲のライターやゲーマーの方々を見ているとみなさん本当にたくさんゲームをプレイしてらっしゃるなぁと思います。そういう風に誰かがプレイしている姿を見ると「自分もプレイしよう」という意欲が湧くのは確かです。しかし、これはどちらかと言えばこれはモチベーションの話ですね。私はシングルタスク人間かつ注意散漫なので、「とりあえず30分だけ集中してプレイしよう」とか「一定の期間ゲーム配信をして習慣づける」とか、そういう泥臭いやり方しか思いつきませんね。
 

質問9:これからどんなゲームライターになりたいか、なにか目標があればぜひお聞かせください。

回答9:ゲームライターに限った話ではないのですが、「良さ」がわかる人になりたいです。7つ目の質問にもあるように、私は以前からクラシックゲームや気に入ったゲームを長期的に遊ぶことが多く、新作や流行りものをプレイすることは多くありませんでした。
ライターとして活動するようになってからは、勉強のために数年前に流行ったゲームをプレイしはじめることも増えて、自分の知らなかった裾野があること、それが限りなく広いことに気が付きました。
いまも目下勉強中ですが、新作もきちんと遊んで、ある程度わかっている状態になることが当面の目標です。そして、そうやって「人が良いと言っているもの」と「自分が良いと思っているもの」の振れ幅を増やしていけば、やがて「良さ」が見えててくるのではないかと考えています。
とはいえ、クラシックゲームをプレイした時間が仕事に繋がったこともあります。それはそれで強みですし、何かを失った時間ではなくて、得た時間になっていると思っています。
 

質問10:ゲームライターを志望する方になにかアドバイスがあればぜひ教えてください。

回答10:具体的にはセルフプロモーションとしてポートフォリオを作っておくことは有効だと思います。ブログ、note、動画など、活動の詳細が誰にでも見ることができる形で残っていると、自分の強みや特徴をアピールしやすいです。

その前段階としてなにか書きたいと思ったら、ひとまず書籍やメディアの文章がどうなっているのか、構造や細かい表現を分析したり、お手本にしたりしながら、自分が書くと決めたテーマに取り組んでみるといいのではないでしょうか。あとは、もし悩んだり迷ったりした時に編集の方に相談できるくらいのコミュニケーションが取れれば、大丈夫だと思います。そのほうがお互いのためにも、記事のためにもなります。

抽象的な話をすると、先んじてゲーム以外のことにも取り組んでおくと身の助けになるかもしれません。ゲームライターは必ずしもゲーム製作の専門家ではありませんし、出来上がったゲームの内部にある情報では製作者に及びません。ただ、受け手としてそのゲームをどう感じたかや、他方の文脈から解釈することはできますし、そこで生まれた疑問点をフックにして取材を行うこともできると思います。ゲーム以外の経験や知識があることで、書ける内容や質問は自ずと決まり、迷うこともなくなるでしょうし、結果として自由に活動していけるのではないかと思います。これはアドバイスというよりは、私自身がそうなることを目指しているという感じですが。
あとは記事を自分で読んでみておもしろくて、読んだ人もおもしろいと思えれば問題ありません!
 

林さんのTwitter:
https://x.com/foppaJ?t=tJB9E8y0PTvddlUWecF7PQ&s=09

note:林與五右衛門(よごえむ)/Hayashi Junpei | https://note.com/reddot

林純平プロフィール(ゲッコーパレード公式サイト):https://geckoparade.com/member/hayashi_junpei/


最後に

林さんのとても興味深いインタビュー、楽しんでいただけたかと思います!
大変丁寧に回答いただいたこと、この場を借りて改めて林さんに感謝いたします。


ゲームライターインタビューシリーズ、実は質問する方はとても楽しいので(笑)、できれば今後も続けたいと思っています!
ゲームライターの方々はみなさんとてもお忙しいと思いますので、お声がけさせていただいた時には無理のない範囲でご協力いただければ幸いです!


ここまで読んでいただいてありがとうございました!


ゲーム コンテンツ利用規約 | Xbox
PGR3 © Microsoft Corporation.ゲーム内の新宿アルタ前およびFable © Microsoft Corporation.『Fable』のNPCは、Microsoft の「ゲーム コンテンツ利用規約」 に基づき、PGR3およびFableのアセットを使用して作成されたものであり、Microsoft との提携または Microsoft による承認を意味するものではありません。