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CSISレポート 2020年7月「日本における中国の影響~どこにでも存在し、どこにも存在し無い~」|Devin Stewart

戦略国際問題研究所(CSIS)は、米国ワシントンDCに位置する超党派の非営利政策研究組織である。2018年、2019年の2年間調査され、2020年7月に発表されたCSISレポートでは、日本における中国共産党の影響力が少ないと示した。

中国のコロナ対応が不十分であることによって、世界中で中国共産党への反発心を目の当たりにしている中、外国の影響力に対する日本の抵抗は先進的なものである。 「世界は常に日本から20年遅れている」と慶應義塾大学細谷教授は私に語った。日本は隣国との2000年の困難な歴史を鑑みても、中国の力に対処している日本の例は進歩的である。

この報告書が詳述するように、中国は日本で、文化外交、二国間交流、国家メディアの偏向報道などの緩やかな影響活動と、抑圧、情報キャンペーン、汚職、買収、内密な戦略などのより鋭くより悪質な活動の両方を展開したが、この努力に反し、中国はその影響力をほとんど示すことができていない。日本での政策目標は達成されていない証拠として、①日本は一帯一路に参加していない②沖縄は日本からの独立を宣言していない③日本政府内での共産党議員が少数である④日本は米国との同盟関係を弱めていない⑤日本国民にとって中国という国が人気がないということから伺える。

確かに、日本はコロナ危機の中で中国に対して穏やかな初動を取ったが、中国から企業が出国する為の補助金も割り当てた。両国間の戦略的デタント(緊張緩和)は脆弱であり、中国の圧力から日本が分離する可能性もある。中国共産党は、パンデミック危機以来、米国に対してより積極的な(ロシアの戦術にも似た)偽情報戦術を採用しているが、同様に日本にも行っているという証拠はない。さらに、中国共産党は、日本にて先鋭的な戦術を用いても、努力、リスク、または投資の価値に結果が見合わないと推測した可能性がある。

この報告書は、中国が日本に影響を与え切れない原因となった日本固有の性質や政策の解説を、他の民主主義国とも共有することを目的としている。日本特有の特徴の中には、日本が比較的閉じた民主主義国家であることも起因し、これらの要因は中国共産主義の影響力の余地を狭めている。

外国の影響、特に中国共産党の影響に抵抗するのに役立っている日本特有の特徴とは、
・日中間の長期的な武力紛争の歴史による隣国への根深い疑心
・経済および文化的に世界から比較的孤立した歴史(ガラパゴス)
・政治的無関心層、一党独裁
・クロスオーナーシップ等により厳重に管理されたメディア、情報の制限、メディアによる忠誠心を政府が支持

また、他の民主主義国家が採用できる可能性のある日本の取り組みとして、

・政府の行政機関における権力の統合(日本において外国による影響に対し政府の警戒心が強い)
・外務省や経済省を含む政府全体に展開された、国独自のグローバル広報キャンペーン
・不動産や繊細な産業の外国人所有の最小化(現在検討中)、選挙資金法および外国からの寄付を厳粛に規制する政治や選挙関連法案等

近年、日本は中国とより経済的に関わっているにも関わらず、この報告書が示すのは、日本が中国共産党への抵抗を維持し、さらには強化している可能性を示唆している。その方向性は、2020年4月に日本企業が中国国外に事業を移転することを積極的に支援するという日本政府の決定にも示されており、両国間の分断も予感させている。また、コロナパンデミックにより、東京オリンピックと、2020年4月に予定されていた習近平氏の公式訪問を延期せざるを得なかった。さらに、コロナでの供給連鎖(サプライチェーン)の脆弱性に対する懸念によって、中国は、日本に最も近い同盟国アメリカとの新たな冷戦に一歩近づいているのだ。両超大国との建設的な関係を維持するために、日本は絶妙な線を歩かなければならない。

(参照:https://csis-website-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/publication/200722_Stewart_GEC_FINAL_v2%20UPDATED.pdf


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