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#174 読書日記34 宮部作品は事実よりも奇なり

過去の読書を掘り起こしてみた。

第120回直木賞を受賞した作品だからもうかなり前だ。

妻が初版(1997年)を買い、私は3年後くらいにやっと手にとって読んだ。

別にこの作品の感想やあらすじを披露するわけではない。

宮部みゆきが面白い「理由」はなんだろうと考えた。

ネット上には、ネタバレも含めていろんな解説がされているので、私が書けば二番煎じどころか数十万番煎じになってしまう。

宮部みゆき論をはじめ東野圭吾論、村上春樹論は巷間にあふれている。

それでもあえて言うなら、宮部作品は物語そのものに求心力がある。

1960年生まれだから私と同年齢。
共通点はその一点のみ・・・・

彼女は時代小説も冒険ファンタジーも面白いので、固定したジャンルで括っても意味がない。

例えば『理由』は、登場人物はかなり多いが、事件をルポタージュ風に綴ることで一気に引き込まれる。

殺人の動機がわからないというモヤっとしたところもあるが、テーマはさまざまな「家族」の風景。

どこに焦点を当てて読むかは読者次第。

『模倣犯』も『ソロモンの偽証』も傑作だが、結局、宮部作品はどれを読んでもハズレくじを引いた気分にさせられない巧妙さがある。

しかも、作品ごとにまるで別な作家が書いたような趣がある。

別人格が憑依しているのだろうか。

小説家や物書きなら必ず意識していることなのだろうが、プロット(ストーリー展開や物語、文章の構想)の精度とか緻密さ、筋のよさが作品の命運を決めるともいえる。

宮部みゆきという作家は、そこが優れているから人物設定もストーリー展開も光るのだろう。

小説は事実より奇なり。