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海外ミステリ大放出 その後

8月5日にアップした「海外ミステリ大放出」ですが、エド・マクベインの87分署シリーズは買い手がなく、残念ながら引き上げて、ミステリー専門の古本屋さんに問い合わせ中です。

第二段は「ロス・マクドナルド」です。リュウ・アーチャー探偵ものになります。

リュウ・アーチャーのシリーズは19巻ですが、その中の「象牙色の嘲笑 (The Ivory Grin, 1952年)」が残念ながら抜けています。その代わりにアーチャーじゃないのですが、「ファーガスン事件」を入れて19冊にしています。

ハードボイルド小説といえば、やはり「レイモンド・チャンドラー」で、フィリップ・マーロウを連想する方が多いと思います。いずれこのシリーズもブックドキアに出そうとは思いますが、私はマーロウよりアーチャーの方が好きです。マーロウが固ゆで卵なら、アーチャーはまだ柔らかい卵。失敗も多いのが良いのです。

もちろん映画の印象も少なからずあります。マーロウは「ハンフリー・ボガード(3つ数えろ)」「ロバート・ミッチャム(さらば愛しき)」「エリオット・グールド(ロング・グッドバイ)」が三強でしたが、さらに「リーアム・ニーソン(探偵マーロウ)」(これはチャンドラーでなくベンジャミン・ブラック名義の「黒い瞳のブロンド」)も登場して、グールド以外はやはり渋さ際立つマーロウ像となっています。
そうそう、エリオット・グールドのマーロウは横川シネマに来ています。

一方アーチャーはなんといっても「動く標的」「新・動く標的(魔のプール)」のポール・ニューマンが決定的で、マーロウが渋い(静)ならアーチャーは軽い(動)という感じを受けています。丁度タランティーノの「その昔、ハリウッドで」を読んでいますが、その中にジャン・ポール・ベルモンド押しのスタント俳優が、ニューマンとの比較で面白い表現をしていました。

「ベルモンドには、クリフの好きなポール・ニューマン同様、映画スターらしい魅力がある。
それでも、ポール・ニューマンは、たとえば『ハッド』で演じたようなろくでなしを演じても、愉しめるろくでなしだ。一方『勝手にしやがれ』の男はただセクシーなろくでなしというだけじゃない。薄気味悪いコソ泥でクズだ。加えて、ハリウッド映画とは違って、そんな男を感傷的に描かない。ハリウッドはいつもこういうろくでなしを感傷的に描く、それがハリウッドの何より嘘くさいところだ。」

なるほど、「ハッド」も重いテーマですが、ハリウッド映画にしてはポールの描き方は感傷を押さえた演技をしています。アーチャー役もそういう環礁から距離があるんですね。一方ボギーやミッチャムはハードボイルドの探偵のくせにやけに感傷的なのです。

どちらがいいというより、それぞれ好みということだと思いますが、両者にそれほど差があるとは思っていません。私は美文調のチャンドラーが時々鼻につくことがあるので、ロス・マクドナルドに肩入れしたいです。

さて、最初に戻って「87分署シリーズ」ですが、ミステリ古本屋さんにメールしたら、残念な返信が。

「この度は、当店に御蔵書の整理の御相談を賜り、誠にありがとうございます。

リストの方、拝見させていただきました。
誠に申し訳ないのですが、「87分署」シリーズなどの買取は、今のところ難しい状況でございます。
と申しますのも、現在のミステリーの主流の読書需要は、国内作家にかなり偏っております。海外作品の需要は非常に落ち込んでおり、過去の名作の新訳、或いは本格系の未紹介作品がメインになっております。
1970~2000年あたりに人気のあった、ハードボイルド、スパイ、冒険、ポリティカルフィクション、サイコミステリーは古本の市場への供給も多く、飽和状態になっており、また古本屋の商品仕入れを変えるほどの、長いシリーズ物への新規読者の流入も見受けられません。
大変心苦しくはございますが、なにとぞ、御了承下さいますようお願い申し上げます」

なるほどそうなのか、とはいえブック○フ見たいな所は引っかかるし、やはりオークションサイトにあげざるを得ないのだろうか。

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