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書記の読書記録#152「エウリピデス悲劇全集〈1〉」

訳:丹下和彦「エウリピデス悲劇全集〈1〉」のレビュー


レビュー

エウリピデス(Εὐριπίδης ,紀元前480年頃 - 紀元前406年頃)は,古代アテナイのギリシア悲劇における三大悲劇詩人の1人である。

「メデイア」は,ギリシア神話に登場するコルキス王女メディアの晩年におこったとされるコリントスでの逸話を元にしている。内容としては,夫イアソンの不貞に怒り,復讐を果たして去っていくということであるが,その手段として子供殺しを選ぶ点が特徴的だろう。

イアソンの弁明は,当時からすればある意味正論で,女神アフロディテを持ち出したりメデイアの心にエロースが巣食っているなどなど,逆に詭弁臭くなる気もするが。メデイアが納得するわけがない。

アテナイ王アイゲウスの登場により話は加速する。メデイアの復讐は夫をいかに苦しめるかによるようになり,手段として子供殺しに至るようになる。当時,子供は世継ぎとして重要視されており,子供を失うことは親を失うに等しいといっても良いだろう。

しかし子供殺しを一直線に行ったわけではない。メデイアとて母親,子供殺しに迷いが生じるのも無理はない。ここのジレンマは非常に人間性溢れる場面ではないだろうか。テューモスとブーレウマタに敗れるその瞬間に,人間性が放棄される。一言で表すなら,知の脆さ,といったところか。

おまえは雌獅子だ,人間の女ではない。(p196)


解説よりメモ:
「アルケスティス」
・死神の訪問・アルケスティスの死の選択,身代わりの死の要求・アドメネス父子のアゴーン,死の回避・ヘラクレスのアルケスティス救出・サテュロス劇に代わるもの
「メデイア」
・舞台裏からの声・イアソンの弁明,ソペー・アイゲウスの登場,メデイアの復讐と逃亡へ・子供殺し,母性愛による逡巡・ブーレウマタとテューモス
「ヘラクレスの子供たち」
・嘆願劇・イオラオスの嘆願・ヘラクレスの娘マカリアの犠牲・アルゴス軍とアテナイ軍の戦闘・エウリュステウスの変容
「ヒッポリュトス」
・恥を知り名誉を重んじる女性パイドラ・自死への決意と変貌・沈黙からの叫び・クレタ女に限られない愛のエゴイズム


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