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バーについて。

バーのカウンターの天板は、一枚の無垢の板がいい。深い茶のニスで塗ったオークとかウォールナット。または、黒い玄武岩。グラスを直におくと、ゴツンと音のするのがいい。

ショットグラスは底が厚いのが好きだ。カクテルグラスは、できるだけ薄いのがいい。「初めてのバーでは、最初にいつも同じカクテルを頼むようにするといいよ。」と先輩言われてからずっとそうしている。ここはこういうバーなんだ、とわかる。

カウンターの後ろにはずらりと並んでいる酒瓶の棚は、並べ方にこだわって欲しい。良い店は、高い棚の酒瓶もきちんと磨いてあってピカピカに光っている。

バーは、地下一階にあって欲しい。階段で降りて、分厚いドアを開けるのが好きだ。

ある時、悩み事があって落ち着かず、バーに一人で入った。カウンターの隅で飲み始めたが、気が気ではなかった。だが、2、3杯飲むとそれはそれほどでもないような気もしてきた。改めて見回すと、客は自分の他に1人しかおらず、始めから何も変わっていないようだった。バーに流れる時間に自分が溶け込んでいた。

バーでしてはいけないことは、そこにいる他人を乱すことだ。昔、自分も女性も酩酊状態で入ったら、白髪のマスターに「飲み過ぎですよ。送って行きなさい。」と叱られた。また、ある時は女の子二人と一緒に猥談で盛り上がった。髪を短く刈り上げたマスターはグラスを磨き続けていた。次に行った時、「困りますよ」とぼそっと言われた。恥ずかしい気持ちでいっぱいになった。

白髪のマスターは1年くらい後に亡くなった。猥談をしたバーも今はもうない。

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石川 宏

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