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夏旅 2023

梅雨が明け、いよいよ夏は本番。私はひと足先にこの夏の冒険の旅へ出てきました。今は直に照りつける太陽を感じながら、この秋からその先へと思いを馳せ、ゆったりと夏を味わっています。
すずうさとの旅でもありましたが、今回冒険の旅と銘打ったのは、人生初の体験を盛り込んだからです。
周知のように、私は一人であちこち出向いていくのはしょっちゅうなのですが、夏のフェスに参加するのは初めてでした。

ap bank fes 2023 に行ってきました。
三日間開催のうちの一日のみではありましたが、最高でした。
ある時期からめっきり暑さに弱くなって、実はいつも熱中症を発症していたことに気がつかないまま何年も夏の頭痛に悩まされていました。
炎天下で長時間を過ごすことが珍しくなかった時期を、頭痛薬を頼りに過ごしていたわけですが、それが熱中症だとは考えたことがなかったのです。
ですので、参加を決めるのは結構覚悟のいるものでした。
その大切な一日を最後まで楽しむ為には…
準備段階から創意工夫ははじまります。

会場となるつま恋は静岡。前々から訪れてみたかったあの場所この場所。色々と詰め込んでみては無謀!無謀!とひとりツッコミ。そんなこんなで出来上がった冒険の旅の地図。思い入れたっぷり、手応えもたっぷり。
そうやって出かけた旅は、とても嬉しくて楽しくて、喜びと幸せと驚きとそして悲しみが詰まった、忘れられない旅となりました。

静岡県掛川市には事任八幡宮があり、御祭神の己等乃麻知比売命(ことのまちひめのみこと)は奈良県にある春日大社の御祭神の一柱である天児屋根命(あまのこやねのみこと)の母神様です。何年も憧れ続けた八幡宮さん、フェス当日の朝、ついに参拝することができました。

参拝者も多く、賑わいを感じました。けれども宮山と一体となったような厳かさも感じられて、(あぁ、良いところだなぁ!)と浸っていたところ、思いがけないものを見つけてしまいました。

まさか、事任八幡宮にあんなに大きな笛があるなんて!!
憧れていた割に、あまりあれこれと調べたことがなかったので、ほんとに驚きました。
何故笛でこんなに盛り上がっているのかは、詳しくは「源氏物語ー融和抄ー横笛の秘密」をご覧ください。

事任八幡宮は古来より、願いが叶う御神徳の高い社として有名です。御子神の天児屋根命は古代日本の祭祀を司った中臣氏の氏神さまとして広く崇敬される神様です。
天児屋根命の御子神様の天押雲根命は知恵と生命の神様として春日大社の摂社・若宮にお祀りされています。
その若宮の祭礼が、国の重要無形民族文化財に指定されている、「春日若宮おん祭り」です。
ここで奉納される芸能神事の数々が、古代の芸能の姿を今に伝え、継承保存していく役割を担っているという面においても、大変貴重な祭礼であるといえます。

その天押雲根命のお祖母様が主祭神である事任八幡宮に、あんなに大きな笛が!!
天上にも届く笛の音でしょうか。感動的な対面でした。

そしてフェスでは、現代の芸能音楽を愉しみ、様々な環境問題への取り組みを拝見し…
いや、正直な事をいうと、あまりウロウロする自信がなくて、遠目で眺めていただけなので、大きなことは言えません。
なので、今後は丈夫な体を目指して努力しつつ、私自身も、サスティナブルとは如何なるものかと…すずうさのゆにわの活動も通しながら探求していきたいと思っています。

二日目は浜松市からスタートです。
浜名湖周辺から伊良湖岬にかけて、織物に関連する神社を数社参拝しました。
この地方の糸や織物が伊勢神宮へ奉納されてきたようです。
伊勢神宮へ続くクロスロード(cloth rode 布道)みたいだなぁと思いながら…

初生衣神社には、布を織った織殿が遺されていました。

織殿

ここで「加止利」と呼ばれる布を織ったということなのですが、これは「かたおり」のことのようです。簡単に言えば固く織った布です。対するものが浮かし織りと言って、糸を浮かせて織るもののようです。今回は語源のみに触れておきます。
なんだ、香取じゃないのか?と思う方もいらっしゃるでしょう。直接は違うのですが、どうもやっぱり香取神宮にたどりつきます。
香取神宮の御祭神フツヌシ大神は、経津主大神と書かれる事が多いですが、剣に依り憑く神霊としては布都御魂とも表されます。
どのような謂れがあるのか、私も縁のある長崎県島原半島には、布津という地名がありました。
機織り機を考えても、縦に渡す糸を経糸とも書きます。
こうしてみれば、フツヌシ大神は織物に関わる神様のようにも思えてきます。
武神のイメージが強いだけに意外な気がしましたが、本来は言葉で和していく御性質の神様なのかもしれません。
己等乃麻知比売命と経津主大神は兄妹という説があります。
もしもそうであれば、益々言葉との関わりを感じます。

私は以前より、地球をとりまく経線と経津主大神との関連を考えていました。
なんとなく、の域を未だ出ないままではありますが、こんなふうに考える事ができます。

次の文明の中心になるという話がある東経135度は淡路島を通り、淡路島には伊弉諾神宮があります。
私は、布都御魂は伊弉諾尊の剣・十握剣(の神霊)のことではないかと考えています。
とはいえ、経津主大神イコール伊弉諾尊か?と問われると、単純にそうとは言えないところもありますが、縦横、経度緯度、言葉(綾を織る)、言の葉(刀)、など
そんなこんなを考えていると、ふっと何かが閃きそうな気がしてきます。
これは今後も念入りに考察していくことのひとつです。

そんな風に、いくつもの糸があって、そのうちどれをたどっていくかによって、色んな風景が浮かんできます。

伊良湖岬から鳥羽へと送られる糸や布。
フェリー乗り場で地図を見てみれば、思う以上に近いことを知ります。
その間に三島由紀夫の『潮騒』の舞台となった神島があります。
YouTubeで何度も見たせいで行った気になってしまいますが、まだ訪れたことはありません。

「源氏供養」という文化がありました。『源氏物語』で好色な貴公子を主人公に架空の物語を書き、人々を悟りから遠ざけ惑わせた為に、地獄へ堕ちたという設定の紫式部を題材に能などが作られ、物語と紫式部を供養する為にと上演されてきたようです。
古くは『更級日記』には、既にその伝承が書かれているようで、紫式部の死後間も無く、その様な思想が発生したものと思われます。

三島由紀夫も「源氏供養」の一環で、戯曲を書いています。
私は最近になってその事を知りましたが、読んだことはなく、あらすじしか知りません。今後も読むかどうかは分からないのですが、一度書いたものの本人によって取り下げられたという、その動機に興味があります。
私が思うには、美に対して非常に繊細な感覚を持っていらっしゃったのではないかと。それが人としての危うさになってしまうほど。
融和抄において私は、紫式部が霊的に大変鋭い感覚をもって『源氏物語』を書いたのではないかと述べました。
三島由紀夫もまた、そのような感覚の高い人物だったと言えるわけですが、そうすると、取り下げた理由も、もしかしたらその辺りにあるのではないかと、見えないものは見えない私は考えたりいたします。

標準時子午線、東経135度。一説には、紫式部は「須磨・明石」の段から執筆を始めたといわれます。そんな数々の偶然のように見える時の中を、私たちは歩んでいます。

伊良湖岬の突端で、「椰子の実」を口ずさみながら、遥か海洋と神島を思い三島由紀夫を想起した、その事を反芻するうちに、ようやく気がつきました。
終戦の日が近い、もうそんな季節だったこと。
ここ数年、三島由紀夫を通してこの季節を思い返すことが多い気がしています。
その背後にいた将校さん達もご一緒なのかどうか、私には分かりませんが、いまでもこの国の事を案じていらっしゃるのかもしれません。今だからこそ、と云うべきでしょうか…

帰路についた時、目の前でネコが車にはねられました。しばらく息はありましたが、私はなす術もなく見届けることしか出来ませんでした。
しばらくこれを書く気が起こらなかったのは、自分で思う以上にショックだったせいかもしれません。
帰宅後、その様な時にどうすればいいのかと調べてみましたが、現実は厳しいと言う他ありません。

悔し紛れに、車が地面から30センチ浮けば、少なくとも小動物がはねられることはなくなるのに…と、子供の頃に見た、未来都市を描いたアニメを思い浮かべたり。

どうあがいても、自分にできることをやっていくしかない。
時々は無謀な冒険も織り交ぜながら。
この悲しみがいつか輝く未来へと繋がるようにと願いながら。


ここからは旅の余談なのですが
こんな事を書くと、またつっこまれてしまうのですが、子供達が小さかった頃、音楽のフェスへ行った方の話を聞いて、とても羨ましく思った事を思い出しました。
当時は自分も行けると思わなかったのですよね。
そしてやっぱり、あの時自分も行きたいと思ったんだよね〜きっと、と自分に語りかけています。
芝生に座って音楽を聞く光景を、あの時確かに描いたなぁ。
ずっと固執していたわけではないけれど、気がつけば、最高のシチュエーションで叶っていました。
他にも、ここには書けないような願いがたくさん、たくさん、身に余るほど叶っているのです。

他の人には当然で当たり前の事が、自分にはどれだけ手を伸ばしても届かない事がある。そんなことが山ほどある。
でもいつか、それが叶うべき時、そんな時がきたら、必ず叶うんだと、自分にもやってくるんだと、信じてみよう。
フェスへ行ってみたいと思ってから20年以上が経ちました。
人生は長いようで短く、短いようでも、案外遠回りしても大丈夫みたいで、その喜びはひとしおです。

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