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物語の納得力

前に書いた
アメリカ文明の限界|鈴木良実 (note.com)
では

近代に造られた社会実験国アメリカ

と言う観点で考えました。さて、これで日本を見ると

中華文明の辺境に
大乗仏教の理想で造られた国

と言う面があります。日本においても、大陸からの渡来人達が中華文明を色々と導入し、当時として

理想の国づくり

を行いました。その典型が

聖徳太子の17条憲法

です。中華文明の影響を受けながらも、儒教的発想を取捨選択しながら受け入れます。これは、朝鮮半島で科挙が行われ、儒教的な支配が完全に入り込んだのとは、大きな違いになっています。

17条憲法の思想は

和を以て貴し
衆と相弁うるときは辞すなわち理を得ん

という

話し合って納得する

ことを重視しています。これは、儒教的な

天の意に従え

と違います。その後、遣唐使などの手段で、中華文明を受け入れますが

和魂漢才

で、見事に取捨選択していきます。和魂の物語力|鈴木良実 (note.com)

典型的な事例は

易姓革命の拒絶

です。確かに、日本文明に於いては

  • 平安時代は藤原氏の実効支配

  • 鎌倉時代以降の武家支配

  • 明治維新の天皇復権

  • 昭和敗戦の民主制

と言う、革命的なモノが起こりました。しかし、そこで行われたことは

天皇の祭り上げ
実効支配力の変化

と言う形で、易姓革命の武力的な側面を回避しています。なお、武家政権の間での交代は、部門の倣いで、武力での決着はあります。

さて、ここで注意すべきことは

話せば解る

と言うとき、そこで使う論理は、私達の、西洋哲学から来た、『論理』ではありません。聖徳太子の時代から、仏教などから伝わる

比喩の論理
共通体験での説得

です。そこでは、多くの和歌や、物語を共有して、共感を得るようにしています。

例えば、藤原氏は賜姓源氏との権力闘争に勝利した後

源氏物語で光源氏の乱れた性
天皇の妃への托卵等

を書かせています。また、承久の乱の後には

後鳥羽上皇の武士に対する裏切り行為

を伝えていますし、建武の新政に対しては

『太平記』で後醍醐天皇の勝手な行動

を示し、武士達に対して

天皇に権力を持たせてはいけない

の共感を持たせました。

こうした、共有した物語り等での『納得』が、和魂の本質です。

さて、明治維新後の日本は

西洋文明を洋才
国家神道の神話を和魂

として、学校教育で植え込みました。こうした神話の共有は

勇敢な兵士

を造りましたが、権力で押しつけた、脆さがあります。

そこで、昭和の敗戦の後は

民主主義万歳
マッカーサー万歳

の手のひら返しが行われました。山本七平の著作に

マッカーサー神社を作る試み

の話がありましたが、これは

国家神道->アメリカ崇拝

と言う

権力変遷

を象徴しています。

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