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【コント小説】中途障害者

*( )内はツッコミです。
 
 
ここは何らかの事故などで中途障害者となった人々が集まり、お互いの障害を認め合いつつ、交流を深める施設である。
 
山田:どうも初めまして、私は事故で両足を切断した山田と申します。
田中:両足とは不運ですね。あ、僕は片足を切断した田中と言います。
青木:僕は青木と言います。おふたりとも足を切断なさったのですか?
山田:そうですよ。田中さんは片足、私は両足ですよ。ほんと、こうなってしまうと健康というモノの価値がいかに貴いものか、身に沁みますね。
青木:そうですね。僕もこの中途障害で、というか、こう言うと生まれつき障害を持った方に失礼かもしれませんが、なまじ健康の良さを知っていると余計に障害が辛くなるのではないかと思います。
田中:そうですね。でも、逆に考えれば、生まれつきの方より、健康の思い出があるだけでもマシかもしれませんね。
青木:あ~、そうかもしれませんね。
山田:ところで青木さんはどこに障害が?
青木:実は僕もお二人と同じ切断なんですよ。
山田:あ~、足ですか?やっぱり?
青木:いいえ、首なんです。
(え?首を切断?それは即死だろ?)
田中:え?首ですか?それは痛かったでしょう?
(痛かったじゃねーよ。即死なんだよ!)
青木:ええ、工場で働いていたときに、ミスでズバッといってしまいました。足下に頭が落ちたのを見たときは本当にショックでしたよ。
(足下に頭って、それを見ていたお前の眼はどこに?)
青木:今でもそのときの光景が心理的外傷となって本当に苦しんでいますよ。
(いや、心理的外傷って、もうあんた脳がないでしょ?)
田中:そうですよね。僕も自分の右足が恋しいですよ。
青木:僕もそうです。頭がないのは本当に困ります。
(いや、困るとかじゃなくて、死ぬの!あんたは死んでるの!っていうか、どうやって喋ってんの?口がないでしょ?あんた)
山田:私は車いす生活です。車いすの扱いもだいぶ慣れてきましたよ。
青木:僕も最初は全部介助の要る生活でしたが、最近では自分で食事ができるくらいリハビリの効果が上がってきました。
(いや、無理無理無理!首がないのに食べるの無理!え?首から直接食道に流し込むとか?いや、そもそも頭がなければ死ぬんだよ人間は)
田中:青木さんは足があるから歩けますね?頭がないとどんなことに困ります?
(いや、困るとかじゃなくて死ぬの!青木さんは死んでなきゃおかしいの!)
青木:困ることですか?う~ん、なんだろう?
(なんだろうじゃないでしょう?生きてるわけがないんだから困ることもないの)
青木:そうですねぇ。髪型を考える楽しみがなくなってしまったことかな?あ、これは禿げてる人に失礼か、あはは。
(あはは、じゃないよ。髪型とかの問題じゃなくて、頭がないと生きられないの!)
山田:青木さんはお若いけど、彼女とかいますか?
青木:あ~、いますよ。
(いるの?首なしに?)
山田:彼女は、その障害のことをどう言ってます?
青木:まあ、キスができなくなって、そこが少し不満らしいです。あはは。
(いや、キスとかじゃなくて、おまえはもう死んでるの。恋とか結婚とか言ってる場合じゃないの!)
田中:僕も彼女がいますが、片足になった僕を支えてくれています。実は先月入籍したばかりなんです。
(それは素晴らしい、立派だ)
青木:僕も頭がないといろいろ不便ですが、彼女が支えてくれます。ほんと、そこは感謝しかないです。
(いや、感謝って!だいたいどうやって頭がない奴を支えるの?死んでるんだよ!)
 
こんな感じで交流会が進んだ。そして、解散となった。
 
田中:青木さん、そのヘルメット、バイクで来たんですか?
(え?バイク?無理でしょう首なしに。だいたい、頭がないのにヘルメットをどうやって被るんだよ?)
青木:ええ、やっぱりバイクに乗ってこそ青春だと思うんです。明日は彼女を乗っけてツーリングです。
(いや、あんたは青春どころか人生が終わってるはずなの!ツーリングに行けるわけがないの!)
山田:しかし、青木さんはツーリングができるなんて、本当に障害者なんですか?
(いや、障害じゃなくて死んでる奴なの、青木は!)

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