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伝統とビジネスを両立するブランディングで江戸時代から続く鍋島焼文化を残す取り組みとは

こんにちはフォトグラファーの三浦えりです。

4月のSWAYmagazineはSWAYブランドマネージャーの梯航生さんとともに鍋島虎仙窯の番頭兼絵師の川副隆彦さんからお話を伺いします。

これまでの2回にわたる連載では、SWAYと鍋島虎仙窯の共作によるオリジナルの湯呑みを通して、川副さんの文化継承を目指す取り組みや湯呑みの体験価値について深掘りしてきました。

最後となる今回は「これからの未来に文化を残すためのブランディング」をテーマにお話をお伺いします。「日本にシーシャの文化を根付かせたい」という想いでシーシャラウンジを運営するSWAY。300年以上続く鍋島焼に携わる川副さんのお話にヒントはあるのでしょうか。

川副隆彦 / 鍋島虎仙窯・番頭兼絵師
1981年生まれ。2002年鍋島虎仙窯入社。以来20年間、鍋島焼の伝統を継承していき絵師として職人の技を高めていく。2016年より会社の経営全体を指揮するようになり、それまでなかったVisionを掲げ、歴史にフォーカスした『KOSEN』というブランドと会社にフォーカスした『鍋島虎仙窯』の2つの自社ブランドを立ち上げる。
https://imari-kosengama.com/

梯航生 / SWAYブランドマネージャー
コンセプトデザイナー。ITベンチャー企業の新規事業開発室にてPdM,UXデザインなどに従事後、独立、フリーランスとして活動。分解と構築が趣味。

伝統とビジネスを両立したブランディング「美術的商工藝品」に取り組む川副さんの思い

– 鍋島虎仙窯のブランディングについてお聞きしたいです。江戸時代から続く鍋島虎仙窯をこれからどう継続させていきたいのでしょうか。

川副:鍋島焼を文化として残すためには、焼き物が産業になり、職人たちがご飯を食べる手段になるべきだと思っています。もともと工藝品は、地域にある資源を活用して作ったものをお金に変えて、暮らしを豊かにするための手段だったのではないでしょうか。地域で人々が暮らしていくためにものづくりがあり、経済活動があるはずです。

僕は鍋島焼の窯元が集まる大川内町の歴史や文化に誇りを持ち、産地に合う豊かな暮らしを目指すべきだと思います。大川内町に100万人もの人が来訪するようなテーマパークを作りたいのではなく、鍋島焼を生業とする暮らしやものづくりのあり方、誇りを丁寧に伝えていくことを大切に活動をしています。

– ご自身の鍋島虎仙窯だけでなく、大川内町のみなさんを思っているんですね。

川副:そうですね。その仕組みをどのように構築しアウトプットしていくかがブランディングに繋がるのではないでしょうか。

梯:川副さんはとても難しい取り組みをしていますよね。工藝は作家的な立ち位置で活動するのか、ビジネス的に大量生産のような活動をするのか、どちらかに振り切ってしまえば簡単に取り組めるし、成果も出るはずです。しかし、川副さんはその両立を目指している。

川副:難しい挑戦だと自分でも感じます。

梯:ものづくりの側面とビジネスの側面をどちらも理解し、バランス良く両面にアプローチしている姿勢は本当に尊敬します。

川副:江戸時代、鍋島焼は将軍家や大名への献上品として用いられ、一般市民は触れることもできない価値の高いものでした。今では美術館や博物館に所蔵されていて、産地としては誇り高いことです。

しかし、今の時代に生き残るためには一般の人たちの手に届けることが重要です。鍋島焼は繊細で不良品が出やすく、大量生産もできない。もし、大量生産ができるようにビジネスとして技術を変えてしまっては鍋島焼としてのアイデンティティが失われてしまい、僕たちのものづくりの根底にある誇りがなくなってしまいます。大量生産ができないからこそ、丁寧にものづくりをして、お客さんに届けたいという思いがあります。

僕たちの製品のコンセプトは「美術的商工藝品」。美術的でありながら商売として成り立ち、流通に乗るという意味です。日常で取り扱いやすい商品だけど、金額的には安すぎず高すぎず、ご自宅の家具に置いたとき、贈り物をしたときに美術品のような美しい姿であるように意識して制作しています。それが、長く愛されるものづくりではないかと思うんです。

鍋島虎仙窯の現在の製品

– 鍋島焼の誇りを残したまま、いまの時代に寄り添うブランディングをしているんですね。川副さんは現在の取り組みに成果を感じていますか。

川副:徐々に売上としても安定し、ブランドとして認知もされ始めています。これから先の未来にも美術作品としての鍋島焼が残り続けるために「美術的商工藝品」を世の中に届けることが僕の使命だと思います。

文化を成熟させて行くために目指すべきものとは

– SWAYのブランディングにも携わる梯さんは川副さんのブランディングについてのお話を聞いてどう感じましたか?

梯:江戸時代から続く鍋島焼に対し、シーシャは日本においてまだ文化として定着していません。しかし、ブランディングの観点ではSWAYと鍋島虎仙窯は近しい部分があると思います。僕たちは文化を作る途中ですが、川副さんのお話から目指すべきものは一緒のように感じました。

例えば、シーシャのフレーバー作りが圧倒的にうまい作家的なプレイヤーがいる個人店もあれば、決められたフレーバーのレシピがあり量産することで低価格で届ける店舗もありますが、SWAYはそのバランスを取る形でスタッフ教育をしています。フレーバー作りの基礎習得には徹底した研修があり、その後はスタッフ一人ひとりがフレーバーの味を自己表現として追求します。

シーシャを文化にするためには、プレイヤー個人の作家性だけではインパクトが弱く、「個」の活動としてだけで終わってしまうし、量産型だと個性が埋もれてしまう。川副さんの取り組みである「美術的商工藝品」のような両軸の絶妙なバランスで多くの人に届けたいです。

川副:文化は10年20年で成り立つものではないと思います。ものづくりは、人がいて商売となり、その先の暮らしに繋がることで文化として成熟されていく。シーシャが日本に文化として根付くのは100年先の話かもしれないですが、鍋島焼のようにすでに300年以上歴史のある文化で生きる僕にとっては、文化が生まれて成り立つ流れにとても興味があります。

梯:僕は文化をつくるために最初に目指すべきポイントは「ワンジェネレーション」、つまり親から子供に伝わるような構図だと考えています。そして、歴史のなかで栄枯衰退があり、川副さんのように時代に寄り添いながら伝統を引き継ぐ取り組みをする人が現れて、文化の再発見が起こる。その繰り返しによって文化が続くのではないでしょうか。

川副:鍋島焼の300年の歴史から受け継いできたものを、僕たち新しい世代が新しい形で丁寧に伝え、未来に残していきたいですよね。SWAYは一緒にその思いを届けてくれる場所なのだと今回お話をして改めて感じることができました。

梯:長い歴史を持つ鍋島焼に携わる川副さんと、これからシーシャを文化として根付かせていきたいと取り組むSWAYが共通する思想で交わることがとても興味深いですよね。お客さんにも共作した湯呑みを通して今日お話したようなSWAYと川副さんの思いを知ってもらえると嬉しいです。

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文化を残し続けるために取り組む鍋島虎仙窯と、文化をつくるために取り組むSWAYのそれぞれの視点の先にはブランドが長生きし、文化が成熟していくための共通した思想を感じることができました。彼らが一緒に手を組む先の未来を私も一緒に見てみたいです。この対談を読んだみなさんにも、ぜひ共作した湯呑みをSWAYで手に取り、ものづくりや文化の未来について思いを馳せてもらいたいです。

聞き手・執筆・撮影
三浦えり / フォトグラファー

雑誌、Webメディアを中心にフォトグラファーとして活動中。旅や地域を中心に執筆&撮影もしています。また、個人の活動として社会課題へ写真で向き合うことに挑戦しています。2020年には表参道ヒルズROCKETにて写真展を開催。将棋とアートが好き。
Website : https://erimiura.com/
Twitter:https://twitter.com/eripope
Instagram:https://www.instagram.com/eripope/

「SWAY」
“Sway between _____s.”
あいまいを味わえる場所

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