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【稽古のはなし】台本読みは、作者との対話。


こんにちは。アサカワミトです。

ボクがこれまで参加したカンパニーで「台本読み」を丁寧にやってきたカンパニーはひとつしかありませんでした。

それほどに台本読みというのは適当にされがち。
「台本読み」は、これからその世界を共に創り上げてゆく上での対話の始まりでもあり、多くのヒントが散りばめられた宝箱のようなものでもあります。

今回はその「台本読み」について少しお話しようと思います。

そもそも「台本読み」とは??

「台本読み」とは、稽古を本格的にスタートする前にスタッフや俳優たち全員がそろって台本を読むことです。

始めるための重要なパートであるにも関わらず、まるで形式的な儀式のように「はい、読みました」で終わらせるカンパニーのなんて多いこと。

ではなぜ、この台本読みが重要なのかを話していきます。

作者との対話。

「台本読み」は、思いを詰め込んだ作者の声を"聞きに行く"行為でもあります。
作者が何を思い、どういう気持ちでこれを書いたのか。そこに思いを馳せながら読むことが大事です。

でも、そのあたりがわかっていないと、大して把握しないまま台詞を覚え始め、解らないなりに何となく演技を"付け足して"表現をします。そこから生まれるのは、テンプレートをはめるような、ありきたりな演技になりがち。

確かに作家が紡ぎ上げた世界は簡単な話でないことが多く、理解の難しいことはたくさんあります。そこには"思い"があるだけに、やはり複雑になるのです(それをシンプルに伝えるのが作家の腕の見せ所のひとつではあるんですが)。
でもだからといって演じ手が作者に寄り添わないのでは、作品のすばらしさを伝えるという役者の使命を果たすことは出来ません。

まずはとことん"ゆっくりと"読もう

作者と対話っていってもどうすればいいかわからないと思います。
けどその方法は意外と簡単です。

それは、ただゆっくり読むことです。

これだけのことで、驚くほど多くのことが感じられます。
この"感じる"ということが、対話の始まりになるのです。

作者はなかなか言葉に出来ない"自分が感じたこと"をなんとか言葉で紡ぎ、ひとつの作品に仕上げていきます。
だから言葉ひとつひとつには思いが、意図があります。

それをゆっくり読むことで、ただ流し読みで終わるのではなく、その言葉から湧き出る情景やニュアンスを感じる。感じ取れるようになるのです。

なぜなら、言葉はあくまでも簡略化された(多くを削いだ)記号でしかないからです。簡略化された言葉はゆっくり読むことで湧いてくるのです。

「悲しい」という言葉ひとつにも、その時その時で状況が違います。

"苦しい"が混じっている、"楽しいことが切なくなって悲しさを覚える"なんて単純にはいかない悲しさだってあります。
嬉し悲しいなんて言葉もありますけど、どっちに比重が高いのかは、前後の文脈を知らないとわかりません。

そういった「行間を読む」ためには、作者の紡いだ言葉をゆっくり読むこと。まるでお茶をじっくりと抽出するように。
そうすることで、それがどんな「悲しい」なのかを、感じ取りやすくなるのです。

そうして感じることから、まるで作者と対話しているような時間が始まり、それが豊かで心地よい時間ともなるのです。

ただし、そこそこ良い本であれば(笑)

まずは良い本をたくさん読むことをオススメします。
良い本は上手にまとめられているので、感じ取りやすいです。
良い素材からは良い出汁が出るみたいな感じです。

コロナを機に、劇作家協会がこんな便利なサイトを作りましたので、ぜひあなたなりに素敵な作品に出会ってみて下さい。

ボクのオススメはイキウメの2作「散歩する侵略者」と「太陽」です。

読み物として普通に(つまりすごく)面白いです。

ではでは。

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