19時過ぎのカゲロウ

タイトル詐欺である。
ただプールに行ったというだけの記録。

一昨日、予告通り休日にプールに行った。プールはすいていた。ひとしきり泳いで筋肉の羽が生えたところで入れ替わりに子供たちがドヤドヤと入ってきて、帰りに古書とグラノーラの店に入り山本直樹の漫画を買った。グラノーラを食べてすぐ寝てしまい今さっき漫画を読み終えた

「YOUNG and FINE」というタイトル。

山本直樹の漫画はエロいが単なるエロしかないわけではない、と思っている

狂気に堕ちる寸前のような、スレスレのような、人の不思議な感覚が、わかるかわからないかくらいの微量、入り混じっている

この人は私の仲間だ、と思わせてくれる

看護師である母親が、息子の就職に伴い「私も私の人生を生きるの」とヒッチハイクのトラックに乗って爽やかに走り去るところがいちばんグッときた

しかも手には自身の書いた小説を持ってである

ワープロに、本編で起こったエピソードがかたかたと積まれてゆく、というのは漫画や小説の終わりかけの時などではよく見かける情景で、そのあまりにも見かける頻度が多いことに「またか」「こういう話の終い方か」と若干興醒めになるときもある

しかし脇役だと思っていた母の、何かが剥がれ落ちたような清々しい笑顔、とともに握られた原稿が母のものであるとわかるや私の心は親指を上に立てながら溶鉱炉に沈んでいった

私もそうなりたいと思ったのかもしれない

誰の未来も置いてけぼりにしないような感覚がとてもうつくしかったのかもしれない

そして海辺の景色。

本当の主人公は誰だったのかな、などと考える。
それはきっと母ではないし灰野少年でもないしアライレーコでもなくて、学先生でさえなくて

海辺なのかもしれない
ウイスキーの瓶なのかもしれない
煙草なのかもしれない

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