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京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」(第71回)@復活の修学旅行生編

<雨男は誰だ?>

なぜか京都市営バスの路線・系統を(ほぼ)丸暗記しているQ&XLのヘンタイ記憶を駆使し、観光客やお困りの方にベストな行き方、乗り継ぎをご案内する京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」。

2021年10月25日(月)、4度目の緊急事態宣言解除後、初出動の日を迎えた(通算71回目)。

が、あいにく天候は雨。この仕事は本当に雨に見舞われることが多い。同じく「XLの夢主催ソフトボール大会」(2015年11月~)も雨で中止になることが多いことから「XLは雨男だ」なんて言われがちだが、大腸ガンの経過も良好だし彼はとっても元気だし、雨を降らすことくらい大した問題ではない。

そもそも「雨男が雨を降らす」なんてことが現実にあり得るとは思えない。彼は卑弥呼でも「天気の子」でもなく、複雑すぎる京都市営バスの路線・系統を丸暗記している普通の、ただの人だ(普通か?)。

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<Q氏のお天気>

そんなことよりこの日大きな問題だったのは、毎度お馴染みQ氏の心のお天気のほうだ。

その昔、(もちろん理不尽な)怒りに満ちた最悪のコンディションでドス黒い顔をしたまま金閣寺に案内に向かったところ、一瞬で世界各国の「迷い人」たちに取り囲まれて問答無用に案内がスタートしたため即座に対応せねばならず、彼の精神状態もV字回復した奇跡は今でも記憶に新しい。気持ちが苦しいとき、その状況から脱するのに必要なことは、ときとして話をしたり休むことではなかったりする。

しかしながら今回は通常の案内を行わず、<緊急事態宣言が解除されてまだ間もないタイミングの/10月の雨中の/しかも休み明けの月曜日の/京の観光事情はどんな感じになってんかのなあ? リサーチ>をすることに決めた。

雨でも気持ちよく案内できるところは常々限られているし、その限られたポイントに行っても随分寂しい結果に終わるだろうと考えたからだ。

となるとQ氏が精神のドロ沼から這い上がれる要素、可能性はほとんどない。

頻繁に陥るドロ沼にも色々なパターンがあるが、今回のドロ沼はいつにも増してスペシャル。

10月27日(水)にUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)に行く予定にしていてお金もバッチリ用意していたが、10月24日(日)に自ら参加した「命の渚コンサート2021」で、その全部を綺麗さっぱり使ってしまったという<完全無欠自業自得後悔先ニ立タズ底ナシ金ナシ沼>である。

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彼は出動直前、僕に土下座をしていた。絵面だけを見ると僕が何らかの理由で激怒し、謝罪かなんかを強いているように見られてもおかしくないだろう。が、事実はそうではなく、これは欲望に我を忘れた人間のムチャクチャな懇願の風景である。

「なんとかしてください。一緒に行ってください」。本音を読み解くと「別に一緒に来なくていいから、とにかく金だけ出してください」。

スゲー。

ここまでプライドかなぐり捨てられるのホントにスゲー。

スゲーけど絶対ムリなお願いしてるよ?? 

あ、あちゃみちゃんにターゲット代えても一緒だよ??

彼のお金の管理をサポートしているのは「京都市北区社会福祉協議会」(以下、社協)。

こんな深すぎるドロ沼から這い上がることができるとしたら「担当者(鈴木さん)とやり取りして何かしら上手くゆくこと」としかあり得ない。

そんなわけで車に乗り込むや否や仕事は完全無視。鈴木さんと必死の電話をしはじめた彷徨えるQ氏を含む我々一行は、<緊急事態宣言が解除されてまだ間もないタイミングの/10月の雨中の/しかも休み明けの月曜日の/京の観光事情はどんな感じになってんかのなあ? リサーチ>へと出発した。

撮影は(前回は違ったけど)今回も美馬君。この活動がQ&XLの仕事みたいに言われることに僕はずっと違和感を感じ、その違和感を表明してきた。だって明らかに3人でやってることだもの。でも考えてみれば僕たちは3人じゃなくって、ずっと美馬君も含めた4人でひとつのチームだったのだ。灯台下暗し。いつも自分のことは見えてなくって何かしら間違いを犯している。美馬君は何とも思っていないかもしれないが、彼には謝らなければならない。

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<銀閣寺と大文字山の密>

相談の結果……と言うよりQ氏のグダグダに巻き込まれているうちにほとんど無意識に走っていた方角に合わせて、まずは銀閣寺へと向かう。

どこの、どんな道を走っていようと、著名な観光スポットにいけてしまうのがあらためて京都の凄いところだ。 正式名称・慈照寺。派手さこそないものの常に安定的な人気を誇る世界遺産・銀閣寺は今どんな感じなのか? 

答えはまあ、そりゃそうだよなという感じ。

平時、特に土日や晴れた日ならば列をなすタクシーの数も少なく人影もまばら。

銀閣寺近くには五山の送り火で有名な大文字山への登り口もあるから登山ルックに身を包んだ人も少なくないのだが、危ない雨の日に好んで山を登る人もまあいない。ちなみにコロナ禍や緊急事態宣言によって行き先を求めた人たちが殺到して「密」になってしまった場所のひとつが大文字と言われており、これはこれで非常に興味深い。

興味深いが早々にUターンをかまして次へと向かうことにする。ドロ沼Q氏の様子はというと、鈴木さんとの電話を一旦終え「待ち」の状態に入っていた。「検討するのでかけ直します」と言われたらしい。

検討してくれるんだね。優しいね。

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<天神さんの縁日>

銀の次は金! というわけで、まずはその途中に位置する北野天満宮へ。

学問の神様として知られる菅原道真公を祀り、「天神さん」の名で親しまれる、やはり安定的な人気を誇る場所だ。8月(第69回)に前を通った際には歴史ある縁日「天神市」(菅原道真公の月命日にあたる毎月25日に開催)で盛り上がっていたが、あれあれ? 今回も25日じゃない?? 

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雨だし少々盛り上がりには欠けるがそれでもまあまあの人出。う~ん、さすが……ではあるが、人混みが苦手なタイプの人でも雨の日を選んでゆけばストレスなく縁日を楽しめるんじゃないか。でもやっぱり雨だし色々めんどそう。だからやっぱり僕はやめておこう。

ちなみに縁日のことも一般的には「天神さん」って呼ぶからちょっとややこしい。天神さんの天神さん。

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<金閣寺、復活!?>

続いて金閣寺へと向かう。

世界中から訪れる観光客でいつも賑わい、(上記の通りQ氏の不調を一瞬で治癒してしまうくらい)「強い」という言葉がピッタリだったのが、コロナ禍によって「こんなんなるの!??」と驚かされ続けたのも金閣寺だ。

ウソみたいにぱったりと人がいなくなり、それでも変わらずズラリ並んだ警備員の意味とその心情を想像せずにはいられなかった場所。いや、やっぱり金閣寺ってザッツ・観光地の雰囲気が強くって、普段から気軽に訪れたいお寺という感じではないもんなあ。

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まったく読めない状況で近づいてゆくと、チラホラと、でも確実に目を引いたのが修学旅行生たちの姿である。本当に、ひさしぶりの、ちょっと感慨深くすらある風景。

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修学旅行生の復活。

これは今回のリサーチを通して最も確実な手ごたえを持って得た感覚だ。

京都で神社仏閣を巡ったってそんなに楽しいものでもないだろう(僕はそうだった)。それもよりにもよって雨の日に(僕もそうだった)。でも、友達と日常を離れて過ごす時間はきっと特別なものだろう(僕はそうでもなかった)。でもでも、枕投げとか好きな人を言い合うやつとかはきっと楽しいよね!(今、そんなんやるんだろうか?)

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ともかく良かったなと感じた。

だって警備員さんたちも思わずテンションが上がって黄色く輝いて見えたのだから。

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<安定の嵐山>

金閣寺で修学旅行生の復活を目の当たりにし、僕や美馬君やXLが盛り上がっていた頃、Q氏は確か寝てたんじゃないだろうか? 

<完全無欠自業自得後悔先ニ立タズ底ナシ金ナシ沼>の心労と鈴木さんとの必死のやり取りと待ち時間に疲れてしまって。

寝たい人は眠たいんだから眠ればいい。自業自得の肩を持つ気は一切ないが、でもその苦しい心情は気の毒に思う。

ともあれ金閣寺のお次は嵐山へ。

このルートは京都市営バスでも移動距離、時間がちょうどいいため、多くの観光客が選択する鉄板ルートだ。

金閣寺から嵐山へと向かう人もいれば、もちろんその逆パターンもある。

途中、龍安寺や仁和寺を通過する。ちょっと立地的に奥まっているし行き方に迷うとも思えないので僕たちが案内をしたことはこれまで一度もないが、いずれも景観美しい人気スポットである。特に龍安寺は僕も好きで、思わず見惚れる石庭が(言うまでもなく)素晴らしい。しかし2、3度行った程度で「僕も好き」とはよく言ったもんだ。

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金閣寺から2つのお寺へと続く一本道を行く人はほとんどいなかったが、修学旅行生の復活はここでも実感する。

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さて、嵐山だ。嵐山はたとえば金閣寺と比較するならば、大きな落ち込みを見せずコロナ禍においても無類の安定感を発揮し続けた観光地と言えるだろう(京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」調べ)。

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嵐山は他と違って広いエリアを指す名称である。そこには寺も神社もあるが川も山も橋もあり、要するに外なのだ。

不安で不穏なコロナ禍にあって、大文字山や鴨川よろしく空気のいい広い外というのは人に大きな安心感をもたらす。その安心感が人の行動を決める。

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雨の月曜日。にも関わらず相変わらず、さすがの印象。そしてやっぱり修学旅行生の姿、加えて観光バスの姿もチラホラと見える。

きっと観光バスも主要観光地を中心に動きはじめたのだなあ。この先どうなるのかも何が正解かも分からないけれど、かつての風景が戻りつつあることを実感する。

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「かつての風景」と言えば電話、仮眠、鈴木さんからの折り返し電話を経てQ氏のメンタルが奇跡的に復活し、すっかり穏やかな様子でいい笑顔を見せるようになっていた。どうやらUSJ行きに新たな、一縷の希望が見えたらしい。まあ良かったね。

しかし一縷の希望を見せてしまったら、一縷やっちゅーのに彼は絶対視しちゃうからね。そこんとこ気をつけないとね。

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<二条城はどうだ?>

この日、最後の行き先は二条城。

2017年10月、今からちょうど4年前にグチャグチャっとしていたお城前の空間が整備(「元離宮二条城東側空間整備基本計画」と言うそうです)されたにも関わらず、コロナ禍の訪れによってダダ広い閑散とした広場の風景が定着した感のあった二条城。

コロナ前のやり甲斐という点では、僕たちにとっても相当高い場所だった。この仕事を象徴する美馬君撮影・編集によるPVの主な舞台も二条城だ。

ああ懐かしい。。。

けれど過去は過去。さて、現状はどんな感じか??

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やはり、ここにも修学旅行生たちが復活していた。

そして長らくガラガラだった大きな駐車場に、数台の観光バスが停まっていた。

いやいや、本当に本当に懐かしい風景だ。首から吊り下げたPOPをはずしたり制帽を脱がないと、いつまでも迷い人に尋ねられ続けたあの風景を思い出す。

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<これからどうなる?>

この日からもう2週間。京の街の風景は目まぐるしく変わり続けていて、ますます人は、観光客は、交通量は増え、次の出動はきっと忙しくなるぞと想像している。

次回、京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」は11月15日(月)、京のどこかに出没予定である。

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