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『DIVERSITY IN THE ARTS PAPER vol.14』掲載:株式会社NPOつくりました

「NPO様~、NPO様~」

大真面目な雰囲気漂う銀行で、奇妙な名を呼ぶ行員がいる。何か変だなと思っていると呼ばれているのはどうやら僕らしい。「株式会社NPO」をつくるとどうなるか? 「株式会社様~」ではわからないので「NPO様~」なんて呼ばれ、株式会社なのになぜかNPO感は極限まで高まることになる。不思議だ。そしてかなり照れ臭い。

2006年、僕は仲間とともにNPO法人スウィングを京都・上賀茂に設立。障害のある人ない人およそ30名が働く福祉施設「スウィング」の事業運営を通し、世にはびこる「べき」「ねば」や既存の価値観を揺るがせながらさまざまな市民活動を展開してきた。根底にあるのは息苦しい社会をほんのちょっとでも柔らかく、生きやすくしたいという願いだ。

17年。何かを得るのにも失うのにも十分な時間だろう。まるで交通事故のような思いもよらない事態に直面したNPO法人スウィングは2023年3月に解散。けれどそのとき、失意のなかではじめて気づいたのだ。市民活動はNPO法人だけにしかできない特権なのだろうか。それはただの名であり型であり、正に<世にはびこる「べき」「ねば」や既存の価値観>への囚われに過ぎないのではないか。できるよ! NPO法人じゃなくったって全然できるよ!

株式会社NPOは福祉施設「スウィング」とともに、これからも変わらず市民活動を続けてゆく。僕たちはNPO法人を憎んでいるわけでも、ましてや馬鹿にしているわけでもない。むしろその精神を引き継ぎながら現実を生き抜くため、一見ふざけた名前の新たな組織を“どうしても”必要としたのである。

※ この文章はフリーペーパー『DIVERSITY IN THE ARTS PAPER vol.14』より転載しました。


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