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京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」@オール・ジャパニーズ・ヤングメン

なぜか京都市バスの路線・系統を(ほぼ)丸暗記しているQ&XLのヘンタイ記憶を駆使し、観光客やお困りの方にベストな行き方、乗り継ぎをご案内する京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」。

去る3月17日(火)。

64回目の出動日を迎えた我々であるが、新型コロナ騒ぎによって観光都市・京都を訪れる人が激減しているのは周知の事実。さて、こんな状況下で我々を必要としてくれる「迷い人」たちが一体どこにいるのか?

ああ、この活動が「観光」によって成り立っていることを改めて痛感する。ただの1円にもならないというのに、この、胸にポッカリと穴が開いたような感じはなんだ?

いや、ポッカリにポカ〜ンとするのではなく、今しかできないことをして、少し先の未来の肥やしにしようではないか。つまり普段、案内ばかりしている我々が逆に主要な観光地を巡って、今、実際にどんな感じなのか、自らの目で確かめてみようではないか。というわけでレッツ! リサーチ!!

……といっても限られた時間で行けるところは限られるよね。
じゃあ、まずは金閣寺、それから嵐山、最後に二条城というルートはどうかな?

え? なに言ってんの、Qさん。「錦林車庫」って全然主要な観光地ちゃうから。車庫やから。 

え? 清水寺? 確かに行ってみたいけどちょっと離れてるから時間的に厳しいかな〜。

あ、その代わりにこの3つの他にも行けそうなところがあれば柔軟に寄ることにしよ?

すごい。

まるで我々がベタな観光客みたいだ。

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さて、まずは言わずと知れたゴールデンテンポー、金閣寺へ。

スウィングからは車で15分程度である。

わーわーわー。

いや本当に、バス停にも驚くほど人が少ない。

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わーわーわー。

金閣寺前のこの通りがこんなスカスカなんて信じられない。

最近は「伏見稲荷大社」が注目されがちだが、我々の実感としてはやっぱりここが一番すごいのだ。

金ピカの、不動のナンバー1なのだ。

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金閣寺でこうだと他はもっと閑散としてるんだろうな……。

そんなふうに想像しながら、続いて嵐山へと向かう。その途上にある有名どころは龍安寺、そして仁和寺。

どちらも立地的にあまり案内が必要とは思えず、この活動をしたことはないのだが、う~ん、やっぱりガラガラ。

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特に観光バスが本当に少なく、「観光バス業界、だいじょうぶでしょうか?」と美馬君(写真撮影)が心配する……。

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「もうすぐや」


さて、嵐山へと向かう山を越えていると(名前は分からないが、とにかく山を越える)、Q氏がこう声をかけてくれる。

もうすぐ着くのは個人的に楽しみにしていた「山越中町(やまごえなかちょう)」バス停。

【金閣寺から嵐山へ】、そしてその反対の【嵐山から金閣寺へ】という鉄板観光ルートの乗り換え地点、それが「山越中町」なのだが、これまで幾度となく「迷い人」たちに案内してきたものの、実際に見たことがないのはもちろん、それがどこにあるのか? 僕はまったく知らなかったのだ。

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このことを皆に話すと、XL氏でさえ今回が「初」らしく、実物(?)を見たり使ったことがあるのはQ氏のみであることが判明。

一同、「おお、ここかあ!」とキラキラ愛に満ちた眼差しで、この山中にあるバス停(っていうか車庫?)を見つめ、不思議な感慨に浸る。

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ちなみにQ氏が「山越中町」バス停を使ったのも随分昔のことらしく、「仕事をサボってバスで彷徨っていた過去の行き先」のひとつだったという。

ちなみにちなみに彼が「仕事をサボってバスで彷徨っていた過去の行き先」は「山のほう」がほとんどで、中でも最も重宝していたのは、(僕たちが聞く限りでは)断トツで「大原」だ。

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京都 大原 三千院 恋に疲れた女がひとり~♪


という有名な歌(女ひとり/デューク・エイセス)があるが、恋に疲れた女ひとりと仕事サボった男ひとりが出会うことはなかったのだろうか?

勝手に決めつけてしまうと、当時人生の「迷い人」だったQ氏はバスであちこち彷徨いまくり、そしてヘンタイ知識を蓄えまくった。

今、その経験と知識を存分に活かし、世界中の「迷い人」を助けているのだとしたら、いや、やっぱり人生は分からない。

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さて「分からない」のは、目下の状況も同じであった。

途中、大覚寺を経由し、やはり閑散としていることを確認。

タクシーの待機所にただの1台も待機していない。

この分だと当然、嵐山もスカスカなんだろうなあと行ってみると……。

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おお! おお! いやいや、これは意外!!

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観光バスこそ少ないものの、大勢の人出で賑わっているではないか!!!

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ひょっとしてこのポスターの効果かもしれないねえ。

そして想像するに、嵐山がお寺や神社ではなく、広々とした「外」であることも大きいんじゃないだろうか。

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兎にも角にも、この状況ってばアレができるんじゃない? 我々の本来のお仕事であるアレが!

昨年11月は京都駅・南口のリサーチで「やってない」。12月は年末で慌ただしいから「やってない」。1月は銀閣寺で「まあちょろっと」。2月はQ氏の失踪事件もあって「やってない」。つまりここ4ヶ月でアレしたのは1月の「まあちょろっと」だけじゃないか!

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全員、異議なし。

急遽我々の本分であるアレ、人力交通案内をこの地で実施することとなったのである。

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さて、一発目のこの方たちは二条城に行きたいと。ほおほお、鉄板な感じですね。

実は僕たちも今日行くつもりだったんだよ。でも君たちの姿を見てあんまり嬉しかったもんだから、ここに留まることに決めたんだ。

さあQさん、XLさん、さっさと案内しちゃってください!


「あれ?? 出てこーへん!」


この活動において、いちばん言ってはいけないことを思い切り口走るXL氏。

片や考え込んだまま、黙り込んでいるQ氏。

まさかのフリーズ!! 

まさかのポンコツ!!

なるほど、彼らのヘンタイも「月イチ発揮すること」によって磨かれ続けるわけか……。

なんとかヘンタイを奥底から絞り出し、案内を終え、その後は尻上がりに調子を取り戻した2人。

月1回でも続けるってマジ大事。継続性の大切さを身に沁みて実感した瞬間であった。

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え? 「西ノ京円町」に行きたい?? えっとそんな何もないけど、そこからどこへ??

ああ、やっぱり金閣寺ね。すいてたよー。さっき見てきたよー。

スマホを見せてもらうと確かに「西ノ京円町」で204か205に乗り換えるルートが表示されている。けれど我々のおススメはやっぱり「山越中町」経由ルート。こっちのほうが混まないし、スイスイ行ける(と思ってる)んだよ。ついさっき通ってここまで来たしね。

通り向こうのバス停から11に乗って、「山越中町」で59に乗り換えてね。

ほんで最後は「金閣寺前」で下車してください。

ところでどこから来たの? ああ横浜! いいねー。 

じゃ、「メリーさん」って知ってる? 知らない? そうかあ、知らない世代なんだねー。

……話が急に飛ぶが、金閣寺の近くには「金閣寺前」バス停と「金閣寺道」バス停があり、このことについては以前詳しく書いた(→)。

しかし先日、3月20日のダイヤ改正によって「金閣寺前」バス停は「休止」されることになったという。

不便を感じておられる地元の方もいるようで、本日の京都新聞(3/26付)に記事を見つけたのでここに転載する。

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京都市交通局がこのほど実施した市バスのダイヤ改正に伴い、一部系統で経路変更のため、停留所が休止になることに住民が不満を募らせている。市は観光客の増加で生じた混雑対策のためと説明しているが、設置から60年も経過するバス停の休止に住民らは「観光客の利便性のため、どうして住民が犠牲になるのか」と反発している。

休止になった停留所は、北区のきぬかけの路にある「金閣寺前」と「衣笠総門町」。立命館大学前と三条京阪前を結ぶ12号系統と、山越中町と三条京阪前を結ぶ59号系統が停車する。両停留所は1959年に設置された。  

近年の観光客の増加に伴い、金閣寺前の停留所に利用が集中して両系統が混雑しており、市交通局は2016年秋から春秋の観光シーズンの土日を中心に2カ所のバス停を休止している。きぬかけの路を通らず、西大路通を経由するルートに変更してきた。  

同局は、この混雑緩和策に効果があったとして、ダイヤ改正した20日から試行的に通年で実施することを決め、今月3日に住民説明会を開いた。参加した近隣の女性(72)は四条烏丸方面に仕事で週5日利用しており、「観光シーズンの経路変更は我慢してきた。それが通年なんておかしい。市バスは『市民の足』ではないのか」と憤り、「高齢者が多く住む地域なので、自宅近くのバス停がなくなるのは死活問題」と訴える。  

同局は「試行的に休止するので廃止ではない。短期間で経路変更を再び行うことは困難だが、利用状況を見ていきたい」とする。住民がバス停を利用する赤阪町町内会の吉田実会長(68)は「試行的とするなら住民の意見を聞き、その意見を反映して元に戻してほしい」と話している。

以上

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ところで今回我々が案内したのはなんと全員! 日本人の若者たちであった。

全部日本語で事足りたことなんて、一体いつぶりだろう。

お土産屋の店員さんにその辺りのことを尋ねると、最近は海外からの観光客、そして年配の方はほとんどおらず、やはり(着物を着た)日本の若者ばかりということであった。

その若者たちに今回僕が必ず尋ねたこと。

それは上記の通り「どこから来たの?」である。時々答えたくなさそうにしていた女子たちがいたような気もするが、その目的はただひとつ、東京・恵比寿「ACM gallery」で開催中のXL個展を、隙あらば紹介するためだ。

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……と「千本釈迦堂」に行きたいという渋い案内を求めてきたこの若者に「どこから来たの?」をかましてみると、僕と同じ愛媛県出身。

それも詳しく聞けば、なんとなんと実家から車で15分程のところに住んでいることが分かった。

世間は狭い。

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はいはい、え? 「ばえる」ところに行きたい?

それならやっぱり「伏見稲荷大社」じゃないかなあ、ほら、千本鳥居。

「へー、そんなとこあるんだあ」ってどこから来たの?

なに? 京都の人!?? 知らなかったの?? そんなことあるんだあ……。

ここから(京都市バスじゃなくって)「京都バス」の72か73か76か77に乗って、京都駅で今度は「京都市バス」に乗り換え。

「のりば」がややこしけど、何とか見つけて南5か急行105に乗って「稲荷大社前」で降りてください。

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お次はまたまた二条城へ行きたいという、この2人。

もうスムーズやでー。京都バスの62か63か66か67に乗って「堀川御池」で下車。

そっから歩いてすぐですよ。

で、どこから来たの? 

え? 東京? 池袋??

遂に見つけた! 近所やん! 

ACM galleryのもう近所やん!

しかしXL個展も会期途中での一時中断が決まった。

ACM galleryの杉本志乃さんは「状況を見極めながら再開の日程を決めたい」と言って下さっている。

事態が落ち着き、安心して皆さまに足を運んでいただける日が来ることを願うばかりだ。

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あっと言う間にときは行き過ぎ、この日の案内は無事に終了。

行き先で一番多かったのは、やっぱり断トツで金閣寺。オール・ジャパニーズ・ヤングメンを相手にしても、その圧倒的強さはさすがであった。

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もう時間も遅かったが、心地よい疲労感とともに二条城へと車を走らせる。

偶然世界一イカした喫茶店を見つけ、「今度行こう」と心に誓う。

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二条城はガラガラだったが、もう16時を過ぎていたのでなんとも言えない感じ(16時受付終了/17時閉城)。。。

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正直、僕はこの日の道中や案内がとても楽しかった。それにこの状況下だから、できるだけ早くレポートを書くつもりだった。

でも次年度に向けた予算立案やらを優先しているうち、およそ2週間のタイムラグが生じてしまった。

2週間前は、まだ楽しい気持ちそのままに書けていたように思う。でもジャスト今は、こんなレポートを書くのは「不謹慎!」と言われかねない雰囲気が漂っているように感じる。

見えないウィルスも感染の広がりも確かに不安だし、そもそも諸行無常の世の中だ。

でも。

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先日、テレビのない我が家に念願のラジオを導入して驚いたのは、新型コロナウィルスについての、あまりにも多くの情報量である。聴いているのが辛くなり消してしまうと、当たり前だが穏やかな静寂が訪れる。

耳を塞ぎたいわけではない。

現に毎日のように行政からは関連メールが送られてくるし、Facebookのタイムラインに流れるトピックの多くも、新型コロナ関連のものだ。けれどウィルス以上に感染が拡大しているのは有象無象の情報であり、それに掻き立てられる「不安」のように思えてならない。

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花を育てていると、ご近所との会話が弾む。

仕事が休みだった昨日(3月26日)の午前中、シクラメンの世話をしていると近所のO島さんがやって来て、立ち話になった。

世間の空気はどこ吹く風、ひたすら「胃腸の健康」について話をしたのだが、去り際にO島さんは空を見上げて清々しくこう言った。

「天気が良ければ、それだけで気持ちがええなあ!」

強い!!! と思った。

次回、京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」は一応4月27日(月)、木ノ戸の誕生日(そしてQ氏の誕生日の翌々日)に京都のどこかに出没予定である。

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