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1月短歌

憂鬱にいつものとおり目が覚めて世間の賑わい横目に眠る

新年の御多幸お祈りいたします 三十一文字で生を詠おう

正月の料理に飽きた昼時のラーメン店の賑わいときたら

年始めまで働いている人よ感謝してます休みも取ってね

個人とは社会にとって気づかずに踏み潰してきた蟻なのだろう

従兄弟の子さあお年玉あげようねえ あらら五しゃいになったんでしゅか

早く人間になりたい俺は今日も妖怪過重労働男だ

「先生に挨拶に行く」と卒業生 製造責任者は喜ぶぞ

おかしいな今日が仕事始めなのにもう二日間働いている

バスカーのハイボールだよ憂き夜を消し飛ばすための魔法の発泡

希望という星が生まれる前兆の怒りという超新星爆発

再会を喜んでいる表情のあなたが誰か思い出せない

これは夢だということにしたからね だからね はやくここからだしてよ

現実という不都合に忖度をせずによい子のまっすぐな夢

大人にはなれない俺は昔からずっと俺だしアイスも好きだ

「こんにちは」誰もが知り合いの雑踏が怖くて相手の目を見られない

「愛車だぞ!愛車だ!」高く売れるという広告に叫ぶ「簡単に言うな!」

美容師にやたら付いてた「カリスマ」の「カリ」は「刈り」だと誤認していた

私にはいくつもの名が存在し餡の色めぐり戦争も起きる

何もかも忘れてしまいたいときは湯船に湯を張りストゼロを飲む

長針と短針のようにすれ違いまた重なりあう私たちの日々

いつもより小さく見えたあの背中あのとき追いかけておけばよかった

腕の中抱き締められるのも良いが大きな背中に抱きつくのも好き

あなたという野薔薇に触れて食い込んだ棘を今でも抜けないでいる

逃げるんだここでは人の生気奪う残業という魔法がかかる

リア充はタヒねと騒いだ仲間とのクリスマス会は充実していた

誰も知らない私たちになりたくて親に黙って上り線に乗る

終わってく部屋の足場を探るように生きていける場を辛うじて探す

汁に浮く小さなつくねの一玉のような頭を水辺で見つける

あたたかい部屋は私がエアコンを消し忘れてた孤独を意味する

お寝坊をしすぎて俺が予定どおりいることさえも夢かと疑う

冷えきったビールに冷えきった心も体も温めなおしてもらおう

冷えきった魔法がかかり私たち温かな頃を思い出せない

最近は動画を通じてパスタ茹で綺麗に殺す暗殺者あり

保田窪の交差点では通勤の車列は大蛇のごとくうねりて

通勤の車列は大蛇のごとくしてうねり社会へ飲み込んでいく

人生をひとつの映画とするならば君はエンドロールの筆頭

おじさんに恋なんかしちゃだめだよと諭して背中を見送るおじさん

あの王のもとで国務を司るジャファーに感情移入し涙

死んだように眠る街かど午前二時 命を探してコンビニに行く

午前二時眠る夫の息がなく慌てて飛び起き フゴゴガッ フゥー

しらんけどパセリが美味しく感じた日わたしは大人になったと思う

しらんけどあなたが見ている窓からね霊がこちらを覗いてるんだよ

死にたいと思いながらも死ぬまでは生き続けるのかもういやだ もう

もういやだ例えば刺身にタンポポを乗せる仕事のタンポポが2トン

吹き荒ぶ寒風低く唸る夜 悲しげなのは誰のせいなの

寒風の泣き声止んだ 大丈夫?まさか彼ピと仲直りした?

困ったら声をかけろという親友 家庭があるだろ? 一人で行くさ

第三十五回生きてて良かったと思った選手権に出られない

この泡が美味いと父は下手くそに私が注いだビールを飲んだ

あの頃は「私が注ぐの!」と娘から注がれるビールでハッピー泡ー

口の中に肉の幸せあるうちに米の幸せで追い幸せだ

もう二度と恋なんてしないあなたからもらった愛が永遠なので

もう二度と、なんて言うなよ人生であと一度くらいあるかもよ、恋

透明な海でも僕からにじみ出る濁りで汚染されるのでしょうか

透明だと思っていたけどあなたにも血肉はあるし生活もある

学校が楽しかったという人の記憶を少し分けてほしいな

どんぶらこどんぶらこの謎探るため桃源郷を見つける旅路

大好きな貝のコリコリした食感 大好きだった君に似ている

男ならみんな大好きブッピガン今日はどんなロボットで遊ぼう

悲しみか大義かもはや判然とせぬ渦の中金塊求むる

人生を勝手に階段にされた上、転んで額も打ちつけてしまう

父さんや母さんに「もうだめかも」と言って行方をくらまそうかな

人生を勝手に階段にたとえられ上の方から突き落とされてる

女子にピアスあけた理由を聞くなよと笑って君は姿を消した

僕たちの祖父はいたずら好きだった 遺言「葬儀で『テッテレー』流せ」

女子にピアスあけた理由を聞くなよと笑って君は耳打ちをした

嘘だけど同じお店で4回も注文間違えられたら怒るよ?


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