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【感想70】アリスとテレスのまぼろし工場

岡田麿里、楽しそうで何よりだ。

他人に勧めやすい ★★☆☆☆
個人的に好きか  ★★★★☆

俺はめちゃくちゃ好きなテーマだしちゃんと100分で1つの題材を貫いてカタルシスが生まれてるしいい映画だよ、ぐらいはオタク向けには言いやすい映画。
比較的多くてとっつきやすいボーイミーツガールではないし、いつも通り思春期の感情をストレートに見せつけてくる岡田麿里なのでそこまで映画とかの映像作品を真剣に見ない人に薦めるのは難しい顔しちゃうな~~って塩梅。

ある事故があった日を境に時が止まった見伏という街にいる中学生たちを中心に進んでいく。
時が動き始めた時に変化があったらいけない=変わらないように街全体で務めるような雰囲気の中、将来の事や恋愛で悩んだりすることで変化を望むのを止められないことから物語が動いていく。

この舞台設定で中学生をチョイスするのも真っすぐすぎるセンスだし、そのキャラたちも話の中で生じる出来事とそれに伴う心境の変化と行動についても大人になりきれていないけれど時間経過によって歪に成長した気持ちが見え隠れしたりで、毎分毎秒飽きずに見続けられる。

特にヒロインの睦実は特殊な立ち位置というのもあって、序盤を通して見える表情やセリフの意味合いはもう一回見直してもいいなって思えるぐらいにはいい味してる。ここは実際に見た時にどうしてかを知ってほしい。

そんな中学生たちに対して、大人たちの決断も一貫性があって面白い。
この状況が終わったらどうなる?という問いかけに対して子供と大人という二項対立をそのまま決断部分にも持ってきている。
主人公の政宗の叔父である時宗は長年想い続けてきた政宗の母親の言った「最後までいい母親でいたい」を機に、最後の時が訪れないように奮闘するようになる。同時に変わり者扱いだった佐上は”世界が終わる=自身の天下が崩壊する”の図式があるのか、終始まぼろしの世界を守り抜くことを徹底している。
変化や進展を望む妊婦さんや釣り中のおじさん(はどうしてかは描写がないけれど)は舞台から退場させられた後での描写ではあるので、14歳という多感で無限の可能性と将来のある生き物を輝かせるための素材としての大人の扱いでもあるとは思う。

それでも荒い部分はあるので、一発で分からなかったりそもそも理解できないとかは多くの人がなりそうではある。

例えばどれぐらい止まった世界にいたのか?というのもほとんど状況証拠で察する形になる(言及見落としてたらスンマセン)から実際に見伏の人たちはどんな心境で過ごしてきたのか?ていうのが人によってだいぶ上下差が出てくると思う。2,3年と数十年とじゃかなり違うし。
の割にはモノローグやセリフで丁寧に説明するシーンが所々あったりと、鑑賞者に対しての親切さがちぐはぐなのが結構まずいなとは思った。
自分確認書や書き上げた日記を読み上げる部分は変化がないことを自認するための行為として吞み込めはしたけれど、言葉の選び方やニュアンスの含ませ方がうまいところも多々あるので悪い意味で浮いちゃうシーンが多いかなっていう印象。

あとは期待して見た要素がそこまで機能してないなっていうのはさよ朝を見た時同様にあった。
佐上が所謂『ミスト』での教祖おばちゃんのような人なんだけれど、どこを取ってもおばちゃんの下位互換でしかなかった。
そんな人の意見にかなり長い間街として従う形になっていたのも、状況が一変した途端ほぼ全員が離反したりと街の住民が人間っぽさを感じない描写で物語に都合のいい装置のような印象が強かった。見ている方が補完として頭回す必要がより大きい。


わかりやすくこういう話です!という感じではないので一般受けは難しいかもだけれど、人間賛歌としての側面もあって未来へと向かっていく前向きな展開はすごく好きなので頑張ってほしい。


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