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私がカンボジアを好きになった瞬間

先日、カンボジア・プノンペンで価値観が変わる景色に出会った。
それは、『物乞い』である。

これまで、どこの国に行っても海外旅行客を狙って物乞いをする人々を見てきた。

  • 大声を出して通行人の注意を引き、物乞いをする人

  • 手足のどこかをなくし、すがるように物乞いをする人

  • 小さな子供たちを連れて、何かを訴えるような眼で物乞いをする人

など・・・

どこか後ろめたい気持ちを持ちながらも、私は基本的に無視することを決めていた。
その場で少額の金銭を渡しても貧困に対する根本的な解決には至らないし、貧困ビジネスのニュースなどを見て、どこか信用していない部分があったからだ。

だから、プノンペンでもこれまでと同様の態度を取った。

ナイトマーケットで待ち合わせをしていた私は、予定よりも少し早く着いたため、近くを流れるトンレ・サップ川のほとりで、地元のカップルや若者に混じり、ぼーっと川を眺めていた。

すると、ひとりのお婆さんが私にお金をせびるそぶりを見せて、近寄ってくる。

『あ~、またか。どこに行ってもいるんだな。』

そう思いながら、私はお婆さんと目を合わさず、「NO, Sorry. 」と通じるかどうかわからない英語で返すと、お婆さんは食い下がることなく、静かに去った。

意外とあっさり立ち去ったので、少しお婆さんの様子が気になり、横目で見ていた。すると、地元のカップルであろう若い2人のもとへ。

『せっかくのムードなのに、かわいそうに。』と思っていると、男性は黙って、ポケットから財布を出して、お婆さんにいくらかお金を渡している。

その様子に少し驚きながら、さらにお婆さんの行動を追うと、次に声を掛けたのも、バイクを横に停めて休憩をしている地元の若者だった。

若者は、お婆さんと何かを話しながら、財布から出した紙幣を渡した。そして、去っていくお婆さんに対して、笑顔で手を振っている。

物乞いに対して無視することを決めていた私にとって、とても衝撃的な光景だった。
観光客ではない地元の若者に声を掛けた物乞いにも驚いたが、声を掛けられた若者が笑顔でお金を施している!

いろいろ理由を付けて何もしない自分が、なんだか恥ずかしい気持ちになった。同時に、優しさにあふれるこの国を信じようと思った。

無事、友人と合流し、立ち寄ったナイトマーケット。
いつも海外のナイトマーケットに行くと、店員さんと値段交渉をしながら、少しでも安く買おうとするのだが、今回は店員さんの言い値ですんなりと支払った。

少し気持ちが軽くなった自分がいた。

全てのカンボジア人が同じ行動を取るわけではないのはわかっているが、私が見たあの出来事は、今も鮮明に覚えている。

そして、私がカンボジアを好きになった瞬間でもある。

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