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ポップカルチャーになれない大衆小説

生まれて初めて読んだ小説は、歯医者の先生から借りた流星ワゴンでした。
飯も食わずに寝る間も惜しんで読んでた記憶があります。

確か10にも満たない年だったと思います。あまりにも夢のない陰鬱な描写が衝撃的で、まるで生きている人間の息遣いがそこにはありました。

日曜劇場でドラマ化もされているそうですね。重松清さんの作品は短編集も含めて何作か読んでいるんですが、なんとなく当時の思い出を汚すような気がして、流星ワゴンを手に取るのは控えています。

それでも一度だけ友達に勧めたことがあります。特に気取ったつもりもなかったんですが、どうも小説を勧められたが不快だったらしく、その友達と軽い口論になりました。

それも今にして思えば、鼻白む気持ちも分からなくもないんですが…。

僕が小説の話をしなくなったのはその頃からでした。読書に対する消極的な感情を初めて気づきました。


「どうして小説は大衆文化になれないのか」

もっと言うと、どうしてアニメや映画と同じように大衆文化として当たり前に慣れ親しまれる娯楽になれないのか。

その原因はひとえに小説を取り巻く優越意識が大衆性を大きく損なわせているのではないでしょうか。

確かに文学の持つ側面のひとつに、社会性や芸術性が含まれていることを認めます。
それはあくまで読者の興味引くための要素であり、面白さの上に成り立っているものでなくてはなりません。

なぜなら小説なんてものは、たかが娯楽でしかないのですから。
誤解を恐れずに言うのなら、僕は小説がハイカルチャーとして尊ばれる風潮が好きではありません。

そもそも文学が上位文化とされたのは、富裕層と一般層との間で知識量に乖離があったためであり、

日本人のほとんどが満足に文章を読み書きできる世の中において、それでも自慢するように趣味は読書だと答える人がいるのは、優越意識のための対象になっているように思えるのです。

ただでさえ今の時代、なんの労力や金銭もなしに時間を浪費できる娯楽に溢れているなかで、
小説ほど読む側に、集中力と時間を強いる娯楽などなかなかないでしょう。

それでも面白さという点で言えば、他の娯楽に負けない作品が小説には数多く存在します。
だからこそ、勿体無いと思ってしまうのです。

まるで小説とは高尚な勉学のうちとでもいうような雰囲気が、ただでさえ高い敷居をより高くしているように思えるのです。
面白いから読む。
それ以上の理由なんて必要ないでしょう。


大衆性が小説の裾野を広げる

村上春樹さんが自身のエッセイで、
誰にも一冊ぐらいなら小説を書くことができる。それを続けられるかが作家としての才能である、という話をしていました。

そのなかで村上さんは翻訳本を出版した経験と、そのときに感じた排他的な空気感を踏まえて、他の業界にはない小説の裾野の広さを言及しました。

確かにベストセラー作品を見れば、数年に一度無名の作家さんがセカンドキャリアとして小説を出版して、その専門性とリアリティが評価されていることがあります。

そのときにライバルとも言える同業の作家は、排他的な感情を持つことはありません。なぜならそのほとんどが数冊の本を出版した後、飽きるようにいなくなるからです。

それで村上さんは続けることを才能と言ったんですが、その裾野の広さが小説という文化を育ててきたように僕は思います。

これは持論ですが、
小説とは常に一番身近で手軽な表現方法でなくてはなりません。

誰しもが磨けば光るようなアイデアを持っている。それを世の中に見せたいという気持ちは止められません。

その手段として、今に至るまでずっと小説は選ばれ続けてきました。なぜなら小説はひとり考えてひとりで書くことができる。そして世間に見せる機会に溢れているからです。

小説はその裾野の広さがゆえに新陳代謝を繰り返して、ここまで多種多様なジャンルの作品が生み出されるほどの成長を遂げました。

大衆性を失えば、小説は一番身近な手段ではなくなってしまう。今後どれだけ画期的なアイデアが生み出されても、誰にも注目されない。
それどころか手段として小説が選ばれなくなる。

それは実質的な死と言えるでしょう。
だからこそ小説とは一番身近にある必要が……つまり大衆性を持つ必要があるのです。


あとがき

長々とすいません。
昨日の含めて書いて消してやってると書くのに二日かかりました。

毎日更新やってるんですが、元々文章書く習慣をつけるためのものなので、まあ許してください。

書き始めたときに言いたかったのはアニメやテレビを語るのと同じように小説も語れればいいねってことでした。
それでも書いてるうちに熱が入ってしまって、長くなりました。

小説を志す人間として、客観性や専門性に欠けるということを理解しています。その上で僕なりに真剣に考えて思ったことです。

こき下ろされる覚悟はできてます。
暴言や人格否定でなければ、意見は真摯に受け止めさせていただきます。よろしければコメント欄に感想をお願いします。

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