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労災保険ってなんだっけ?

こんにちは、ぺろよしです。
今回は労災保険について綴っていきたいと思います。「労災」という言葉を聞いた事があってもなんとなーく「仕事でケガした時の保険」としか知識がない方もいるかもしれません。

保育士試験でも出題されますが、論点は意外とシンプルです。働く人にとっては意外と大事な制度ですのでぜひここで勉強していってくださいね!


◆そもそも労災って?

労災保険は正式名称を「労働者災害補償保険」と言います。
根拠法は労働者災害補償保険法となります。長ったらしいので「労災」とか「労災法」なんて略するのは法律あるあるですね。

労働者災害補償保険法
第1条
労働者災害補償保険は、業務上の事由、事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(以下「複数事業労働者」という。)の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、(中略)疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。
第2条
労働者災害補償保険は、政府が、これを管掌する。
出典:e-Gov法令検索(https://www.e-gov.go.jp/)

先ほど書いたように労災保険は仕事に起因する病気やケガを負った時に様々な補償をしてくれるものとなります。他にも安全な職場環境作りや本人・遺族支援、働けなくなった場合の休業補償なども目的としています。
保険者は政府です。事業主ではありませんよ。ひっかけ注意です。

え?○○保険っていうのがたくさんあるなって??
そうですね、健康保険・介護保険・雇用保険・労災保険と色々ありますよね。労災保険は雇用保険とニコイチセットで「労働保険」という大きな枠組みを作っていると考えてください。覚えてますか?雇用保険は労働者の生活と雇用の安定を目的としていました。一方で労災保険は労働者や遺族を労働災害から守る事を目的としており、労働者をダブルで支援してるのです。


◆労災保険の被保険者って?

労災保険の対象者はいたってシンプル。雇用形態や勤務日数・時間に関わらず、正社員・パート・アルバイト・日雇いなど全ての労働者です。ただし経営者(社長・役員)・個人事業主は「労働者」に当たらないので除きます。(この方々に向けて「特別加入」という制度もあります)
ちなみに労災法がちょっとずつ改正されて個人事業主でも例えば自転車のフードデリバリーの方やITフリーランスの方でも対象になったりしています。

労災法に加入するのは事業主の義務です。出た~義務義務!!
誰かを1日でも雇うのであれば事業主は労災保険に必ず加入しなければなりません。また保険料も全額事業主負担(労働者側は負担なし)となります。
保険料は事業種別ごとによって異なります。例えばデスクワークだけの会社と工事現場を請け負う建設会社では、建設会社の方が業務災害に遭うリスクが高いのでそれぞれ料率を変えないと不公平だからです。


◆労災保険に入ってるとどうなるの?

労災保険にはたくさんの給付があります。それはもう説明が大変なくらい。
一覧にするとこれだけあります。

①療養(補償)給付
②休業(補償)給付
➂障害(補償)年金・障害(補償)一時金
④遺族(補償)年金・遺族(補償)一時金
⑤傷病(補償)年金
⑥介護(補償)給付
⑦葬祭料・葬祭給付
⑧二次健康診断等給付

業務災害による給付は「〇〇補償給付」、通勤災害による給付は「〇〇給付」と呼ばれます。
それぞれの給付の細かい事由について知りたい方は厚労省HPをご覧ください。保育士試験的にもここは深堀りする必要は全くありません。ぶっちゃけ労務担当でもわかんない。ケガや病気や障害を負った時死亡した時や、事業主が行う健康診断で一定条件を満たせば給付が受けられる事を知っておいてください。


◆労災認定って?

業務に起因すればなんでもかんでも労災となる訳ではありません。
労災給付を受けるには窓口である労働基準監督署が「このケガ(病気)は業務に起因するものである」と認定してくれないと受ける事が出来ません。労災法第一条「業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等」とあるように、労災は仕事中の「業務災害」と、通勤途中の「通勤災害」に区別されます。

①業務災害

仕事中のケガや病気である業務災害。認定されるために重要なのは「業務遂行性」と「業務起因性」です。業務遂行性というのはケガ(病気)をした時に仕事をしていたかどうかです。細かい言い方にはなりますが会社で働くというのは事業主と労働者が雇用契約を取り交わした上で決められた場所・時間で業務を行う事ですよね。言い換えると仕事をサボって抜け出した先で車に轢かれても労災にはなりませんよという訳です。(出張や仕事中の休憩は可)
「業務起因性」というのはケガ(病気)が仕事をしていた為に起こってしまったという事。仕事中に用具を取ろうとして腰を痛めた、外で作業していたために熱中症になった…どちらもうちの会社でめちゃあるあるな具体例ですが、この場合は当然仕事が理由なので労災認定されます。
時折ニュースなどで労災裁判の報道が出ますが、この判断基準が焦点となっていますね。よくあるのが過労死やハラスメント行為による精神疾患が業務起因性であるのかどうか。傷病や死亡の因果関係が業務にあると認定されなければ労災としては認められません。

②通勤災害

仕事に行くための出勤や仕事先からの帰宅帰社の間にケガ(病気)をした場合でも通勤災害として労災適用となります。
この「通勤」というのは家や出先~会社の間を寄り道せずに通るルートを指します。アフター5(死語)にスポーツジムに寄った後ケガをした等は労災に該当しません。しかし、通勤途中であってもちょっとトイレに立ち寄った、日用品購入でスーパーに立ち寄った、病院や選挙に行ったなどの理由があれば労災として認められる場合があります。
実際にこれは当社であった労災ですが、会社に着いた途端別の社員が運転する社用車にはねられた方がいました。これも通勤災害と認められ労災保険が下りています。

◆労災の手続き

労災が起きた場合どんな手続きをするかといいますと…こちらの図がわかりやすいです。

出典:山梨労働局

労災発生→労災保険給付申請用紙を当事者に渡す(ぺろよしの仕事)→当事者が労災指定病院等で診療を受ける→病院と事業主が申請用紙に証明→労働基準監督署に提出→労基が調査→認定されれば給付が下りる

といった流れになります。
当社は現場業務があるがゆえに労災が多く責任担当者も慣れたものなので、ぶっちゃけぺろよしは申請用紙を渡すくらいしか労災分野では業務に関わっていません。

注意していただきたいのが、労災が起きた場合健康保険は使わないでという事。思い出してほしいのですが健康保険の給付=本人(被保険者)とその家族(被扶養者)が業務外で発生した病気・ケガ、または出産・死亡の場合に、医療を提供したり定められた各種の給付金を支給するというものでした。つまり、業務中のケガ病気をカバーするのが労災保険なので健康保険は使えないよという事なのです。

とはいえ「仕事中の作業で腰を痛めたんです!!」とか病院で声を大にして言わない限り普通に健康保険は使えますよね。健康保険を使った後に労災申請をする場合、保険の切替作業が必要となります。手続きが面倒な上に時間もかかるので労災の場合は最初から健康保険を使わない方がベストと言えます。
また病院の中には「労災保険指定医療機関」という病院があります。都道府県労働局長により指定された労災の為の医療機関の事です。こちらを受診すると診療費の負担もなく手続きも代行してくれるので非常に有難い存在です。他にも同じような医療機関で一般診療も行う「労災病院」もありますので、もしもの時は厚労省HPから検索して受診してみてください。


◆まとめ

最後に保育士試験に出る労災についてまとめます。

労災保険概要
根拠法:労働者災害補償保険法(労災法)
保険者:政府
対象者:パート・アルバイト含む全ての従業員(経営者等は除く)
保険料:全額事業主負担
労災保険の加入は事業主の義務
窓口:労働基準監督署

労災分野は年金や医療保険に比べ深堀りはされません。
直近の過去問では出題されていませんがこれまでにちょこちょこと出てきています。試験的には上記論点を押さえておけば十分ですが、誰しも仕事や通勤中のケガ病気は起こり得ます。労災を使わなくて済むようどうか注意して職務に励んでください!ご安全に!!

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