恋愛小説

別れなんて綺麗にいかないよね、というかそもそも付き合うまで行き着く人が少なすぎるよね。恋愛小説を一本書けるほどまで心を注いだ人となると、もっと少なくなる。人様に語れるほどのドラマ性もなく、かと言って地に足ついてるわけでもない。わたしはずっと、そんな恋愛しかしたことがない。

わたしは色々思い出すよ。前の前に付き合った人のことも、前の前の前に付き合った人のことも。ひでぇことしたのはこっちなのに、思い出して美化してサイテーだ。でも、一緒に見た景色とか相手の匂いとかって、顔より忘れられない。前の前に付き合った人は香水をつける人だった。DIORの、なんか名前が小難しい香水、聞いたけど忘れちゃった。でも街中で嗅いだらわかる。それってずるいよね、一生忘れられない呪いみたい。逆に忘れちゃいけないんだろうなぁ、と思う。元彼のことだってさっさと忘れた方が楽なんだろうけど、忘れたらわたしはきっとダメな気がして。間違ったことだけちゃんと覚えていて、楽しかった思い出たちだけ綺麗に忘れる術があるなら、ものすごく知りたい。

そういえば音楽とか、わたしが彼氏から影響受けまくる人だったらどうなっていたのかな。高校生の時に好きだった人は、音楽の趣味が雑食だった。LINEミュージックを頻繁に変えていたから、それを調べて聴いたりしてた。「夜空」とか「八月の流星」とか、その人を好きじゃなかったら聴いていなかったな。でも、ハロプロを好きになってから、他人の音楽の趣味がどうでもよくなったから、今はそんなに苦しいこともないかもしれない。ただ一曲だけ。元彼が「歌うたいのバラッド」を北千住の河川敷で弾いていたのが、心から離れない。これが一番好きな曲だって弾いていた。スカートが汚れちゃうからと言って地面にひいてくれたクシャクシャの講義プリントの上に座って、穏やかな水の音とギターの音が混じり合うのを聴いていた、ね。

でもあの日々は二度と戻ってこないね。さよなら。


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