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境界と冬

ホームシックな気持ちを駆り立てる冬の風が吹いている。いつもならここで鼻の奥が冷たさをしかと感じ取って冬を抱きしめられるのに、そんなことさえ許されないような今朝は、筆でないまぜにされた雲がどこまでも遠くある。まだ行ったことない道の方では、立体駐車場の車がビルの中で浮いていて、さらにこの雲達を遠ざけるから、頭のてっぺんから足の爪先まで私はこの空を愛することしか考えられなくなる。
冬。私とあなたと外界とが遠く遠くなって、はっきりとした断絶を感じる。吹き付ける風は包丁のように硬質に私の肌の境界線を探す。もうすぐ2年経つ、個々人らの別れはわたしたちに繋がりの命題をもたらした。
私のこの線から先はそとです。つまり、ここから出ていくもの全てを愛に注ぐから、それできっと許されるなら。たった一滴の悲しみでさえも愛であり藍染の冬空に注がれている。

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