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色々あった2020年、色々考えさせてくれた良書10冊

2020年、長く記憶に残る年になることは間違いないでしょう。

私自身はここ数年、社会変革を起こす技術分野への投資や政策アドバイスを
行う傍ら、2030年や2045年の未来予測について大学や企業で講義を行ってきました。中でも、未来社会の前提となる資本主義経済や民主主義の質的変化に注目してきました。

コロナ禍とアメリカ大統領選挙の今年2020年は、その未来に起きると想定していたことが一気に前倒しで訪れた印象です。

環境破壊を防ぐために「自己規制」が必要を叫ばれてきた資本主義は、ウイルスによって強制的に全市民の行動制限が余儀なくされ、戦後最大の経済危機と部分的な環境改善がもたらされました。

近年ポピュリズムの傾向を指摘されてきた民主主義においては、トランプ大統領が再選を目指したアメリカ大統領選挙によって最も醜悪な側面をみせながらも僅差で連帯と癒やしを主張するバイデン候補が当選しました。

コロナ禍がなければ、格差の広がるグローバル経済の方向についても、高齢化社会の医療体制の脆弱性についても、その経済と医療の究極の選択についても、深く考えることはなかったでしょう。

コロナ禍がなければ、トランプ大統領は再選されていた可能性が高く、益々世界はオリンピックの祝祭感のもとで利己主義的・経済至上主義的な考えが支配的になっていたかもしれません。

そんな2020年に読んだ本で特に印象に残った書籍を10冊選んでみました。

キーワードは「パンデミック」と「インフォデミック」の時代を生き抜くための「デジタル」「知的生産の技術」です。

1. 感染症の世界史

感染症と人類の長い闘いについて、1冊読むとしたらこの本です。
世界的な感染拡大が確認され、長期化を覚悟した3月に読みました。

感染症と人類の関係を一言でいうと、

・長い間生活してきた森の自然の生態系から離れ、家畜と住むようになったころから動物性由来のウイルスに感染するようになった。
・そしてその感染は農耕文明と都市での集団生活によって時折パンデミックを引き起こすようになった。
・ユーラシア大陸、ヨーロッパとアメリカ大陸等の文明間の交易(グローバリゼーション)は、同時に感染症の移動とパンデミックを生み続けた。
・文明間の戦争は、軍隊の集団生活とその広域移動、籠城・塹壕などの劣悪な環境を生み常にパンデミックを近年の世界大戦まで引き起こし続けた。

感染症の歴史は人類の「呪われた?」文明史そのものだったことがよく理解できます。

翻って、人類が生まれたその頃の地球環境の保全に留意し、本来の食事生活と健康な身体を取り戻し、都市一極集中でなく自然と共生する分散型のライフスタイルを追求する。そして、戦争をいかなる意味においても回避する。

そういうことの大切さを、人類と感染症の長い歴史から考えさせてくれます。

また、ソクラテス、ニュートン等、歴史上の人物がパンデミック体験をきっかけに覚醒し哲学や科学の新しい人類の扉を開いたエピソードも興味深いです。

今年の私たちが何を学びどう新しい世界を切り開いていくのかについて、たくさんの示唆が得られる本です。

この本に書かれていない余談ですが、時代劇などで、御簾内や上座から遠くに座り「表をあげよ」言われるまでひれ伏しているのも、致命的な感染症が常に発生しており、高位の人の死が大きく政治を動かすことを考えると当然のソーシャルディスタンスだと妙に納得した覚えがあります。またお目見え以上、お目見え以下、上士/下士、と身分で直接殿様と会える人を区別(差別)したことも高位の人が不特定多数との接触することを避けようとしていたことだと理解できます。

現代の私達常識から考えると遅れた「しきたり」に見えることも、ワクチンや特効薬がない中で、感染症リスクが常に存在していた当時の人類に思いを馳せると、合理的な行為だったと理解できます。

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