「塔」2020年7月号(月詠)

止まつてはいけないといふ心意気あるいは思ひ込みの春先

謝つたところで既におしまひにされてゐて絞りかけのオレンジ

段々と嫌はれ慣れてゆくことをアボカドに刃をきれいに入れる

通過するたびに高輪ゲートウェイふくらんでゐるからつぽの影

桜から葉桜へ呼び変へるときかすかにゆれる春の水嵩

在りし日と云へばそのぶん遠のいて汽笛のくづれゆく定期船

(p.97 花山多佳子選)

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