「塔」2018年7月号(月詠)

マフラーを道の途中に外すときわれはひかりの春をともなふ

インパクトに欠ける食事をくりかへすバウムクーヘン指先に崩ゆ

泣いていい時に泣けない 午後の陽はレモンケーキのうへに傾く

見上げるとたしかに桜だつたのに世界は既にずぶ濡れである

簡単につらいつて言ふそれ以外言葉が思ひ付かないつらい

生きてゐてほしい人からゐなくなり桜は夜にふくらみを増す

(p.200)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?